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謂わばネタ掃き溜め保管場所
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気まずいと言うより死にそうと思ったのは何故とも言えない。理由は明白だ。
だというのに何とも似てるようで似てないのだなと暢気にものを考えられたのは彼生来の性分であるのだろう。
良くも悪くも凡人である彼にとって、天才と呼ばれる域の人間の行動など露ほどにも分からない。
「……えぇと」
だから押し黙り痛すぎる沈黙の中で、何とも間抜けな声で松田桃太は歯切れの悪い切り出しをしなければならなかった。
西洋人の中に確かに、混在する東洋の雰囲気を持っていた竜崎と比べ、今の”L”であるニアは東洋人が持ち得ない白さのせいか近親感というものを感じさせない。
初めて会った時よりも成長した容姿に彼の年齢は一体幾つだったろうかと思い返す。
姿ばかりはあどけない少年のようだったにも関わらず、ニアの年齢はあの時点で既に十代後半であった。
なら今は二十代前半かと結論付けて、結局切り出した言葉の先に続く意味も見出せずに途方に暮れる。
目を逸らしたまま柔らかそうな癖毛を弄っていたニアがふと視線を松田に寄越した。
脱色されたように色素のない容姿の中で唯一深い色合いの瞳は、確かに竜崎と似た深さがある。しかし松田にはどうにもニアと竜崎が似ているようには思えなかった。
勿論、感情的な部分で好きになれないという単純且つ明確な理由も存在している。
「ミスター松田」
「はい!」
充分待ったと言いたげに口を開いたニアの声は、相変わらず表情を余り映すことなく淡々としていた。
冷静にと思いながらも上擦った声を上げた松田に一瞬目を丸くして微かに口元が笑みを象る。
「質問があるのならお好きにどうぞ。答えられる範囲でなら答えてあげましょう」
完璧な丁寧語でそう告げるニアに表情らしい表情はない。
視線を合わせてきたニアは、松田をただ純粋に観察しているようだ。
「……えっと、それじゃ…」
またしても歯切れの悪い口調ですっかり憔悴してしまった松田が先を続ける。
「何でこんな所に?」
それは至極まともな質問だった。
世界の切り札の名は元は竜崎のものであり、その後月が引き継ぐ形となった。その後あるべきところ、本来の後継者の元に戻ったに過ぎない。
世界の切り札”L”は紛れもなく今目の前にいる何とも白さばかりが目立つ細い青年だ。
何故そのニアが松田の言う「こんな所」、―警察庁にいるのかが分からなかった。
「用があったからです」
時に大胆な行動を辞さない竜崎に比べ、最後の最後まで姿を現さず自ら動かなかったニアは行動力に欠けていた。
それはニア自身が認めていたことであり、周囲の人間も認識していた所だ。正しく比べようも無いだろう。
だからこそ何故こんな所にいるのかを聞いた筈なのにさらりと流され、松田は困惑する。
「…人が足りないとか…?」
「いいえ。応援要請を出せば人は足ります」
間髪入れず返される言葉は鋭利さも含む。
平凡な質問さえいけない気がしてきて、松田が次に何を聞こうかと口を開きかけた時、ニアの方が先に言葉を紡いだ。
「それよりも聞こえました」
したり顔で笑うニアは得体が知れない。
ぞくりと背筋を襲った寒気に松田は知らず呻いた。聞かれていなければ良いと思ったのだが、そんな都合が良いことがある筈もない。
「……すみません」
「何故謝る必要が? だって貴方、その通り私を嫌ってるんでしょう?」
さらりと言ってのけられた台詞は、先程廊下に出る前に部屋で現在の”L”について悪態を吐いた松田の言動が聞こえていた証拠だ。
一頻り不満を出し切って廊下に出たところでニアと遭遇した状況を考えれば、そんなもの確認せずとも明白だったが。
「別に、」
「良いですよ。嫌われるのは慣れています」
白く柔らかそうな髪を指に絡めながら、しかし口調に感情は浮かばない。
「だから大丈夫です」
言い切ったニアがつと視線を逸らし、くるりと踵を返した。
言いたいことは言ったのだろう。用事は済んだとばかりに背中を向けるニアに一瞬呆然とする。
何だろう。これは? ふと過ぎった訳も分からない感情に眉根を寄せて
「……ニア」
一瞬の迷いの後、松田はその細い腕を掴む。その細さは嘗ての竜崎に似ている。
”なんですか、松田さん”そう言い、心を読むように見詰めてきた竜崎に初めて似ていると感じた。
瞬間僅かに引っ掛かるように心の端に甦る既視感。
拾おうにも直ぐに意識の端から零れ落ちて拾うことさえ敵わなかったが。
「…、ミスター松田、何です?」
息を呑んだ音を聞き逃さなかった松田に敢えて平静を装った声が落ちた。
窺った視線は矢張り何かを探るような感情の薄いもので、薄ら寒ささえ感じる。しかし、それだけではない気もした。
「僕は竜崎も、ニアも嫌いです」
「…竜崎?」
だから素直に言葉を口にする。
得体の知れなさと細さだけが良く似た二人の実年齢は十ではきかないのかもしれない。
突然出てきた名前に首を傾げたニアが続きを促すように見詰めて寄越す。
「でも、……別に大嫌いなわけじゃない」
「………」
”はぁ、全く意味が分かりませんね。だから馬鹿って言われるんですよ。松田さん”
言葉を返さないニアが作り出した沈黙の中、聞こえる筈の無い幻聴が聞こえた。嘗ての”L”の落ち着いた声。
「…何を仰りたいのかは分かりませんが」
充分に言葉を咀嚼しても松田の発言の真意までに至らなかったのだろう。
ニアの眉が少しだけ寄せられ、淀みなかった口調は途切れる。
「分かんなくたっていい。とりあえず、それだけが言いたかった……」
「一つ分かりました」
松田の言葉を遮るように思案に沈んだ声が、ついと浮上した。
先程の笑顔とは違う表情でさらりとニアが告げる。
「Lは……、いえ、貴方の言う所の竜崎は、貴方のその単純でありながら大胆さが好きだったんですね」
問題に対しての解を弾き出したかのように言われた台詞に松田の反応が遅れる。
力の抜けた松田の手から腕を解き、背中を悠々と歩いていくニアが振り向くことはなかった。

「………なんだよ、それ」

呟く。
何故こんな場所にいたのか色々聞き出せなかったことよりも、松田の意識は最後の言葉に持っていかれてしまう。
呆然と立ち尽くす松田の姿を見留めた同僚が声を掛けるまで松田はその場を動けなかった。


***


「何だか嬉しそうだが、ニア? わざわざあんな所に自ら行かずとも良かったのでは?」
「いえ。少し揶揄ってみたかっただけだったんですが。…悪口を言われっぱなしでも面白くありませんし」
狙ったタイミングで迎えに来た黒塗りの車に乗り込んでニアが笑う。
「思わぬ解を見つけました」
何の、とキラ事件よりこの方ずっと協力をしてきた体格の良い壮年の男は聞かないことにした。
取り敢えず機嫌の良いのは何よりだ。
「単純な話、ですね」
走行音にかき消されて、流れる景色を見遣りながら呟かれたニアの言葉は誰にも聞かれなかった。




>>人なんて結局どれもこれも分かんない答え宜しく単純だ、と。まぁ、そんな話。
   松田と書くだけで何だか変な気分になり、それでいて松田の口調がどうなのかとか
   わかんな過ぎて途中でネタとして微妙とか思って頭痛くなった…とか。

   竜崎と松田ならともかく、ニアと松田は無謀だった…(当たり前

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