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謂わばネタ掃き溜め保管場所
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(なんでだろうなぁ。同じさ、野郎の髪なのにさ)
同じならパートナーの椿の艶やかな濡瞬の髪を褒めるべきと世間一般では絶対に言う。必ず言う。
確かに綺麗だと思う。しなやかに風に攫われて、女性の豊かなラインを持つ背中に落ちつく様は一種絵みたいだと、たぶん誰もが言う。自分だって綺麗だって思う。
けど、何故だろう。
「………なんだ、突然」
夕焼けを見上げて無防備な背中から後ろ髪を引っ張った。
予想に違わぬさらりとした感触が指を擦り抜ける。
気配を察してないわけではなかったはずだ。元来気配を隠すことに関しては不向きだ何だと言われてきた彼の気配が分かっていて容認したに過ぎない。
目の前の幾分も年上の男は。
「いや、何となく」
「相変わらず突拍子もない」
目を細めて窘めたのだか笑ったのか分からない表情をした男が肩越しに振り返った。
瞬間、肩で落ちついていた髪がさらりと揺れて落ちる。
同じの筈なんだ、とブラックスターは言い聞かせた。髪の色ならマカに似ている。髪の長さも同じくらいかも知れない。
しなやかさなら椿に似ている。尤も椿の方が長くて綺麗なのだろうけれど。
「…そうか」
出会った頃より身長は伸びた。
今はもう見下ろされることもない身長差にブラックスターがぼんやりと、こんなに近かったかと思う。
最初に会った時には命の危機を感じたのだ。穏やかに落日を見守るこの男に。
「さっきからなんだ?」
いつも賑やかしい様子が窺えぬ相手を不思議と思ったか問いが重なる。
身長は殆ど並んだ。男と決着をつけた折、全てが終わった後、彼は約束通りに此処に来たのだ。
幼い魔女の身の安全を保証して貰い、そして彼が指導について何年が経ったのか。
「なぁ、何年だ?」
「…お前、人の質問には答えず一体、」
「ミフネが此処に来てもう何年だ?」
男の言葉を遮ってブラックスターは覚えてる分の指を折る。両手には満たない。
ゆっくりと指で数えられていく様子を見ながら溜息一つ落とした男が、言った。
「丁度、あと一週間で五年になるか」
男にとって五年の月日は身体的に変わることはなく、いや寧ろ鍛錬を怠れば老いていくだけなのだが、少年期であったブラックスターが成長するのには充分だった。
元々毎日の鍛錬を怠らない鍛えられた身体は小柄であったが、今は身長も伸びている。
精悍な顔つきに、少年から青年に変わろうとしている表情に五年の長さを思い知る。
「そっか。五年か」
「ああ」
頷いた男が一歩と踏みだし隣に並んで夕陽を見詰めるブラックスターの横顔を見た。
夕陽が赤く赤く染めていく。赤は血の色、炎の色、揺らめく意志の色。
血塗れた手ならばと武を極められず堕ちていった魂が数多ある中で、少年の魂は揺らがない。
「…前に親父に似ているっていってたか?」
不意に空から目は逸らされず問われた言葉に男が首を傾げた。
「今は?」
聞きたかったのはこちらか。ふと口元が綻ぶ。
「お前は修羅でも武でもはなく、お前の道を行くのだろう?」
「そりゃ、俺さまは一番になる男だからな」
にっと子供らしい無邪気な笑みを浮かべて返される言葉に、男は今度こそ笑う。
「今のお前は父よりもずっと大きいな」
先へと行った。
と小さく付け加えた言葉にブラックスターが「当然」と返すのなんて想像しなくても分かっている。
「当然だ、俺は」
「神も超えるんだったな」
口癖を引き継いで笑う男にブラックスターも笑う。
本当はぎりぎりであったと思うのだ。意志も精神力も全てを凌ぎ削った最後の戦いで彼の命を取らなかったことは。
あの中で奇跡があったならば、たぶんそれだ。
「そうだ。さっきの、あれはなんだ?」
ふと何かを確かめるように伸ばした手の動きを止めるかのような声に、ブラックスターが我に返る。
此処にいると確かめるため触れようとした手は宙で止まり、風に攫われた男の長い髪が指先に少し触れた。
「あれって?」
「最初の”そうだ”、の言葉だ」
「いや、あれは」
どうして同じ性別で、特別整った容姿というわけではない筈の彼の、その髪が綺麗だと思うのか。
その答えは触れた瞬間に気付いた。単純すぎて、結局単純思考は変わらないとブラックスターは思った。
「綺麗だなって思ったって話だよ」
「……なにが?」
「まぁ、色々と」
誤魔化しにならない誤魔化しで肩を竦めたブラックスターが、尚も訝しげに見てくる男の髪を、指先に触れたそれを捕らえた。

綺麗だと思う。
椿の艶やかな黒髪も、マカの柔らかい髪も、リズとパティの日溜まりを集めたみたいな色も。たぶん綺麗だって思う。
けれど、綺麗だと思い触れたいと手を伸ばすのはこれだけなのだ。
夕陽に照らされて若干赤味を帯びた髪を引っ張られ、男が呆気にとられた表情でブラックスターを見詰める。
何も気付いたのは綺麗だと思う感情だけではない。だからこそ、宣戦布告する。
「覚悟しておけよ? ミフネ」



>>まさかのソウルイーターで(苦笑)
  アニメ版展開のブラックスターとミフネの数年後。
  こんなでもいんじゃね?とか思うわけです。ミフネすき。

  …ってこんなことしてないで早く書き途中のものをかけ、私^q^
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そんなところです。

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