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謂わばネタ掃き溜め保管場所
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子供の純粋な問いと言うよりは、何か意味合いを含めた問いに漆黒の髪を揺らして世界の切り札は首を傾げた。
おや、と言った言葉は存外穏やかさを含む。
「で? どうなんだよ」
丁度腰の高さより上の位置ほどの子供が興味津々に答えを急かした。
一歩後ろで視線を外さず見詰める真白な子供もまた矢張り答えが気になるらしい。
「……困りましたね」
見上げられて強請られてしまう形に奇しくもなっている状況に、大して困っていない口調でLは呟いた。
質問を投げかけたのは答えを急かした金髪の子供でも、じっと様子を窺う真白な子供でもない。同年代の二人とは違う人懐こい笑みを浮かべる子供だった。
「マット、」
「うん」
子供の問いはこうである。
”Lは誰かの誕生日を祝ったことはあるの?”
それは純粋な好奇心で構成された質問であるのと同時に、一種人間味の欠けた男が人間であることを確認するための行為にも思えた。どの答えを返しても三人の聡い子供は真意を探ろうと思考回路を働かす。
全員が違うプロセスで、優れたロジックをもって。
「ありますよ」
ならば変にはぐらかさない方が良い。思考の読めない笑みを浮かべて答えた男に三人は全員違った反応を見せた。
金髪の子供は詳細を知りたいと興味深そうに、白い子供は答え自体を疑うように、そして問いを投げかけた子供は答えを受け止めるように。
この三人の中では、年齢では丁度真ん中に位置するマットが一番精神的には大人なのかも知れない。
そう考えて様子を窺っていると小さく電子音が鳴った。
「……ワタリですね」
くるりと無造作に置かれたパソコン画面に表示されたアルファベットが回る。
一斉に画面に向けられた視線の先で、丁寧な口調が流れ出した。
『L、そろそろお時間です』
「ああ、分かっている」
事務的な言葉は時間がないことを告げる。
僅かにドアノブの回る音に振り返った子供達の視界には折り目正しくスーツを着込んだ初老の男が映り込む。
「そうそう、私はワタリの誕生日も祝ったことがありましたよね」
子供達の答えの続きを繋いでLは、穏やかに笑んだ初老の男を見詰めた。
「そうですね」
すぐに返ってくる言葉は口裏を合わせたかのような隙の無さで、逆に子供達は笑ってしまう。
つまりは何か。
この手の質問に正直に答えたことを、こんな間接的なやり方で世界の切り札である存在は教えたのだ。頭の回転の速い子供達の表情は既に答えを得ている。
「それじゃ、三人ともお元気で。私はもう行きますよ?」
裸足のままぺたぺたと部屋を去っていく背中に、三人がそれぞれ「気をつけて」と投げかけた。
肩越しに振り返った男が分かるか分からないかの微かな笑みで応える。
ぱたりと乾いた音を立てて占められた扉に隔たれた空間に残された子供たちは、視線を見合わせた。

「聞くのは野暮だよな」
「珍しく嘘を吐いていませんでしたね」
「……気にはなるけどな」

人間として凡人と掛け離れた様相の彼がどんな風に誕生日を祝うのか。
在り来たりな言葉で誕生日を祝うのだろうか。
それとも今のように分かりづらい言葉で何かを伝えるのだろうか。
それを考えるだけでも面白い。
もっと面白いのは相手は、引き合いに出されたワタリだけではないと言うことだ。
「彼女、だったりして」
「いないだろ、そんなの」
「私もそう思います」
口々に好き勝手言い合って、三人は小さく笑みを零した。
絶妙のタイミングの良さで一度閉じられた扉が開く。隙間から顔を覗かせた噂の人物は、底知れぬ深い色の瞳を細めて、
「ああ、そうそう。何もお祝いごとは誕生日だけじゃありませんね」
と飄々とした口ぶりで言い残す。
それだけを言いに戻ってきたらしい。痩身の男がにやりと笑って一度途中まで開けた扉をもう一度閉めていく。
扉に隔たれる残像を追いながら結局、簡単に断ち切られた空間に残った三人のうちマットが声を上げて笑う。
「ああ、らしいよなぁ」
「……?」
部屋に放置されたディスプレイの文字がいつの間にか変わっている。
12月25日、その日付けが画面上小さく表示されてたのと同時に、赤と緑、そして白を基調とした画面に切り替わった。
なんとも血色も体格も悪いサンタクロースではないか。
自動的に開いたメッセージは通常では解けるかも分からないような高度な暗号文で、一緒に隣の部屋に一人ずつプレゼントがあることも書かれている。
マットの覗き込んでいたディスプレイを背後から覗き込んだニアとメロもそれに苦笑した。
クリスマスを迎える子供たちを祝う言葉に、添えられたひと言。


―祝うなら、こんな風にですよ。

地味だけれども生半可ではなくて、それでいて妙に大胆なやり方は確かに彼の人の祝い方に相応しかった。



>>某所での旦那さまMさんの誕生日に捧げるもの。
   時期がちょっとずれちゃったので、クリスマスを被せてあるんだけれど
   実はそれさえもずれちゃったっていうオチつき…^q^
   後で本人に渡してきます。LMMNって可愛いよね

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