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謂わばネタ掃き溜め保管場所
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寒いから手袋をしていった方がいい、と言われた言葉を無視して出てきて半刻。
悴む手に白い息を吹きかけながらユーリは小さく唸る。
背中まで伸びる癖の無い漆黒の髪が風に呷られて視界を邪魔したのを、面倒臭そうに抑えてじっと目を凝らした。
曇天は雪空というよりは暗く、雪の混じった一番冷たい雨を降らせている。長い丈の外套はそこそこ暖かいのだが、今日のような寒さでは余り足しにはならない。
首に緩く巻いていたマフラーを巻き直して、ユーリは疎ましげに空を仰いだ。
そろそろフクロウ便が来る時間だ。
出来るだけ早く荷物を受け取りたいと外に出てきたは良いものの、天気が宜しく無さ過ぎて配達も遅れているらしい。
視界も雨に遮られ遠くを見渡すには至らなかった。
普段なら夏でも冬でも空けているシャツの一番上のボタンを既に冷えて感覚が乏しくなった指で締めて、ユーリは息を付く。
白い、白い息は寒さを増徴した。寒い。
「ユーリ」
吹き抜けの回廊で立ち尽くす背中に掛かる声にユーリは振り返らない。
聞き慣れたトーンは部屋を出る前に助言をした相手だったから。
こんなに寒くて、手が冷え切っていて、震えているのだと知ったら呆れて小言の一つや二つ言われるに決まってる。
だから何も反応はしなかった。
「ユーリ、聞こえてる?」
「聞こえてる」
「今日のふくろう便だけど」
「うん?」
「遅れて、午後になるそうだよ。そこで午後まで待つつもりかい?」
問いかけられて、漸くユーリは振り返った。
長いローブとマフラーをして腕組をしているのは、ルームメイトで同じ学年では一番の成績の男だ。
今は見えない陽光を溶かしたような金髪と青空に似た瞳を細めて首を傾げる相手に、ユーリは肩を竦めて見せる。
「まさか。風邪引いちまうだろ」
「だよね」
踵を返したユーリの横に並んだルームメイトをユーリは見遣る。
「どした? フレン」
「どうせだ、食堂に行かないか?」
「飯の時間は過ぎただろ?」
冬休みとはいえ、帰宅しない生徒のために解放される食堂は、それでも時間が大まかにでも決まっている。
今は朝食と昼食の合間、言った所で食べ物にはありつけない。
「温かい飲み物なら、頼めば出してくれるよ」
「……まさか」
「手、冷たい」
は、と小さく息を吐いて温めようとした指先を取られる。
外に出てきたばかりだからか暖かい手が、すっかり冷え切ったユーリの手を包んだ。
少しの間でも外に居るのなら手袋をしていけとフレンに言われた手前、罰が悪くて視線を逸らしたユーリにフレンが笑う。
「行こう」
僅かに強く手を引かれて、一歩先に歩み出たフレンにユーリが笑い返した。
「……なぁ、フレン」
「何?」
「午後はお前も一緒に付き合えよ」
「ふくろう便?」
「お前に、プレゼントなんだよ」
「……は?」
「だから誰にも見られる前に、受け取りたかったの」
「ユーリ?」
「……食堂行こうぜ。寒いったらない」
疑問符をつけて呼ばれたことには返さないでユーリはフレンを追い越して、逆に腕を引く形で食堂に向かう。
冷え切った体には温かい飲み物が確かに一番良い。
僅かに驚きで目を丸くしていたフレンが、我に帰ったのか答えるように冷え切ったユーリの指先をぎゅっと握った。



>>魔法学校パロに大層滾ったって話。某さんのマフラーユーリがあんまりにも可愛かったから。
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此処は思うがままにつらつらとその時書きたいものを書く掃き溜め。
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そんなところです。

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