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謂わばネタ掃き溜め保管場所
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こつん、と乾いた音が響いた。気配はあった筈なのだが? と首を傾げたところでぼんやり考え事に没頭していたのだから何も言えたものではない。単純に見落としたのだ。
「珍しい来客です。どうなさいました?」
必要以上に光源の落とされた部屋で来訪者の姿は紛れてしまいそうだった。
「”ここ”ならば可能だと聞いた」
「はい? 何をでしょう?」
首を傾げれば来訪者は少しだけばつの悪い表情を浮かべて本題を切り出した。
元々お喋りな方ではないのだから至極当然のことだったが、彼の口から出た言葉に思わず笑みを浮かべてしまう。
何て言う、
「分かりました。手配させましょう」


*****

「なんなのよ、どうしたのよ?」
「別に何だって良いじゃないですか」
「……良くないのよ。自分が今どんな顔してるか、分かってるのよ?」
「そんなの知りませんよ。知ったことか」
「まず態度さえ崩れてるのよ。何があったのか知らないけど、溜め込むのは良くない癖なのよ」
「今回は違いますから」
「……?」
不思議そうに見詰めてきた少女に仏頂面の青年が応える。
本当は口に出したら、それこそ際限なく色んなものが口を突いて出てしまいそうだから何も言う気にはなれなかったのだ。
「抑えとかないと、色々出てしまいそうなんですよ」
「言っちゃえばいいのよ」
「嫌です」
「……はぁ、本当にフェイズって馬鹿なのよ」
溜息一つ落とした少女が肩を竦める。
随分と大人びた仕草をするようになったと片隅で思いながらも、盛大に溜息で応酬した。
少しだけ眉を顰めた少女が仕返しとばかりに青年の座っていた椅子の脚を蹴る。振動で倒れそうになるのをテーブルに手を突いたことで防いで青年は少女を睨み付けた。
「リムル」
「ふん、なのよ」
そっぽを向いた少女に青年が少しだけ笑みを零す。
つい、と揺れて背中に落ちついた髪の毛を悪戯に一束引っ張ってやれば、頬を膨らました彼女がもう一度椅子の脚を蹴った。
そして頭を動かす独特の歩き方でとてとてと部屋を出て行く寸前。
「あの、Pの野郎」
世にも珍しい、完全に崩れきった口調の青年の言葉を耳にした。
それは感情さえも抑えきれない声で、「Pって、イルたんのことなのよ?」とも聞けずに少女は扉を閉める。


*****

くすくす、と笑い声が聞こえた。
控えめに耳をくすぐる声は未開発惑星で使用不可の筈の小型の通信機器。耳の飾りに紛れるようにして装着するタイプのために誰にも分からない代物である。
そこから声が聞こえた。
「笑い事じゃないです」
『ええ、そうですね』
「あなたが協力したんでしょう。もう」
『だって仕方ないでしょう』
存外穏やかに話す声には芯の強さが含まれた。
心地良い低さの声が側で聞こえる。
「仕方なく何て無い」
『存外、子供ですね』
「悪かったですね」
『いいえ、悪くないですよ。ただ…そうですね、私は彼がわざわざ直接会いに来て、言い出しにくかっただろうに躊躇わず申し出た勇気に敬意を表したまでです』
「……今度あったら、ぶん殴ってやります」
『おやおや』
「なんですか?」
『彼だけ可哀想だな、と思っただけですよ。だって貴方だって幸せになったんですから、彼にだって幸せになる権利はあるでしょう?』

――未来は誰のものでもなく、その人達のものですから。

穏やかに告げられた言葉を敢えて聞こえない振りで、通信機器の電源を切った。
ふつりと途絶えた静寂に隣の部屋から聞こえた足音に、結局通信相手の言葉が真実そのものなのだと痛感して笑う。
なんとも悔しいことではあるけれど、それはきっととても幸せなことなのだ。



>>SO4、ED後捏造補正。
   睦月さんまでもえくれよっていうから、もえにもならない何か一つ投下。
   なんか掴みきれないな、やっぱり普通に何かをするのは止めておこうと思った私。

   しかしやらなきゃいけないことをせずに、違うことばっかりしている私です^q^

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此処は思うがままにつらつらとその時書きたいものを書く掃き溜め。
サイトにあげる文章の草稿や、ただのメモ等もあがります。大体が修正されてサイトにin(笑
そんなところです。

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