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謂わばネタ掃き溜め保管場所
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あつい、と本日何度目になるか分からない言葉を呟いてユーリはげんなりとうだる暑さの中、溜息を吐いた。
それでも木陰で、僅かに噴水の水が冷やした風を受けているのだから、炎天下の中必死でかけずり回っているよりは幾分ましだろう。
長く伸ばした髪も今は暑さを少しでも和らげる為に些か乱雑に纏め上げられている。
「……あー、あつい」
ぱたぱたと余り意味が無いが手で煽いで、ふうと息を吐くと呆れた声が振ってきた。
「暑い暑いって言う方が、暑くならないか?」
ひたりと額に冷たい何かが押し当てられユーリは気持ち良さに目を閉じる。
伸びてきたユーリの手に譲るようにして、額に押しつけたアイスから手を離しフレンが笑う。
「サンキュ」
「どういたしまして」
自分にと買ってきたコーラ缶のプルトップを開けながらフレンがユーリの横に座った。さわさわと葉擦れの音がする。
矢張り幾分か涼しい。
「本当、どうしてこう毎日暑いのかね。適わねぇよ」
「どうしてって……夏だからだろ」
さらりと当たり前のことを返した幼馴染みに溜息を吐いてユーリはアイスの袋を開ける。
暑さで少し溶けかけたそれを一口囓り、冷たい食感に自然と機嫌が良くなった。
「お前、暑くねぇの?」
「は? 暑いよ」
じっと見詰めてくる視線を追ってフレンは視線を落とす。夏だというのにきっちり折り目正しく着込んだ制服に、ネクタイ。
夏でなくてもネクタイをしたがらないユーリにしたら暑苦しいことこの上ないのだろう。
それでも一番上まで普段は止めているボタンは二つあけているし、若干だがネクタイだって緩めている。フレンにしたら十分暑さ故に着崩したと思ってるのだが、幼馴染みの目にはそうは見えないらしい。
「暑苦しい」
「ユーリはだらしなさ過ぎるよ」
「へいへい」
やんわりと言い含める言葉に肩を竦める。ユーリは溶けかけたアイスに気付いて、そのこぼれ落ちそうな滴を舐め取ろうとした。
僅かに棒を握っていた手に流れる滴も含めて。
その手を横から伸びてきた腕が捉える。
掴まれて引き寄せられて、あ、と声を上げる間もなかった。
手に顔が近づいて自分が舐め取るはずだった滴をフレンが舐め取る。薄い唇から覗いた舌先が掬い取る様を見詰めてユーリは内心唸った。
ちろりと赤い舌が動いて指に触れてくすぐったい。
我に返って奪い返すと悪気がなかったような顔でフレンが笑った。
「……お前」
「何?」
「確信犯だろ」
きょとんと目を丸くした幼馴染みが、けれど今ほど浮かべた表情に似合わないくつくつという笑い声を零す。
先程ユーリのアイスと指に触れたその唇が少しずつ暑さで温くなり始めたコーラに付けられた。
炭酸を含む砂糖水を嚥下するフレンの喉の動きを追って、ユーリは馬鹿みたいだと思う。
相手がどんな意図であれ、自分の体の熱は上がってきている。
「ほんっと、お前最悪」
言い捨てて残ったアイスを囓った。残った棒を袋に入れ、そして無造作にクズかごに向けて放る。
綺麗な放物線を描いたそれがかごの中に吸い込まれたのを見て、フレンは立ち上がる。
飲み終わって空になった缶をユーリに見せつけるかのように丁寧に捨てに行って、振り返った。
「どうする?」
白日の下、強すぎる日差しに晒されて金髪は更に鮮明に映る。傍らにあった鞄を引っ掴んでユーリは立ち上がった。
結わえた髪が乱れるのもお構い無しに無造作に頭を掻いて答える。
「帰る」
「じゃ、そうしよう」
くるりと淀みなく踵を返した背中に追いついて、ユーリはするりと腕を絡ませた。
丁度近くに居た人間からは死角に入る木陰の影に入って、少しだけ驚いて無防備になった唇に唇を重ねる。
え、と戸惑う声よりも早く、少しだけ開いていた口内に舌を滑り込ませて絡める。どちらが先か分からない、鼻にかかる声が耳に付いた。
「……んっ」
何度か角度を変えて、深くしながら十分に絡んだ唇を離す。
つうと引いた唾液を拭って困ったようにフレンが笑った。
「困ったね、寄ってく?」
「最初からそのつもり」


>>ゆうかしゃんとのTLやりとりにて、なフレユリ。
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此処は思うがままにつらつらとその時書きたいものを書く掃き溜め。
サイトにあげる文章の草稿や、ただのメモ等もあがります。大体が修正されてサイトにin(笑
そんなところです。

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