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「例えば、」
”祈りを捨てた手。”
”野良猫の瞳。”
”小さな背中。”
”独りがいいとうそぶく唇。”
”茨に囲われた心。”
つらつらと単語が並べ立てられていく様は、見ていて心地良かった。
小柄な少女が紡ぐ声は低めで触りが良い。
「そんなものなのかもしれないと、誰かが言ったよ」
「ふぅん」
「……個人的に言えば、僕は一番は有りだなぁと思ったって話」
「”祈りを捨てた手”?」
「捨てたってことは信じていたのを断ち切ったということだもの。どれだけの覚悟を?」
音声通信ではなく直接空気を介す会話で少女が笑った。
そんな手で何をするのだろう、と頭の中に付け加えて声が重なる。
「論議にもなりはしないな。それは」
少女の言う言葉は感傷に近い。論理的ではないのだ。だからこそ博物館惑星アフロディーテ上部データベース”ガイア”接続者として、彼女は適任なのかもしれないが。
「論議じゃないよ。冬さん」
窓辺に腰掛けた少女が笑う。
そんなことをしたって分が悪いのなど百も承知だと言外に告げられ、目を細めた。では何故?
「僕は、冬さんにそれを見た」
「……何?」
祈りを捨てた手を、まるで抽象的な何かを見た気がした。野良猫の瞳とは違って真っ直ぐ前を向いていた。媚びることも怯えることも無くただ真っ直ぐ何の感情も移さずに。小さいのは寧ろ自分の方だから背中は比べようが無いけれど、後姿が儚くて消えてしまいそうだなと思うときはある。「一人でいいんだ、僕は」という言葉は出会った頃に聞いた言葉。
茨に捕われた心は見えない。時折ふと垣間見えるくらいの波が触れる位で。
何よりピアノが下手だと言う男にしては白い指先は、疾うに祈る行為を止めてしまってる様に見えた。
頑なに頑なに振り払うような、そんな。少女は祈りを捨てた手を持つその存在を愛す。
「ガイア、これは覚えても分からないからいいよ」
彼女に繋がったデータベースが素直に記録しようとするのを少女は一言で押し留めた。
複雑すぎてやっと確立させられたデータベースには負荷が掛かりすぎる。その一存だった。
「愛してあげたいと思うものは? だったよね」
「そうだね」
「一つ、引用の利きそうな単語がデータベースにあったから引っ張っただけだけど、強ち僕は馬鹿に出来ないと思うよ」
「そう」
「イヴェールは?」
愛称ではなく本名で呼んだ少女が問う。
一拍考え込んだ青年が困ったように首を傾げた。
「君の引用してきたものを用いるなら”小さな背中”だろうね。時折何処か行ってしまいそうだなって思うよ」
「……へぇ?」
「そんな時、触れられたらと思う」
「僕も」
祈りを捨てた手で何かを為そうとする男の姿を見るたびに、その苦しみを見るたびに、理解が出来なくても構わない。ただ触れて温かさを伝えたいと思う。エゴ故に。
(……ガイア、覚えちゃ駄目だよ。愛がエゴだなんて、捻くれた考えはさ)
どうせ少しずつ記憶され学習していくのだと知っていても、人である自分達はそのエゴさえ愛であると錯覚しておきたいのだから。
―さて、君の愛してあげたいと思うものは何…?
>>引用の利きそうな単語と文中にある単語は、「虚式実験室」の「愛してあげたい5題」から。
とりあえず足あと踏んだ55555踏んだ(誰にも報告してないけど)むつきさんへ捧げます。
眠さの中で書いたので文章になっているか、不安だけど。
博物館惑星パロ、冬さんと景ちゃんでお送りしました…(苦笑)
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サイトにあげる文章の草稿や、ただのメモ等もあがります。大体が修正されてサイトにin(笑
そんなところです。
ブログ内文章無断転載禁止ですよー。