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とんとんとんとん。
何かを叩く音が聞こえ、最初は無視し続けたが余りのしつこさにニアは顔を上げた。窓を叩くと言うよりは指先で弄う仕種だけ、正確に言えば指先だけが見えて知らずに溜息が零れる。
椅子に腰掛け読んでいた本を閉じて窓に近づく。
「何をしてるんですか? ライト」
そして自身の主であるレスターの弟である少年を脱したばかりの年頃の青年の名を呼んだ。
陽光に透けて飴色に変化する癖のない髪が揺れて窓の下に腰掛けていたライトが顔を上げる。
「やあ」
「やあ、じゃ…ありません。何してるんです?」
「ニアって昔から辛抱強いね。もう少し早く出てきてくれると思った」
咎めるニアの口調もお構いなしに、くすくすとライトが悪気無く笑う。二年という間、他国の騎士侯と旅をして帰ってきてからと言うもの何処か人間的に図太くなったようだ。
それは父親である総一郎からすれば精神的に何処か脆く家の中で妾腹の子という負い目を感じていたライトの変化は喜ばしいことであったろう。幼い頃からライトを知っているニアとしてもそれは良いことのように思えた、が。
「用事あるなら、こんなまどろっこしいやり方しなきゃいいじゃないですか」
「別に。………ちゃんとした用事がある訳じゃないから」
「私、別に怒りませんよ」
窓から身を乗り出したニアのふわりとした純白の髪が陽光を浴びてきらきらと光った。
白磁の華奢な手が窓枠に掛かり身を乗り出す形になっているニアが呆れ顔を浮かべると、壁に背を預け座り込みニアを見上げていたライトが笑った。
「ニアが怒らなくても、ね」
「………はい?」
「だってニアは兄さんのものだからね」
滑らかな動きで首を傾げたニアはライトの腹違いの兄の為に作られた人形。
人に最も近く人形でありながら心を持ち、そして何より自ら主人を選ぶことの出来る人形とはいえ、特別な人形だ。
そしてニアはライトの兄が幼い頃に彼の為にオーダーされ、そして彼を主人と選んだ。
自然とライトとも旧知の仲である。
「………まぁ、質問の深い意味は聞かないでおきましょう。それで何の用ですか?」
「うん。…これ、直し方知らない?」
肩を竦めて自分の膝の上にある小箱を指し示したライトにニアが微かに笑む。
それはライトがまだ子供の頃に妹の誕生日に送ったオルゴールではなかったか。
「壊れたって言うから直してやるって言ったんだけど…。音が鳴らないんだよ」
「……貸して下さい」
困ったと首を振るライトの手から小箱を受け取ったニアが、小さな出っ張りを引いて箱の蓋を外す。
螺旋を巻いていた部分が歪み上手く仕掛けが回らなくなっていたようだった。
白い手を窓の外に目もくれず差し出すと掌にライトの持ち出してきた工具が乗せられる。
僅かな時間ニアが細かい作業をする微かな音が響き、ついで少しだけ古びた可愛らしい音が続いた。
「……直ったの?」
「はい。直りました。これで大丈夫ですよ」
窓越しにニアの手元を覗き込んでいたライトがぱっと顔を上げて「ありがとう」と笑うので「どういたしまして」とニアも微笑む。
工具とオルゴールを月に返してニアはするりと廊下に続く扉に視線を向けた。
窓から離れ庭を歩いていったライトに背を向ける形となりニアは後ろ手で窓を閉める。
「帰ってきていたんですね」
「何をしてるのかと思っていただけだ」
「……違うでしょう? ライトに気を遣ったんでしょう? レスター」
にこりと笑い、自然と差し伸ばしてきた主人の大きな手にニアは歩み寄り自分の手を乗せた。
その手を引かれ腕の中に収まる形になり僅かに苦笑したニアが囁く。
「お帰りなさい、レスター」
>>むつきさんのお遊びパラレルの設定をお借りして。
というわけでむつきさんに捧げます。
デスノ以外だと書けそうにないので、分類不可ではなくデスノカテゴリーで。
エルも書いてみたいな気がするけど上手くいかない気がするので、やめておく。
何か思ったけど私はどうやら月ニアが割と好きなようだよ。。。
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サイトにあげる文章の草稿や、ただのメモ等もあがります。大体が修正されてサイトにin(笑
そんなところです。
ブログ内文章無断転載禁止ですよー。