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謂わばネタ掃き溜め保管場所
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こっそりひっそりとした掃き溜め
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※適当にメモ用ツイッタ垢で呟いたやつのログ。

キセキ(5人)人間。
年齢は21~22歳。緑間が22歳の誕生日折角だから人形でも作ったらどうだと赤司に言われるのが起点。
誕生日は原作設定のまま。

キセキは上流階級(貴族)の中でも五大名家の子息または当主にかなり近しい関係を持つものたち。皆が何かしらのずば抜けた才覚を持っている。
↑上の設定は没にするかも。赤司くんだけがいいとこの子とか。


緑間くんと高尾くん。緑間くんが主人。高尾くんが人形。人形師”高尾”の最後の人形である人形師として動くために作られた意匠人形(マイスタードール)動いている人形の中では年長組。人形制作依頼に来た緑間に見初められ、色々の後、緑間宅に居候する。瞳は純度の高いアンバー(琥珀)

・黄瀬くんと黒子くん。黄瀬くんが主人。黒子くんが人形。図書館の検索用人形だった黒子くんを黄瀬くんが引き取る。カスタムは無し(有りの侭の黒子っちが良いんで)黒子くんは動いている人形の中でも年長組。瞳は藍柱石(アクアマリン)

・青峰くんと桃井ちゃん。青峰くんが主人。桃井ちゃんが人形。黒子くんと桃井ちゃんは兄妹人形として作られた(図書館検索型の黒子くんと情報探索型の桃井ちゃん)迷子になった幼い青峰くんに懐かれて主人とする。瞳はモルガナイト。

・赤司くんと降旗くん。赤司くんが主人。降旗くんが人形。赤司くんが生まれた時に降旗くんは子守用として作られた(母親がいないため)。その後、子守子育て育成→コンシェルジェとして常に赤司くんの補助を行う。瞳は純度の高い猫目石。

・紫原くんと氷室さん。紫原くんが主人。氷室さんが人形。海外で作られた護衛用人形氷室さんが主人を亡くして(でも生きることを選択されたので動いてる)墓地でぼんやりしてるところに紫原くんと出会う。護衛として有能。世話焼きも有能。瞳はカイヤナイト(藍晶石)


人形の年齢(稼働時間): 黒子=桃井≧高尾>氷室>降旗。 氷室さん(30年くらい)、降旗くん(21年)


人形:精霊石(質の良いパワーストーンに力が溜まって動力として活用出来るまでになった物質)を核として作られる。精霊石と呼ばれる石自体を作るのに時間が掛かるため、上流階級に専ら重用される人形。瞳は核となる石と同じ色。用途は様々。中流階級、工場等には全機械仕掛けの人形もいる.
前者は魔力や自然力を糧に動く。核として使った石に人格が寄生するので人間と同じように人格や傾向がある。精霊人形と呼ばれる。後者は基本電気や捻子巻きを糧に動く。自動人形。プログラムされた人格はあれど、あくまでプログラム。



≫話のネタメモみたいなん。

・人形師高尾くんのところに「お前が欲しい、そうじゃなかったらお前似の人形が良い」って無理難題を言いつける緑間真太郎
 
・人形師の高尾くんも人形だから自分と本当にそっくりなのは無理だなあって思うんだけどなかなか折れない真ちゃんで、結局仕方なしに作ってあげる。自分よりちょっと大き目に。人形師の高尾くんは15歳くらいだけど人形の高尾くんは20歳くらい。真ちゃんもそんくらい。
 
・人形師高尾くんの目は本当に純度の高い国宝並みのアンバー使ってて、流石に同じようなのは準備出来ないから品質落ちても良いかな~って相談するのに、やだって我侭いう真ちゃんが妥協の末持ってきたのが綺麗な鷹目石。人形師高尾くんの目の色は橙で人形高尾くんの目の色は灰青色。
 
・高尾に高尾似の人形を作って欲しいと依頼するけど、それは高尾の仕様上出来ない。なら瞳の色だけでも変えろと極上の鷹目石を持ってくる緑間くん。当初は作ってあげる予定だったけど作らなくても良いかもしれない。作らなかった場合の鷹目石は研磨されて高尾くんの耳飾りになる。
 
・火神くんは人間。氷室さんの前主人の晩年に引き取られた孤児。兄弟のように親のように育ったけど、独り立ちして家を離れる。その直後くらいに前主人が亡くなる。ごたごたがあって連絡が遅れてしまって氷室さんを引き取れず、その間に紫原くんが氷室さんの主人になる。
 

 ぼすん。
 少し間の抜けた音が、午後の研究室に響く。
 余りのことに反応が遅れてクッションが顔面を直撃した。軽い衝撃は大して痛みを与えない。与えないが。
「……景ちゃん?」
 普段はこんなことしないのになぁ。
 素直にそう思った瞬間に、間髪入れず二個目のクッションが投げつけられた。
 それは何とか利き手で防ぐ。ぼすん、とやっぱり音がして、床に落ちたクッション。彼女の手元にあるのはあと二つ。
「景ちゃん、どうしたの」
「なんでもない」
「何でもなくなんてないでしょう」
 気紛れな面が無いとは言い切れないが、いきなり人に物を投げつける無体をするような子ではないのだ。
 きっぱりと言い切ると、ソファの上で膝を抱える少女がぶすりと表情を変えるのが見えた。
「ねぇ、景ちゃん?」
「なんでもないの!」
 少女は片手で引き寄せたクッションをまた投げつけてくる。今度はひょいと首を竦めて避けて、ソファに近づいた。背後でぼす

んとまた音が上がる。音から察するに彼女は手加減を忘れていないし、投げる方向にも気を遣っている。

「冬さん」
「うん?」
「僕ね、おいしいもの食べたい」
「うん」
 顔を上げたのは一瞬で膝に埋めてしまう。手を伸ばそうと思ったが払い除けられたらショックなので止めた。宙で不自然に止ま

った手を引っ込めて、覗き込むように膝を折る。
「景ちゃん、もしかして機嫌が悪いの?」
「ちがうもん」
「仕事で嫌なことでもあったの?」
「そんなことで一々イライラしてたら仕事辞めてるもん」
 それはそうか。彼女の部門は他部署の緩衝材役割の仕事がメインで、心労が掛かるものが多い。
 しかし困った。顔を上げてくれないと表情が見えなくて、どうして欲しいのかも分からない。
「景ちゃん」
 途方に暮れて名を呼ぶ。顔を上げてくれるはずもなく、膝に載せられていた頭が小さく揺れただけだ。
「今からデートしようよ」
「しないよ。冬さん仕事有るもん」
「良いよ、そんなの放るから」
「……珍しいね。冬さんが仕事放るなんていうの」
 意外だと言いたげに少女の顔が上がる。真っ直ぐ澄んだ灰水晶の瞳が瞬いた。
「そうだよ、貴重だよ景ちゃん」
 膝に載せられた手に、自分の手を重ねて軽く引く。抵抗はなかったから少しは少女の気分は浮上しただろうか。それならば嬉し

い。
 けど期待とは裏腹に、手を払われてしまった。

「ううん、良い。あのね、冬さんあのね」
「はいはい?」
 首を傾げると、視界に彼女が後ろ手で掴んで引き寄せたクッションが見える。しまった、と思った。
 ぼすっ。至近距離で投げつけられたクッションは、投げつけたと言うより押しつけられたまま、顔から離れない。
「こういう時は怒ってくれて良いんだよ」
 ぐっと押す力が加わって、崩した姿勢。ソファから下りた少女が軽い足音で研究室の扉を開けて出て行ってしまう。
 クッションを顔から引き剥がした時に見えたのはその小さな背中が扉の向こうに消える姿だ。

「……えーっと」

 彼女は時に理不尽で、でもどうしようもなく可愛い。





>機嫌が悪くて、八つ当たり? な景ちゃん……???

>くまめも

主人公は灰銀の髪の少年。電波塔に一人で住んでる。黄色人種。手先が器用。

>140字散文

明日にはとんと忘れてしまっているのです。防波堤の一番高いところの縁を歩いて度胸試しなんてしようにも、一夜眠りを隔てれば元通りです。昨日は?と問うても何もなかったという。不思議でしょう?捲し立てる客に「何とも、それは不思議ですね」と相槌を打つ。それは別に珍しくもないことだったが。 

熱砂を含んだ風を攪拌する天井のファンが軋む音だけが会話の合間を埋める。錆びた音だ。幾ら油を差しても直りやしない。「で、今日のご用件はそれですか?」問うと客は今までの笑みを消した。感情の抜けた能面顔で見詰めてくるので堪ったもんじゃない。「明かりを貰いに来ました」ほら、此方の方が余程

余程不思議な話だ。外は未だ容赦ない太陽が全てをじりじりと灼いている。それなのにこの客と来たら明かりを貰いに来る。暮れることのない昼の世界なのに、だ。何に使うと聞くのは具合が良くなくて「招致しました」と答え、小さな箱を取り出した。そこには細かく砕いた太陽石の粉末が詰まっている。

「分量お間違えない様に。火事になりますからね」注意すれば頷くだけ頷き、先程の世間話をした饒舌さはどこへやら一言も礼を言わず、古びた小銭をテーブルに置いて席を立ってしまう。「今後とも御贔屓に」蝶番の錆びた扉を押し開け出て行った影が無事に隣町へ着く頃、また誰かしら来るだろう。

「お祭り?」聞き慣れない単語だなぁ。そう呟けば苦笑が返る。常識だぞと一番電波塔から近い集落から時折ここに訪れる男が言った。「まぁ、集落で過ごさないから分からないか」「日蝕に祭りがある?」「そうそう。今度来ると良い。次の日蝕は……」「二月と五日後」「流石、電波塔の術師様」

それは止せと言っても男は止めない。旧世代の遺物の電波塔は未だに遠方との情報交換に役立つ。メンテナンスを欠けば朽ちるが世話する人間さえいれば半永久的に動く代物だ。機械を弄る技術は無知な人間から見れば魔術師の仕業に映るのだろう。だからこそ付いた名が電波塔の術師。何とも恐れ多いことだ。

「じゃ、その頃に迎えに行くさ。一日くらい抜け出しても大丈夫だろう?」「どうでしょう。まぁ、こいつに世話になる人は今は大分少ないんけど」「決まりだ」男がにこやかに手を打ち、日除けの外套を羽織り直す。陽光に強い葦の一種と羊の毛を混ぜて織った布地は厚く、しかし陽を遮る上等な代物だ。

生活必需品を定期的に置いていく男が去れば、電波塔の居住スペースは一人静かな空間に逆戻りする。天井の錆びたファンが回る音が支配者だ。「祭り、か」呟き、随分遠くに見える小さな人影を眺めた。二月と五日後。常昼の中訪れる僅かな闇。それを思って目を閉じた。存外楽しみだ。
 

 


>会話ログの中の設定抜粋(k:くま、s:saiさん、n:にしきさん)

k:常夜国って結構ありますが反対はあまりないかなと思って^^^ 自分で書くとなると難しすぎるですが、こういう世界観が大好きで大好きで。
k:季節は巡るので夏の一等日差しが強い時には日除けの薄紗を路地や建物、窓全てに掛ける町があるとか。全く日を通さない一室が必ず建物の中にあるとか。流氷を圧縮して閉じこめた氷細工の首飾りは夏の間、熱を逃がすのに重宝するけど、一夏限りとか。
k:日蝕の日は密やかな薄闇のお祭りがあって、大祭と呼ばれるけど正確な日時までは読めないとか。
k:いつもはかんかんに照ってる町もどこか違った雰囲気で^///^ 本貴重品ですかね。確かに褪せてしまいそうだから、すごく厳重に保管されていそう。その代わり、お湯とかは全部太陽の光で賄うんです。色素の来い人種が多そうだなぁ…(笑
k:常昼の世界でもアルビノ種は存在していて月光花という洞窟に群生する花の光で生きてる。彼らは外では生きられないから行商人が集落を訪れて貴重な工芸品をやりとりするとか?電波塔の主である主人公は灰色の髪の男の子だけど白人種じゃなくて黄色人種。手先が器用で電波塔のメンテして一人で生きてる。
k:折角だから行方不明な感じでも良いのかなぁと。褐色の肌の人間が多くて、黄色人種の殆どは山の麓、丁度山の陰が出来る中立地帯に小さな集落を作って暮らしているとか。専ら集落を渡り歩く行商は肌の強い褐色な感じの方々ばかりとか。風が楽器っていいですねぇ…
k:同じように氷を閉じこめる職人もどこかにいるのだけど、彼らは冷たさにも強くなければならないのかな。と。


s:ふと考えたんですがいつも昼だと暗くする為の何かが必要そうですね。焼かれないように、とか照らさないように、とか
s:年に一日日蝕の日があって、その薄闇で咲いた花は光を寄せ付けない、とかも。人々は枕元にその花を飾って寝るってのは?
s:日蝕の日はどこかで必ずやってるお祭り。日陰に何処かから楽器の音が響いてくるって良いですね。町によって少しずつ違うけれど、共通してるのは日蝕の日っていうこと。ふと思ったんですが、本が貴重品に・・・?(日焼け的な問題で)
s:たーしかーにw褐色肌天国。紙類はきっとペンに細工がしてあって、さっきの日蝕の花の茎にインクを付けるんですよ。だから羽ペンじゃなくて花ペン。強い光に当たり続けても褪せないペン(だけど水に弱い)。
s:ナショナリティあっちこっちで行方不明なのも良いですね。光と闇に太陽の熱や極地の氷を閉じ込めて留めておけるなら、電気や風も出来そうですけれど。風はきっと楽器ですね。
s:風を閉じ込める人々はきっと高山に住んでますね。谷間を抜けた風が直接吹き付けてくる場所の木や石を使って楽器を作るんですきっと (´∀`*)褐色の行商人は物凄い健脚ですねえ

 

n:常昼の世界なら、日光を避けるために洞窟とか地下で生活してる民族とかもいるのかなとか。その人たちは色が白くて日の光に弱い。雨や曇りで日の陰ったときや日蝕の日に外に出てきて、洞窟の中で採れる鉱石とか作りためた工芸品とかを売ったり、洞窟では手に入らない生活に必要な物を買ったりする


140字文

saiさん:風にのって聞こえる楽器の音と薄暗い空。今日は日蝕。今まで訪れた何処の場所でも、年に一度の薄暗闇は祭りの日。道端の明りはこの日しか輝かない。並べられた一つを取って覗いていた男は、この灯火の業者だという。何で光らせているのかと問うと、太陽石を砕いて入れているのだそうだ。(旅人の手記)

 saiさん: 宿の相部屋で洞窟族の者と会った。日蝕の行商に来ていたらしい。全身を黒い布で覆い黒硝子の眼鏡で眼も隠す風体の下は白い肌に赤い眼だと初めて知る。食事ついでにこの旅で見聞きしたことを聞かせると、彼は花の形をしたアクセサリーをくれた。月光花という名で、最も大事なものだという(旅人の手記)

 呼吸することさえ下手な大人だった。そんな大人は時を経て邪魔をすることに関しては本当に上手くなった。にこにこと笑みを浮かべて、血色の悪い白い指先が与えたのは奇抜な色紙に包まれたキャンディ。
 その一つを手の平に落とし、自分の分の包み紙を摘んで、血色の悪さと相まった酷く赤い舌先がキャンディを攫っていく。
 自分は、そのキャンディの行方を追っている。
「レイムさん? 眉間に皺寄ってますヨ」
「誰のせいだと思ってるんだ、誰の」
「私のせいですネ」
 溜まりに溜まった報告書の手伝いを申し出たのは友人としての善意だったのに。少しだけ驚いた顔をして、次にいつもの笑みを浮かべて一緒に執務室に入ったまでは良かったのに。
 一向に進まない報告書に手を焼いている現状に午後の陽気は毒にしかならない。
 大きく取られた窓からは緩やかに忍び寄る午睡の気配。陽光の下だと殊更分かる血色の悪さが眉間の皺を更に深くする。
 その男にしてはすらりと伸びた指が回す羽ペンの軸の切っ先。弧を描く軌跡を止めるために伸ばした腕は呆気なく相手に絡め取られた。羽ペンと共に腕を解放されて溜息を吐く。
「頼むから仕事してくれないか」
「してるじゃないですか。失礼な人だなレイムさんは」
「こっちは自分の仕事を後回しにお前の報告書を手伝ってやってるんだ!」
「ええ」
 思い切り机に手の平を打ち付けて上がった音と同時に吐き出した不満を、たった一つの相槌で流された。ふっと笑む表情はいつも浮かべている笑顔とは性質が異なり、口を噤む。
 この大人が上手くなったことの一つにこういった遣り取りがある。
 出会った後数年は内面を取り繕う余裕など欠片もなく、むき出しの感情に良く八つ当たりされたというのに。
 今じゃ感情を奇異な仕種と口調で誤魔化して奥底に沈めてしまう。

「ザークシーズ」
「ハイハイ?」
「疲れてるんだな? お前」
「……はい?」

 ぱちり。隻眼の赤が瞬き、作られた表情が落ちる。
 伸ばした手の行方を今度は阻む気配がない。触れた血色の悪い頬は、見た目が与えるまま冷たく、矢張りと内心歯噛みした。この大人が上手くなったつもりで、長い付き合いになる自分に全く通用しないものがある。我慢だ。どうせ見通す。だから自分の前では無理などしなくても良いのに。手の甲に重ねられた白い指先はもっと冷たい。
「粗方は終わらせてやるから、お前は少し寝ろ」
 本来なら報告書が苦手とはいえ、ここまで溜めることもないだろう。
 最近騙されそうになるが元は真面目すぎる性分の、このどうしようもない大人は、机に自分の許容量を超える分を残してしまうほどに忙殺されたのだ。
 ぱちぱちと繰り返される瞬き。そっと離れた指が掛けられた小さな鞄へと伸びる。中を満たすのはいつだって甘味の類だ。器用に摘み上げた先程とは違う包み紙のキャンディを何個か机の上に落とし、ザークシーズは笑った。
「本当に君はどうしようもないお人好しだ」
「そうだな、私もそう思う」
 くすりと笑みが落ち、素直に踵を返した姿が、そのまま部屋に誂えてあるソファへと沈む。音が殆ど無い、奇矯な言動とは対角にある洗練された騎士としての一端を垣間見せる動きだった。ソファからはみ出る彼の上着が緩やかに床に着くのを見届ける。
「それじゃ、少しだけ寝ますカラ」
「ああ」
「後で文句言わないで下さいヨ」
「ああ」
「おやすみなさい」
 狭いソファの上で器用に寝返りを打ち背もたれの向こうに顔を隠す姿と、不釣り合いな机上に落とされたキャンディを交互に見遣る。まだ、先程寄越されたものでさえ口に放り込んでいない。
 ただ自分は、凡そ血の通っていることを疑うほど血色の悪い顔で唯一、熱を帯びたあの赤い舌先に攫われたキャンディの行方を思う。
 細く折れそうな身体に吸収され糖分に成り果てた、わざとらしい甘味の味はまだあの舌に残っているだろう。
 告解の如く囁かれた言葉と共に。

 ――でもね、寝る時間が惜しくて堪らない。
   私の未来は死に絡め取られているのだから。

 同じような言葉を聞いたことがある。それはまだ自分が幼い頃。レイズワースに逗留していた頃。


**

 気に入らない。気に入らない。何が気に入らないのか分からない。
 レイムは荒い足音を隠すことなく、宛がわれた部屋に向かう。バタンと乱暴に扉を閉め、ベッドにそのまま沈み込んだ。窓の外はまだ明るくて、本当はやることもある。でも今はそんな気分になれなかった。
「なんだっていうんだ」
 弱々しい声が口をついた。出てしまえば後はもう済し崩しに愚痴がぽつぽつ出てしまう。独り言のそれは部屋を満たし、ゆっくりと静けさに変わっていくのだ。その沈黙が痛い。
「私だって、別に居たくて居るんじゃない」
 愚痴が弱音にまで行き着いた。滲んできた涙で視界が歪み、慌てて目を擦る。邪魔になった眼鏡を脇に置いて、枕に顔を埋めた。ぐすっと鼻を鳴らし落ち着くまで待つ。ああ、何で自分がこんな思いをしなきゃいけない。
「というか大人げないんだ。子ども相手に」

 主の使いで訪れたレイズワース家にお世話になることになった経緯は、大抵の使用人が聞くと同情するほど理不尽で身勝手な話だ。主曰く文の返事を貰うまで帰ってくるな、である。幼いレイムはレイズワース家の当主であるシェリルが文を読み終えた後、消え入りそうな声で「お返事を頂けないと、私、家に戻ることが出来ません」と告げた。穏やかな笑みを浮かべるシェリルが、一瞬目を瞠る。そして良いことを思いついたと手を叩いた彼女は無邪気だった。そして朗らかに一言。「だったら暫くここにいたらいいわ」。
 その後はあれよあれよと部屋まで与えられ、子どもにも出来る雑用をしながらレイズワース家で過ごしている。余所者のレイムを疎ましく扱うものは一人もいなかった。歳の近い当主の孫娘には懐かれ、孫娘の母君も優しい。いい人達ばかりだ。
 ――あいつを覗いて。

 思い出したら腹が立ってきた。本当に大人げない大人だ。威嚇だろう、ぶつからないよう投げつけられたインク壷が勿体無いと思った。結構な誂えのもので、自分で買うとなったら何年働かねばならないだろう。
『傷が開く、そんなに自分を痛めつけても意味がないだろう?』
 純粋な心配からだったのに。
 光が差し込むと、病的な白さと細さの男の髪は不思議な色彩を纏う。レインズワース家が守る”扉”の前にある日突然現れた男は名を暫く名乗りたがらなかった。見つけたのは自分と当主の孫娘のシャロンだ。黒い外套、黒い礼服、血に塗れた白い身体。手負いの獣みたいな男は、保護されてからと言うもの大体がぼんやりと窓辺で過ごしている。
 普段は大人しい。無気力と言うべきか。そんな男は突然発作を起こしたように、負った怪我をほじくり返す。失ったばかりの眼球をまた抉るようにする。その男にしては細くて綺麗な指先で。今日もまたそんな状態で。偶々見つけたのがレイムで。そして、先程の言葉を掛けた。
 幼い子どもに掛けられた言葉に男は激昂した。大人らしくなく、途中からは何を言ってるのかも聞き取れなくなっていく。しかし投げやりに最後に吐き捨てられた言葉だけは聞き取れた。そして聞いた瞬間、咄嗟に手にしていた書類を男に投げつけてしまった。
「馬鹿、……なんで死にたかったとかいうんだ」
『どうせ私が死んでも誰も困らない』
 その言葉が悲しかった。
 多分放っておけば彼は死んだのだ。発見が遅くても死んだ。偶然でも直ぐに見つけられたことを良かったと思ったのに。全て否定する態度が耐え難かった。彼が救えなかったという主人の代わりには誰も何もなれないだろう。けど新しく彼が生きるための何かを、彼はここで見つけられるんじゃないかと。見つけられた良いと願っている。
 今もだ。
「ばか、馬鹿ザクス」
「悪かったよ」
 ぐすぐすと鼻を啜り漏らした悪口に返事が返った。
 慌てて眼鏡を取り、掛けて、扉の前に気配もなく佇む影を見詰める。色素が薄くて、顔色は決して良いとは言えなくて、端正な顔立ちだが今は半分包帯に覆われている男の姿を。
「……え? え、いつ」
「今。一応ノックはした。ただ……声が返ってこないのに気配はするし……その、何かあったのかと」
「何もない」
「ああ。その、……すまなかった。少し苛立っていて、お前に八つ当たりした」
 いつ入ってきたのか分からなかった。でもその理由は何となく分かる。ゆっくりとベッドに近づく足音は注意しないと聞き取れない。
「助けて貰って、あの言い分はなかった。本当にすまない」
「それ、……誰かに言われて来たのか?」
 そっと差し出されたのは先程男に投げつけた書類だ。受け取ると困った様に視線を彷徨わせる男を見詰める。小さく口を開き、何かを言いかけて、閉じる。二度繰り返した後、男は溜息を漏らした。
「ああ、シェリー様とシャロンに」
「ザクスは」
「うん」
「まだ死にたいと思ってるのか」
「……よく分からない」
「分からないなら死にたいなんて言うな」
「ああ、すまない。ただどうして生きているのかと思う時があるんだ」
 ベッドに男が腰掛ける。涙を乱暴に拭ったレイムの目許に気付いて指が伸びた。先程自分自身を傷つけた指とは思えない優しい手付きで。
「私は、やることがあるんだ。……これでも多分」
「なら」
「でもそれは救えたら、の話だった。救えなかった私は、どうして自分だけ生きて、暖かい場所を分け合って貰えるのか分からなくなる。そうすると苛立って訳が分からなくなるんだ。……お前にこんなこと言っても仕方ないけれど」
 それがレイムを傷つけた免罪符にはならない。男がそう言う。
「生きてるから、だ。それでお前を嫌いじゃないから、だ」
「……え?」
 暖かい場所を与えられるのは、間違いなく彼が生きていて、そうして彼を少なからず悪くは思わないからだ。深い傷が癒えるには時間が掛かるのだから。それなのに惜しみなく与えられる暖かさを受け取れない男は実直だ。そして不器用だ。
「だからもう死にたいというのだけは止めてくれ」
 絶望は波打って何度も何度も抗いがたく彼を襲い苦しめるだろうけど。
「息が止まりそうだ。……私まで」
「レイムまで?」
「そう。私まで」
 ひたり。片方しかない真紅の瞳に視線を合わせると、首を傾げた彼が緩やかに口角を上げた。
「それは良くない。命の恩人まで殺したとなっては流石に人でなしになりそうだ」
「子ども相手に本気で怒って物を投げつけてくる時点で、割りと片足突っ込んでるぞ」
 ふふ、と相手が笑みを零す。初めてではないかもしれないが、こんな風に穏やかに笑った顔を初めて見た。
 でも落とされた言葉に胸が締め付けられる思いがした。彼はこんなにも苦しいと、レイムは思う。

「有り難う、レイム。でも、私はたくさん殺しすぎて、奪いすぎて、未来はもう死に絡め取られている」

 ――だから、そこまで気に掛けなくて良い。

 

**

「レイムさん、レイムさん」
「……うん?」
 肩を揺さぶられて、意識が浮上する。穏やかな午後の陽気に当てられてうとうとしていたらしい。白い手がひらひらと目の前で振られた。
「起きてます?」
「お前はちゃんと休めたか?」
「ちょっと、質問に質問で返すのは失礼ですヨ。おかげさまで少し楽になりました」
 にこり。笑う笑顔に、今し方見ていた夢の延長を描く。背中にまで伸びていた髪は邪魔だと言ってばっさり切り落としてしまった。あれだけ衝動的に繰り返した自傷行為も無い。隠していた甘味好きも隠すことを止めて。色々変化した中、ただ色の白さだけ、線の細さだけは全く変わらくて。
「レイムさん?」
 白い手を取る。相変わらず冷たい手だが、休憩を取る前よりは余程良い。それを額に押しつけてレイムは目を瞑った。
「お前が、変なことを言うから」
「ハイ?」
「昔の夢を見た。最初の喧嘩の時の」
「ああ、貴方ってば本当に昔っから怒り方変わらないですヨネ」
 思い出したのだろう。心底楽しそうに笑う声が、耳を擽る。昔より笑う様になった。ちゃんと笑える様になって、でも矢張りあの時抱えた絶望も闇も彼の中には根を張っている。だから心配で仕方ない。
「誰のせいだ、誰の」
「でも前より怖くなったかなぁ」
「え?」
「レイムさんには昔から敵いません」
 パンドラ最強と謳われる男の口が、本当に敵いませんと繰り返す。少しだけ拗ねた響きさえ含んで言われれば。
「ああ、だってお前は昔から手が掛かるから」
「小さな子どもだったくせに」
「その小さな子どもに面倒見られてたくせに」
「……そんな昔のこと、忘れました」
 戦況が悪いと視線を逸らされ、机に転がるキャンディに気付いた指が摘み上げた。眠ってしまう前に机に落とされたそれらは一つを除いて手つかずだ。最初に貰った一つだけが小さな欠片になって口内に残っている。
 器用に包み紙を外す手が、白と毒々しい赤いキャンディとの対比を見せて目の前に差し出す。甘いその塊を。
「ザクス?」
 口を開けた瞬間放り込まれたキャンディは、目の前の男が好む甘すぎる果実の味。
 かりっと歯を立てると、勿体無いと笑う。優しい笑みの中に、矢張りやりきれない絶望がある。

 だから思う。
 もう一つと摘み上げた白い手が、白い顔で唯一熱を感じさせる赤い舌先が攫うキャンディの行方を。

 


(その甘さが少しでも孤独を誤魔化せるのなら)
(そうやってずっとずっと誤魔化されてしまえば良いのに)



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くまがい
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性別:
女性
自己紹介:
此処は思うがままにつらつらとその時書きたいものを書く掃き溜め。
サイトにあげる文章の草稿や、ただのメモ等もあがります。大体が修正されてサイトにin(笑
そんなところです。

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