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「はぁ…」
捲し立てられた言葉に何の感慨も乗せない相槌が返る。酷い隈を目の下に貼り付かせた男は、松田の真っ直ぐな視線を受け止めた。そこには一方的に投げつけられた言葉に対して何の感情も沸いてはいないようだった。
「だから、嫌いです」
「……ええ。それは今、…丁度30秒前に一度お聞きしました」
丁寧に返される言葉に遠慮はない。松田がなけなしの勇気で、半ば自棄糞に投げつけた言葉はいとも簡単にいなされてしまう。
尚も心に渦巻く言葉を言い掛けて、目の前の男が小さく笑ったのが目に見えた。
「何が可笑しいんですか」
「…いえ」
「僕が大人げないって、そう言いたいんでしょ! どうせ竜崎は」
与えられた役割に対して満足に動けず、もどかしさや不満という感情に対しての捌け口を見つけられず、ぐちゃぐちゃになった頭で思い浮かぶ言葉を手当たり次第子供のように当たり散らした自覚はある。
しかし完全に八つ当たりになりかける言葉に歯止めが利くわけもなく、一通り言い終え息を吐いた松田の様子を窺うように、デスクチェアに膝を抱え込む形で座り込んだ男は見上げた。
そして数秒。松田が言葉を続けないのを待って落ち着き払った声で言う。
「言いませんよ?」
「…は?」
「松田さんが大人げないだなんて、私言いませんよ?」
繰り返す言葉に不実さなど無い。
目を丸くした松田に、悪戯をする子供のように笑って見せた世界の切り札なる男はこう嘯く。
「だって私の方が幼稚で負けず嫌いですから」
―人のこと、馬鹿に出来ません。
「竜崎」
「……はい?」
名前を呼ばれた男に松田が盛大な溜息を被せる。
本当、天才と呼ばれる人間の何かなど分かるはずもない。
「やっぱり僕は竜崎のこと、嫌いです」
「そうですか」
「そうやって良く分かんないところとか嫌いです」
挙げ句、常でも空気が読めないだの、勘が鈍いだの言われる松田にとって竜崎という男は既に人間として認識するのも難しかった。
変わった仕草、変わった嗜好、そして酷く冷静で人間として無機質なイメージを与えるのに対し、時として非常に人間的なのだ。分かり難すぎる。
「残念ですね」
口元を吊り上げ、親指を押しつけて宣う言葉に感情の一片も含まれているのかいないのか。
半ば飛び降りる形で床に着地した男は酷い猫背の姿勢で、少しだけ狭まった距離の中で笑った。
「私は結構、松田さんのこと気に入ってるんですけどね」
「…はい?」
目を丸くした松田の横を素通りして、裸足のままぺたぺたと去っていく背中は止まらない。
今ほど、投げかけられた言葉さえ真実か虚実か分からない無機質さでもって与えられた松田に為す術はない。
呆然と立ち尽くして「ああ、もう」と呟いた松田は確かに変わらず不気味で、仕事には容赦なくて、言葉も辛辣な世界の切り札なる男を、実はそこまで嫌いではないと自覚する。
言うなれば単純なのだ。
気になるから、反発する。それを看破したような大人な返し方だった。
「……僕の方が年上かも知れないのにな」
そんなどうだって良い呟きは空間に漂って消えた。
>>故に単純に行動に移せる単純さを愛す。
何となく竜崎はそういうイメージがあると言うだけ。
思ったけれど、松田を視点に書くから上手くいかないんだ(今更)
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サイトにあげる文章の草稿や、ただのメモ等もあがります。大体が修正されてサイトにin(笑
そんなところです。
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