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謂わばネタ掃き溜め保管場所
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今日は良い天気だな、と男が呟いた。
その横でエノアは首を傾げる。どう考えても見上げた空は曇り空でお世辞にも天気が良いと言い難い。
「レイムさん」
呼べば、上背のある男は僅かに視線を向けて笑った。
たぶん言葉が理解出来ず疑問符が顔にも表れているのだろう。そっと伸ばされた指が頬に触れる。
「あんまり天気が良いと、」
「はい、天気が良いと?」
「エノアは日傘が必要だろう?」
そういえばそうだ。極端に色素の薄いエノアは日焼けするにしても、焼けると言うよりは火傷に近く赤くなってしまうし、診断されたことはないが間違いなく紫外線に弱い部類だろう。
だからという訳ではなかったが、天気の良い日には日傘を差すのは既に習慣だった。
雨の日に傘を差すのと同じように、エノアにとって良い天気の日に日傘を差すのは当たり前。
僅かに視界を遮る傘の合間から見える世界もなかなか味があって、これはこれで好いている。特段不自由も感じたことはないのだが。
「そうですネ? 日傘差してますけど」
「そうしたら見えないんだ」
「……はぁ」
さらりと男が言う言葉が分からず、曖昧に相槌を打つとエノアは隣を歩く男を盗み見る。
柔らかな薄茶の髪を短く切り揃えた、それでいて怜悧とも言える顔つきだが、性格は穏和な男は視線に気付いたのか、眼鏡の奥からひたりと視線を合わせて寄越した。
その姿越し、ショーウィンドーに自分と男の姿が映るのを見て、エノアは納得する。
そうか。
「レイムさん、」
「うん?」
「でも私、日傘好きデス」
「何だ、突然」
「レイムさんを見つけたら、ゆっくり味わえるんです」
何を、とエノアは言わなかった。
街の中で男を見つけた時、日傘がある時は視界が遮られて、いつも足下から見つける。
そうかもしれないと日傘をずらしてゆっくりと姿を確認する時の、その瞬間がエノアは気に入っていた。
天気が良かったら、それこそ男の薄茶の髪が柔らかく陽光を孕んで蜜色に見える。
姿を確認して名前を呼べば振り返る、それが。
「……何の話だ?」
「大好きだって、話ですヨ」
にこりと笑ったエノアが、とんとんと軽やかな足取りで男よりも数歩先を行く。
慌てて伸ばされた手を逆に掴んで立ち止まると、男が反射的に歩みを止め息を吐き呆れて口から文句を吐き出す前に
「お前が堪らなく好きだ、レイム」
滑り込ませるように告白じみた愛の言葉を贈ってやった。


>>久しぶりのレイムとエノア。
   二人はこれでもか!ってくらいラブラブだと良いよね。
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