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謂わばネタ掃き溜め保管場所
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辛島くん、と耳が声を拾った。
少女の声だった。
それは普通すぎる、有り触れた何処にでもある声。
一瞬出そうになった声を押しとどめて辛島と呼ばれた少年は振り返る。
成長途中の不安定に細い線の彼は色素の薄い髪を揺らした。
駆け寄ってくる少女が振り返った辛島と目が合い笑う。国府さん、と口の中だけで呟いた。それは少女の名。
極力、少年は自分の声を出すことを抑える。
否応無しに彼の声には行使力があり、少年の意志に関係なくその言葉は口にした内容を、それを聞き届けた相手に従わせる。
一種奇跡のような声。
しかし少年にとっては人間として生活する上で一番煩わしいものだった。

「良かった、追いついた」

軽い足音を響かせて辛島に追いついた少女が淡く笑う。
肩で息をする彼女は随分と走ってきたのだろう。
未だ整わぬ息の途中で少女はすっと指先を、先程辛島が曲がった道路の先に向けて話し出した。
「あのね、あそこで丁度辛島くんが見えたから…」
「追いかけてきたの?」
不意に疑問に思って口を突いて出た言葉は細く、しかし少年はしまったと口元を手で押さえた。
「…うん、そう」
望むと望まないとにかかわらず、行使力を持つ辛島の声に少女が怯むことはない。
そっと口元を覆った辛島の手に自分の指先で触れて笑う。
「大丈夫。これくらいじゃ」
全てを知った上で少女は言う。
気持ちを伝えたら相手が「否」でも「応」と答えさせてしまう、意志に関係ないその声の力に怯えたのはいつだったか。
少女に答えるように辛島も笑う。
微か、余り表情のない彼が見せる笑みはいつも柔らかく優しげでどこか儚くて。
人の持つ精神に直接揺さぶりを掛ける声を持ち得た少年の、人間としての怖れは無口な性格とあまり表情を見せないことの表れだと知った時に気付いた気持ちを少女は何と言っていいか分からない。
ただ触れたいと思った。
その、幻影さえも見せる鮮やかな声に。存在に。何より彼自身に。
少しだけ身を引いた少年の、未だ口元にある手をそっと取って少女は笑った。
「いこう」

少女の声に行使力はない。
けれど辛島の心にはそれで十分だった。



>>突然の あかく/咲く声ネタ(笑
   漫画自体を実家に置き忘れているので色々間違いがありそうで怖い…。ブルブル(こら
   とりあえず捧げ物。

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