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「そうだねぇ、」
ふ、と相槌を打った少女が短く切りそろえた髪を揺らして視線を彷徨わせた。
隣を歩いていた長い黒髪の女性が釣られるようにして視線をあげたが何も見えない。
「あの時の僕は、大馬鹿者としか言えなかったろうね」
くすくす。
少女が笑う。
理由が分からず、しかし表情には出さずに困ったことを沈黙で示した女性に少女が笑いかけた。
「殺して欲しかったなんて、馬鹿すぎるでしょう? 終わらせて欲しかったなんて…、その為に自分を殺してくれる人間が出てくるまで殺し続けるなんて」
さらりと言ってのける少女の言葉はしかし陰惨な事実を含む。
それでも表情を変えない女がつと視線を少女に向けた。
「では、今は?」
「………生憎、続く記憶はあるんだけどもね」
少女には苦痛とも言えるある一点がある。
彼女の魂が世界から存在してから、幾ら死に生まれてもその前の記憶を持つ。
言い換えれば輪廻転生を繰り返して尚、彼女は彼女の魂がこの世に存在してから、彼女が生きてきた全ての記憶を持つのだ。
今の少女は齢十五。
しかし彼女の人間的に積まれた経験は途方もない。ただリセットされず蓄積し続ける。
「人間、生きてる限り修行で。生まれ変わる度に…少しずつ業を昇華していく…って何処かの宗教であるじゃない?」
「はい?」
「僕は一体、どれほど深い業を持ったのだろうね。………ずっと消えない記憶なんて」
「あの、」
「大丈夫。永い時の間、見失ったものがあるけど見つけたものもあって………結局今は前回のようには思わないから」
死を望み、その為に他者を殺める狂った精神は。
「…本当はあの時、僕は自分で絶つべきだったんだ。待たず、狂ってしまったのなら自らで終えるべきだった。付き合わせてしまった…。君の片割れ…。もし、また…会えるのなら謝りたいなぁ」
「無駄です」
「うん。分かってるよ。君たち”人形”は人間を愛し、愛される為に生まれてくる。謝っても仕方ない」
無表情に告げた女性に少女が手を伸ばす。
そっと滑らかな頬を滑り落ち、指先は上質な絹糸のような長く伸ばされた黒髪を梳いた。
「だから、ただの僕のエゴだよ」
嘗て人形を従え、恐怖の意味で女王と呼ばれた記憶を持つ少女は、その事実を微塵も感じさせない表情でくるりと身体を返す。
小柄な背中を負うように無表情な女性もまた少女の一つ後ろを続いて歩いた。
>>むつきさんちのジャンルごちゃ混ぜ設定の小ネタ。
景ちゃんとクロニカ。
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サイトにあげる文章の草稿や、ただのメモ等もあがります。大体が修正されてサイトにin(笑
そんなところです。
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