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謂わばネタ掃き溜め保管場所
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ざくん。
何かに突き刺さった感触が、した。
ずぐずぐと音がするようで眉根を寄せたがそれ以外の感覚は無くて、気持ち悪いと厭う事さえ許されない。
開け放されたような空の青が目に優しく、自身の手を濡らす赤が目に痛い。
少しだけぬめった赤の液体は鉄の臭いを存分に含んでいて嫌な感じだと思った。
だというのに自身の手は何故、これを止める事が出来ないのだろう。
何かに突き立てた太刀を引き抜けばいいだけのこと。
それなのに何故出来ないのだろう。

「……嗚呼。」

呆然と呟いた声は耳を打ったが幾重にも隠された遠い出来事のように遠い。
何とか力を込めて引き抜こうとした腕に絡みついたものがあった。
元就のそれよりも幾分も大きな掌。
それが元就の腕を両方掴んで離さない。

「……離せ。この期に及んで往生際が」

震う言葉に答えるはずの鷹揚な声は返らない。
無い言葉の代りに腕を掴む力が増して、余りの強さに眉の皺を更に深くする。

「……はな、せ」

何故言葉を発しないのか。
何故いつも綺麗な色を讃えていた瞳が薄っすらと弱い光しか宿していないのか。
理解など容易に出来るはずの状況で、常ならば他人の何倍もよく回転する思考がそれでも機能しない。

「長曾我部…!」

悲鳴の様に名を呼んで元就の膝が頽れる。
既に半分以上身体を支えることの出来なくなっていた男に引き摺られる様に元就は地に膝をついた。
両膝を地についた状態で敵の身体に太刀を食い込ませたまま、その両腕は敵の腕に捕られて自由にならず奇妙な体勢のままで元就が珍しく整わぬ呼吸を繰り返す。
掌から、腕に伝う、液体の感覚。
赤い色がぽつぽつと大地に染み込んで見えなくなるのを視界の端で見詰めながら元就は「嗚呼」と小さく呻いた。

戻らないのだ何もかも。

只一瞬の合間でしかなかったのに、その瞬間に鮮やかに笑ったこの男を、きっと元就は一生忘れることは出来ない。
何合か切り結んだその最後に笑って未来を譲った男を、きっと黄泉路を歩く頃になる時になっても元就は忘れることが出来ない。




>>親就死にネタ。
   ほら、合戦してどちらかがなんていうのは当たり前で。
   実質負けたのは元親。けど本当に負けたのは元就みたいな感じが萌え
   (どうだっていい)
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此処は思うがままにつらつらとその時書きたいものを書く掃き溜め。
サイトにあげる文章の草稿や、ただのメモ等もあがります。大体が修正されてサイトにin(笑
そんなところです。

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