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薄ぼんやりと。
夜闇に浮かぶ人影は細く、闇に溶けてしまいそうな儚さだったので呼び止める。
「おぉい、元な…」
「今晩和。長曾我部殿」
元就。
その名前を飲み込んで、長曾我部元親は振り返り挨拶を寄越した人影をまじまじと見つめた。
昼であれば陽光に柔らか溶けるであろう色素の薄い髪。
作り物めいた端正な顔立ちと切れ長の一重の瞳。
その容姿は自分の知ってる元就の姿と寸分変わりはない。
違うとすれば、穏やかに掛けられた声と浮かべられた表情。
それと元就よりも少し長めの髪。それをきっちりと首の根本で一括りにまとめ上げてある。
闇に慣れた目でじっと数拍見つめてから元親は自分が人違いしたのだと認識した。
「隆元か」
ほっそりとした体躯は闇に紛れて影になってしまえば見分けは付きにくい。
毛利元就の嫡子である隆元は、元就に面識のある元親でさえ見間違えるほど父の容姿に似ている。
暗い視界で人物の線しか捕らえられないのでは間違えるのも無理はない。
ぼんやりと向き直った隆元が、またにこりと笑んだ。
「こんなとこで何やってんだ?」
城の中では、長曾我部の軍を歓迎するための宴が開かれており、庭にいる隆元の耳にもその騒ぎは良く届いていた。
父である元就は酒を自ら禁じてる上、賑やかしいことは好きではない。
酒宴の最初だけ同席してすぐに自室に引っ込んでしまった。
父の体質を受け継いだか酒があまり得意ではない隆元は酔いを醒ますために涼しい庭へと出たのだが…。
「…星を」
「星?」
「はい。今日は良く見えます」
見上げた隆元に釣られて、元親も見上げた。
そうすれば黒曜石のようなつるりとした漆黒の上、宝石をばら撒いたかのような星空が広がる。
じっと星を見詰め続ける隆元に視線を移して、元親は苦笑した。
耳聡くそれを聞きつけて隆元が「何です」と聞いてくる。
「いや…元就は、…日輪しか目にもくれてない感じだが。お前は違うんだな…と思ってよ」
「ああ」
その言葉に頷いた隆元がふと声を落とす。
「確かに、日輪も大事だと思います。けれど…、星は…行く先を決めるのに大事でしょう」
その言葉が自身に向けて問われたのだと、元親は数秒遅れて理解する。
行く先を決めるとは船の進路を指したのか。
確かに進路を決めるのに星を読む。
「そりゃぁ、船の話か?」
「……何事も。明るく周囲を照らすのと導くのでは、役割も何もかも違う」
「…なるほど」
「私は…日輪も大事だと思いますが、こうやって夜の闇の中で浮かぶ星も大切だと思うのです」
そういってもう一度笑った隆元が、すと元親の後ろを指差した。
「…?」
「行かなくて良いのですか? 今宵の宴の主役でしょう?」
「ああ。厠に行くって抜けてきたんだ」
「なら行った方がいいですよ。……貴方がいらっしゃると、みんな楽しそうだ」
やんわりと戻ることを促した声に頷いて踵を返しかけた元親が振り返る。
「お前は?」
「暫くしたら参りましょう」
父もなく、私もいなければ恰好がつかないでしょうから。
そういってまた夜空を仰いだ隆元に今度こそ背を向けて、元親はどんちゃん騒ぎになっているであろう座敷に足を向けた。
>>元親と毛利家長男。
隆元は容姿が元就似で、与える印象が全く違ったらいいなの妄想です。
毛利家の三兄妹。隆元、元春、隆景は仲が良さそうですよね。。
三人で父親を支えたんだし、BASARAでも支えてるといいとか思う…。
けど、あの容姿のままじゃ…元就、本当妖精だ…^q^
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サイトにあげる文章の草稿や、ただのメモ等もあがります。大体が修正されてサイトにin(笑
そんなところです。
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