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謂わばネタ掃き溜め保管場所
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※適当にメモ用ツイッタ垢で呟いたやつのログ。

キセキ(5人)人間。
年齢は21~22歳。緑間が22歳の誕生日折角だから人形でも作ったらどうだと赤司に言われるのが起点。
誕生日は原作設定のまま。

キセキは上流階級(貴族)の中でも五大名家の子息または当主にかなり近しい関係を持つものたち。皆が何かしらのずば抜けた才覚を持っている。
↑上の設定は没にするかも。赤司くんだけがいいとこの子とか。


緑間くんと高尾くん。緑間くんが主人。高尾くんが人形。人形師”高尾”の最後の人形である人形師として動くために作られた意匠人形(マイスタードール)動いている人形の中では年長組。人形制作依頼に来た緑間に見初められ、色々の後、緑間宅に居候する。瞳は純度の高いアンバー(琥珀)

・黄瀬くんと黒子くん。黄瀬くんが主人。黒子くんが人形。図書館の検索用人形だった黒子くんを黄瀬くんが引き取る。カスタムは無し(有りの侭の黒子っちが良いんで)黒子くんは動いている人形の中でも年長組。瞳は藍柱石(アクアマリン)

・青峰くんと桃井ちゃん。青峰くんが主人。桃井ちゃんが人形。黒子くんと桃井ちゃんは兄妹人形として作られた(図書館検索型の黒子くんと情報探索型の桃井ちゃん)迷子になった幼い青峰くんに懐かれて主人とする。瞳はモルガナイト。

・赤司くんと降旗くん。赤司くんが主人。降旗くんが人形。赤司くんが生まれた時に降旗くんは子守用として作られた(母親がいないため)。その後、子守子育て育成→コンシェルジェとして常に赤司くんの補助を行う。瞳は純度の高い猫目石。

・紫原くんと氷室さん。紫原くんが主人。氷室さんが人形。海外で作られた護衛用人形氷室さんが主人を亡くして(でも生きることを選択されたので動いてる)墓地でぼんやりしてるところに紫原くんと出会う。護衛として有能。世話焼きも有能。瞳はカイヤナイト(藍晶石)


人形の年齢(稼働時間): 黒子=桃井≧高尾>氷室>降旗。 氷室さん(30年くらい)、降旗くん(21年)


人形:精霊石(質の良いパワーストーンに力が溜まって動力として活用出来るまでになった物質)を核として作られる。精霊石と呼ばれる石自体を作るのに時間が掛かるため、上流階級に専ら重用される人形。瞳は核となる石と同じ色。用途は様々。中流階級、工場等には全機械仕掛けの人形もいる.
前者は魔力や自然力を糧に動く。核として使った石に人格が寄生するので人間と同じように人格や傾向がある。精霊人形と呼ばれる。後者は基本電気や捻子巻きを糧に動く。自動人形。プログラムされた人格はあれど、あくまでプログラム。



≫話のネタメモみたいなん。

・人形師高尾くんのところに「お前が欲しい、そうじゃなかったらお前似の人形が良い」って無理難題を言いつける緑間真太郎
 
・人形師の高尾くんも人形だから自分と本当にそっくりなのは無理だなあって思うんだけどなかなか折れない真ちゃんで、結局仕方なしに作ってあげる。自分よりちょっと大き目に。人形師の高尾くんは15歳くらいだけど人形の高尾くんは20歳くらい。真ちゃんもそんくらい。
 
・人形師高尾くんの目は本当に純度の高い国宝並みのアンバー使ってて、流石に同じようなのは準備出来ないから品質落ちても良いかな~って相談するのに、やだって我侭いう真ちゃんが妥協の末持ってきたのが綺麗な鷹目石。人形師高尾くんの目の色は橙で人形高尾くんの目の色は灰青色。
 
・高尾に高尾似の人形を作って欲しいと依頼するけど、それは高尾の仕様上出来ない。なら瞳の色だけでも変えろと極上の鷹目石を持ってくる緑間くん。当初は作ってあげる予定だったけど作らなくても良いかもしれない。作らなかった場合の鷹目石は研磨されて高尾くんの耳飾りになる。
 
・火神くんは人間。氷室さんの前主人の晩年に引き取られた孤児。兄弟のように親のように育ったけど、独り立ちして家を離れる。その直後くらいに前主人が亡くなる。ごたごたがあって連絡が遅れてしまって氷室さんを引き取れず、その間に紫原くんが氷室さんの主人になる。
 
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非日常に憧れる平凡な高校生は、人混みの中ひょこひょこと動く黒い頭を発見し、いったん首を傾げ見間違いじゃなかったことに気付くと深く深く溜息を吐いた。
自然と零れ出た溜息を咎めるものは存在しない。
手に持った百均のレジ袋を見下ろし、気付かない振りをして次の角を曲がってしまおう。そう判断する。
俯けば自然視界は狭まり、そのまま見慣れた角を曲がろうとした時だった。
「あれぇ? 帝人くん?」
妙に触りの良い声が落ちてくる。見えるのは立ち塞がった黒い足下。
恐る恐る視線を上げていく。黒で統一された服装の上にあったのは予想通り端正な顔だった。
赤褐色の瞳が緩やかに細くなる様をまるでスローモーションのように見守って、帝人は内心で盛大に溜息を吐く。しかも何度目かの。
「奇遇だねぇ。今、帰り?」
そんな風に何食わぬ質問をする男に会釈して、「はい」とだけ返す。
彼の活動起点を考えれば、用事もなくこの界隈をうろついてはいないだろう。何よりこの街は彼の命の危険さえ存在する。
なら何か彼にとって用があるわけで、無駄なようで一切の無駄のない彼の行動を考えると自分に声を掛けたのさえ用事の一つか。
と横でつらつらと言葉遊びのような一方的会話を繰り返すのをぼんやり聞き流して推測する。
「ね、聞いてる?」
ふ、と行く先を遮るように腕が目の前に伸びた。
「は、い?」
しまった。あまりに滔々と、次から次へと話題が、言葉が流れていくものだから半分以上も取り落としていた。
さっきまではつい最近発売した飲料についての独自の感想を、それはもう大袈裟且つ饒舌に語っていたのだが、現在時点で言えばそれはもう押しやられた過去の話題だろう。
だから素直に謝ることにする。勿論悪いとは思ってはいない。
「すみません。ぼうっとしてました」
「なぁに? 夜更かし? 良くないよ。大きくなれないよ」
昨日深夜までチャットしていたのは彼も良く知っているはずだ。
それを無視してしれっと言ってくる、優しい口調で毒を流し込むような、そんな男にゆるりと帝人は頭を振った。
「臨也さんは何か用が有ってきたんですか?」
話題を変えようと口にした言葉に男の眉根が寄る。
え、と疑問に思った瞬間、いつものように笑顔を貼り付けた男が「酷いなぁ」と口にした。
それだけで話題を変えたのが失敗だったと分かり、帝人はどうしようと思案する。
一瞬の表情。僅かに不機嫌を露わにした語尾。
「さっき言ったよ。君に会いに来たんだって」
答えはさらりと目の前の男が提示する。聞き流してしまった部分で彼は彼の用事を告げていたらしい。
下げていたレジ袋を無意識で握って帝人は「すみません」と頭を下げた。途端露わになる無防備な項の、その首元に手がするりと触れる。
冷たい、と肩を強張らせた帝人に上から笑い声が降る。
「ちょっと」
「無防備だな、帝人くんは」
反射的に手を払われたことを気にせず笑みを浮かべる男が、宙で制止したままの手をひらりと振る。
自然と動きを追い、注意力が散漫になった帝人の首もと、きっちり一番上まで留められた制服のシャツを男のもう片方の手が掴んだ。
少しだけ緩かったシャツの首周りが絞られ、息を詰めた帝人を至近距離で男が覗く。
襟元を掴まれ少しだけ持ち上げられた体勢は不安定で。
「臨也さん、ふざけるのはやめましょう」
緩く弧を描く瞳を見つめ、帝人はそれだけを告げた。
引っ張られたネクタイはきっと皺になってしまって、帰ったらアイロンを掛けなければならない。
絡む視線を逸らさずに数秒。前触れもなく手を離され、つんのめった先で男の腕に抱き留められた。
一つ角を入った路地は大通りに比べて人が少なく、そうじゃなくても他人には極力関わらない都会らしさで二人を咎めるものはない。
距離を取る為に胸についた手に手を重ねられ落ちてきた影に顔を上げた。
「あの、」
掠め取られそうになる瞬間、疑問だけで声を上げる帝人に男が「あぁ、もう」と呆れた声を返す。
そして離れた距離に何も反応せず襟元を正す帝人の様子に肩を竦め、男は笑った。
面白くも何ともないのに、いつもの作り物めいた笑みではなく心底嬉しそうに笑う。
「で、僕に用事って?」
「もう済んだよ」
とん、と両手で両肩を叩き、利き足を軸にくるりと踵を返す。黒コートの裾が翻り、色彩的には地味な男は笑みを浮かべたまま帝人を振り返った。
「済んだんですか」
「うん。済んだ。だから良いよ」
先程僅かにかいま見せた不機嫌さも形を潜め、もう一度距離を詰めてくる男に今度は帝人が肩を竦める。
本当に。
何と言っていいのか分からないが。この幾分も年上の、それでいて非合法を生業として生きる男は、とても面倒な性格で、性質も悪くて、勿論性格も宜しいとは言えなくて、それなのに時折酷く些細なことで満足そうに笑ったりする。
打算で生きる癖に、そんな時だけ彼の持つ狡猾さが全くない。
人を愛すという彼独特の持論はどちらかといえば人間のマイナス面を評価するのに、それさえも投げ捨てたような一面を、きっと彼は自覚していない。
だからそんな風に笑える。
そして無自覚のまま、それに気付いていつも付き合う帝人との関係を打算で成り立っていると評価する。
「臨也さん」
呼び止める声に動きを止めた男の唇を踵を上げ距離を詰めたことで掠め取り、帝人はその動きの延長で脇をすり抜けた。
声も上がらず少しだけ目を丸くした表情は視界に捉えている。
振り返らない背中に、「では、また」と言い置いて路地を抜けた。
あの絶妙なバランスで出来上がった男に対する感情は、同じクラスで同じ委員を務める同級生の彼女に抱く恋愛感情とは全く異なる。

――それでもきっと名付けるのなら。


「……あぁ、もう」
路地に取り残された形になった男がくつくつと笑う。
近くを通り過ぎた中年の男性が訝しげな視線をくれたことになど気にも留めず、腹を抱えくつくつと笑い寄りかかったビル壁に頭を預けた。
笑いがゆっくり収まるのを待って視線を上げる。
いつもと同じように利用する手駒として近づいた、年齢にしては細い印象を拭えない少年。
不思議なことだ。打算も無しに、ふらりと足を運ぶ時、必ずと言っていいほど少年は目の前に現れる。
例えば仕事を終えてマンションに向かう前。寄り道にも程がある寄り道で普段寄りつかぬ駅前を歩いて、彼が現れるのを待つ。
少年が男の前に現れるのではなく、自分から会いに行っていると気付いたのは少し前。
何だろう。それでも、何も用がないのに会うというのは少年に用があるということに他ならず、しかしいつも特段の用は見つからないのだ。
敢えて言うなら声を聞きに来ているのだろうか。それとも、顔を見に。
端から見たら単純な動機を男は見つけられず、ふらりと人混みに紛れる為に一歩を踏み出した。

男が少年に対する感情に気付くのは、もう少し先のこと。


>>デュラアニメ見た記念に。臨帝。


レン。
短く二文字、たった一文字しか違わぬ名前を女王は呼ぶ。
先日までは王女の肩書きを持っていた幼い女王は、声につられて顔を上げた少年従者に笑いかけた。
「ああ、其処にいたのね」
「はい、リン女王」
女王よりも幾分か低い声は、同じ年回りとはいえ女王に良く似ていた。
いや、声だけではない。
柔らかな金の髪も、南国の海を映したような瞳も、愛らしいといえる顔つきも、他人とは言えぬ程に良く似ている。
若干少年には女性が持つ丸みが無く、身長が少女より高い。それくらいが違いだった。
腰を折って礼を取った従者を困ったように女王は見る。
「ねぇ、レン」
こつこつと磨かれた床に足音が木霊し、少年の前に立ち止った女王が首を傾げる。
「私のことは、リンって呼んで頂戴?」
ねぇ、お願いよ。そう付け足して笑う少女の笑みは少し寂しさが滲んでいた。
姿も似通っていれば名前も一音だけ違う二人は、正面から向かい合えば鏡を映したように他者には見えただろう。
服装は主人と従者。けれど二人には全くと言っていいほど、形だけは典型的なその関係性が無い。
「二人の時に」
「今は二人だわ」
「……此処は公の場ですから」
「レン」
女王が名を呼ぶ。従者は僅かに苦笑で答えた。
小さく、本当に聞こえない、音にはならない、そんな音を少年の唇が象る。

――リン。

名を呼ばれて、女王は年相応の笑みを湛えたまま背後に控えていた兵士に鋭く声を掛ける。
「出て行って頂戴。今日の職務は終わりだわ。私は部屋に戻ります」
無駄な所作もなく踵を返した女王に兵士は一礼し、退室していく。それを見送って少年は「良かったの?」とだけ呟く。
従者のものにしては砕けた口調を女王は責めない
「疲れたわ」
「まだ、……女王に代わったばかりだからね」
「病んだお母様が務められるくらいだから、楽だと思ったけど、そうでもないみたいね」
磨き上げられた燭台に触れながら、女王が笑みを零す。
お母様と呼んだのは先代の女王。つまりは今幼い仕種で燭台を弄いながら、それでもこの国を統べる少女の母親だ。
「リン」
「……全く厄介だわ。色々何を決めるにも承認が必要なんて」
肩を竦める女王の纏う黄色のドレスに施された絹のリボンが揺れる。
「法律、変えてしまおうかしら?」
歌うようにとんでもない事を言う少女を、従者は僅かに首を傾げるだけで許容した。
ただ女王と同じ色の瞳が細められ、女王が軽やかに広間を歩く姿を捉え続ける。
「変えて、どうするの?」
ふと。
踊るような足取りが止まる。従者の問いに女王は淡く笑みを履き、さらりと返した。
「そうしたらこの国は私とあなたのものだわ、レン」
「僕にその、資格はないよ」
「いいえ…!」
足早に歩み寄ってきた女王が少年の手を取った。ぎゅっと握って、縋るように顔を近づける。
手を合わせるだけであったなら本当に鏡に映した自分を見るようなのだろうと倒錯を起こしそうな中で、握られた手を握り返しながら従者は首を振る。
「僕はただ、の」
「血を分けた唯一の姉弟だわ。私とあなたは同じ血が流れてる」
「リン、それでも」
「要らないなんてことない。それならレンを要らないと言ったお母様や国が間違っているのよ」
「リン」
「だって、あなたが要らないなら私も要らないわ」
少女の手を握る力が強くなる。
俯いた顔ははらりと落ちた髪が隠し、よく見えない中で、少年は堪えるように目を伏せた。
分かっている。彼女の言いたいことは分かる。立場も与えられた姓も違えど紛れもなくリンとレンは血を分けた姉弟だ。
双子であったが為に忌み子としてどちらかを市井に下ろす際、先代の女王である実母が手元に置くのは女子が良いと願い、結果リンは王女として、レンはただの少年として育ってきた。
本来の習わしであれば男子が国を継ぐべきであり、正当な後継者はレンにあたる。
何より生まれた時さえ同じくとした双子であるリンにとって、レンを不要と見なすのは耐えられないのだろう。
最初に従者として後宮に上がった時、顔を合わせた時、目が合った瞬間に何かを悟ったように笑った少女の顔が忘れられない。
「ごめん、ありがとう、リン」
だからこそレンは少女の食い込みそうなほどにきつく握られた手を、なだめるように優しく握り返した。
顔を上げた女王の瞳には涙の膜が薄く張り、綺麗な湖面のようにも見える。
「リンの気持ちだけで嬉しいよ」
「でも」
「……良いんだ、本当にそれだけで」
立場なんて要らない。
少女のやりたいことは分かっている。誰にも邪魔をされない、彼女の王国を作るという彼女の夢はあまりに幼い。
国は間違いなく破綻する。分かっている。
そうなった場合、女王として最後に待つ責務も、予想がつく。
出来ればそういうものをリンに背負って欲しくはない。出来れば、ただ笑っていてくれさえすればいい。
きっと母は選択を誤った。リンは施政者になるには弱くて、ただの普通の少女でしかなかった。普通の少女として育っていたなら幸せになれたのに。
「ねぇ、リン」
「なぁに?」
「笑って」
「……え?」
「笑って、リン」
少年の言葉におずおずと笑みを浮かべた女王に、そっと伸ばされる手に。
擽ったさを覚えたのか小さな笑い声が上がり、リンは先程の弱さを内包した少女とは打って変わった言葉を告げる。
「レンこそ有り難う。でも、私はね、私が王女として育った限り、その立場に縛らさせられ続けた分の清算をするわ」
「……リン?」
「だって私は、もう既に悪の、女王ですもの」

にこり。
笑った少女の瞳には何の感慨もない。
言われた言葉を少年が理解するには数秒を要した。南国の海のような碧の瞳が何度か瞬きを繰り返し、やがて言葉の意味を咀嚼したのか、ゆっくり瞳は伏せられた。
既に破綻への幕が上がっているというのなら。
重なったままの少女の手の温度を確かめるようにもう一度握って、レンも笑う。

「そうだね。そうしたら、僕は悪の召使いだ」



>>久しぶりのボカロ。悪シリーズはずっと好き。

とんとんとんとん、音がするのを少女は所在なげにきょろきょろを見渡した。
マスターと舌足らずにそれだけしか言葉を発しない少女の髪は手入れすれば綺麗な癖のない髪だろうに、今はところどころ絡まり解れている。
椅子に座って身を縮こませる姿をカイトはちらりと見遣って、ティーポッドを傾けた少年に困ったように首を傾げる。
カップに柔らかな色合いのお茶を淹れカップを持ち上げた少年が微かに笑った。
もっとも彼の精神年齢は外見年齢では上のカイトよりももっと上だとどこかで耳に挟んだことがある。
確かに華奢な少年の姿をしていながら纏う雰囲気は落ち着き払った大人のそれで、少年は少女を手招きした。
「こっちにどうぞ。お茶を淹れたから」
おず、と少女が椅子から立ち上がり手を伸ばす。
親元から事故で引き剥がされたひな鳥のようだ、とカイトはその手を取った。拾われた相手を認識しているらしい少女が僅かに緊張を解いてカイトの横に座る。
向かいに座った二人を見て少年はそれぞれにカップを受け渡し、そして「さて」と呟いた。
「君、名前は覚えているの?」
「……」
ふるふると首を振った少女の細く白い手首を少年が取る。びくりと身体を強張らせた少女を安心させるように笑って、一つ息を吐いた。
「……み、く」
「レン?」
「君の名前、ミクで間違いない?」
少女がきょとんと首を傾げ、暫く視線を彷徨わせてから笑った。
聞き覚えがあったのか、思い当たったのか。曖昧だが名前として認めたということだろう。
「記憶を大分消失してしまってる。名前も覚えていないようじゃ、どこから来たとか、そういうのも全部忘れているんじゃないかな」
紅茶のカップに口を付けながら両手でゆっくりと飲む少女を横目にカイトが目を伏せた。
用意されたお茶菓子が気になるらしく視線を投げるのに気付いて少年が一つ摘んで渡してやる。
それをまじまじと見詰め少女ははにかんだ。
外見年齢で言えば少年より幾つか年上に見えるだろう少女の仕種は酷く頼りなく幼い。
「カイト。……この子のこと、どうする気?」
「どうするもなにも」
拾ってしまったのだから無責任に捨てるわけにもいくまい。言い淀んだカイトを不思議そうに見詰める視線に気付いて、笑った。
途端笑顔を返す幼さに内心途方に暮れてしまう。
少年の言い分はよく分かるのだ。面倒見切れるのかと言外に問われている。
「……まぁ、良いけど。部屋なら空いてるから好きなところ使ったら良い。けど、面倒事は駄目だよ」
「分かってる」
頷くカイトに少年が笑む。
言葉を重ねるよりも有無を言わせない大家の態度にカイトは神妙に頷くしかなかった。



「記憶。マスター……、」
部屋を与えられた少女が穏やかな陽光を喜ぶように、外でくるりくるりと回る姿を眺めやってレンは呟く。
規則的に落ちる時計の音が静寂を余計に引き立たせる中、部屋のあちこちで息づく骨董品に埋もれてしまいそうだと錯覚する。
伏せてあった写真立てに細い指が触れて、愛しむように辿った。
色褪せを嫌ったと言うよりは、目に留まり心が痛まないようにと倒してしまった写真立ての写真には、レンと良く似た少女が屈託のない笑顔で佇んでいる。
声には出さずレンは写真の少女の名前を呼ぶ。一文字しか違わない名。鏡合わせの容姿。
屈託無く笑って、そして名を呼ぶ声は未だに鮮明だ。けれど。
「……彼女も君と同じかな」
そっと写真立てを持ち上げてレンはふと微笑んだ。嘗てレンにとって唯一の片割れは、陽光の下ではしゃぐ青竹色の髪の少女のように記憶を失い、そして忘れてしまっても忘れられなかったマスターを思って消えてしまった。
止められなかった。伸ばした手は遅くすり抜けた。
だからカイトが連れてきた少女の一つの結末をレンは知っている。
「君は幸せだった? あの子は、……幸せかな」
嘗て歌を、全てを教えてくれた人を思って、それだけを思って逝けるのは。生きていくのは。
けれど残された方としては行き場のない痛みと悲しみを抱えて生きなければならない。

まだまだそちらには逝けないからね、僕は。

少年が零した言葉に何も返るものはなかった。



>>ちょっと考えてるボカロ構想。
   姿は少年なのに中身が一番年上のレンっていう。

初めて彼を見かけた時、それはそれは鮮やかな髪を翻して転がっていくので驚いたものだ。
今日もまた、彼は転がって、自身の身体は傷だらけで。
どこに向かうの? 終わりが見えないので、という彼をどうやって扱えばいいのか自分にはよく分からない。
本当は気になりもしなかったら、たぶんいつかは満身創痍になった彼が終わりを見つけて諦めたのだろうとは思うのだ。
だって彼は馬鹿ではなく、寧ろ聡い。
綺麗な深紅の髪なのに、彼は名前を灰と名乗った。

「ねぇ、まだ続けるんですか、アッシュさん」
「そりゃあ、続けなければ意味がないからな」
「寧ろそれ自体意味がないものに思えます、アッシュさん」
「そう思うんなら、付き合うんじゃねぇよ、お前も暇だな」

名前は余り呼んで貰えない。
どうしてかと思ったらどうにも名乗っていなかったらしい。
だから転がる彼に付き合いどさくさに紛れて名前を教えたら、少しだけ不思議そうに目を丸くして、その後笑った。
いつも真っ直ぐ前を見据えて、険しい顔つきをしてるから気付かなかったが、年相応の幼い笑みだった。
それから彼は時折、名前を呼ぶ。
不思議と自分の名前はすとりと転がらず地面に落ちるので、彼は矢張りこんな事を繰り返すべきではないと思うのだ。

「まだ、」

そう呟いた彼の腕には包帯が巻かれ、既に痛々しいくらい満身創痍。
何の為に? と投げかけた疑問はふと首を傾げ寂しそうに笑った彼に黙殺される。
今日もまた怪我を負うのは彼だけど、自分もまた苦しくてこれは息を止めるようだと、それは酷く曖昧に気付く。
もう転がれませんよと言うのは簡単で、彼の手を掴んでしまうのは簡単で。
しかし彼は何か不器用に繰り返す行為の中で、生きる意味を探している気がした。

「昔、馬鹿みたいにまだ良い子だった頃。……俺は居場所をとられた気がしてた」

生きる意味なんて、もう無いと勝手に絶望もしたと彼は言う。
まだまだ自分で掴み取る前に与えられていたかったのだと寂しげに言う。
それはそれは酷く叶わない、ささやかな夢。
痛みの中で、息を止める行為で、今日を全力で転がってぶつかることで、彼は不器用に生を実感する。
世界の片隅、整わない呼吸で無様に息をしてやっと自分の居場所を確認する。

「アッシュさん、もう……良いじゃないですか」

坂道を転がり落ちそうになる手を初めて引いて引き留めた。
誰も彼もが、彼を否定するだろうか。少なくとも自分はしない。
けれど少しだけ悔しそうに俯いて彼はまだ、まだ駄目だから、と弱々しく子供のように呟いた。
これ以上続けたら、きっともう彼は動けなくなってしまう。聡いから諦めると思っていたのは逆だった。
彼は妙に聡い故に刹那的に存在を確かめる方法に縋りついている。
本当は、本来なら、もっと穏便で温かな方法を誰しもが選ぶのに、拒絶が怖くて、過去が怖くて、一番無謀な方法で。
もう、居場所を確かめる為の方法を、こんな所に見つけなくても良いじゃないか。
転がっていく毎日の中で、誰もに触れずに生を実感するのは酷く酷く孤独で寂しい。
手を挙げてそのままで転がっていくのは、潔いけれど、でも自分は悲しい。

「アッシュさん、もう良い。ねぇ、止めましょう」
「まだ見えないって」
「もう良いよ、だってそれはそうしたって見えないんです」

頭を振った彼を、頑なな表情をもう本当、馬鹿だなと思う。
勝手に身体は動いた。抵抗する前に傷だらけで、おざなりに手当てされた包帯だらけの腕を引く。
少しだけ鼻につく消毒液の匂いは、不快感よりも愛しさが勝って自分も大概馬鹿だと思ってしまった。
だって傷ついてぶつかって精一杯生きた彼がいる何よりの証は、こんなにもこんなにも歪で拙い。
なんだって、もう、こんな。

「ね、」

腕の中に収めた彼は思ったよりも頼りなく、揺れた。

「そろそろ、疲れたでしょう。……ね?」

呆然と頷く、彼が流した涙は抱きしめてしまった自分からは見えず、ただ引き留めた彼は次の日から転がることはしなかった。


>>ローリンガールパロ。ギンジとアッシュ。
   只の趣味です。

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HN:
くまがい
HP:
性別:
女性
自己紹介:
此処は思うがままにつらつらとその時書きたいものを書く掃き溜め。
サイトにあげる文章の草稿や、ただのメモ等もあがります。大体が修正されてサイトにin(笑
そんなところです。

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