謂わばネタ掃き溜め保管場所
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さやかに衣擦れの音。
癖のない艶やかな黒髪は肩に付く寸前の位置で揺れた。
その髪をさらりとかき上げて、彼女はほうっと息を吐く。澄んだ切れ長の瞳が窓から差し込む陽光に細められた。
「…何を、しているのやら」
ぽつんと呟かれた言葉には何の感情も無い様で。
けれど静かに揺れている。ゆっくりと瞼を落とした彼女が深く息を吸い込む。
紡がれたのは音。優しく寄せて返すような旋律。
外から聞こえていた喧嘩の声が途端吸い込まれるように消えていく。
些か緩慢な動きでベットから抜け出した彼女は淀みない動きで着替え始めた。
* * * * *
「……久しぶりですね」
にこりと笑って出迎えた人物に元親は思わず言葉を失った。
人としての感情の起伏とは少しずれた感性の彼女を忘れるわけがない。
自分よりも幾分も年上のはずの彼女の容姿は、自分が最後に見た頃と余り変わっていない。
言ってしまえば、年齢不詳の域だ。
次期カナリアの聖地の長と呼ばれた彼女は、或る日突然聖地を出て行ってしまった。
恋をしたのだといった。そしてそれを知ってしまったが故に聖地で長としての任には就けそうにない、といった。
あまりにも静かに、少しだけ悲しそうに話すので、何も言わずに頷いた思い出がある。
「……えーっと、謙信? なんであんたがここに」
「おや? 政宗から聞いてきたのでしょう?」
「ああ…。えっと俺の力になってくれる人がいる…って話だった」
「………わたくしだとは言ってなかったということですね?」
心得たとばかりに問うてきた謙信に、一体どういうことだと元親は腑に落ちないままに頷いた。
起き上がって大事無いことを確認した元親は、政宗に礼を言ってとりあえず町を去ろうとした。
それを「まぁ、待てよ」と止めたのは政宗で、挙句事情の説明を何もしない元親に笑顔で「お前、悩んでるんだったらいい事を教えてやる」と言って、この場所を教えたのだ。
なんでも今の自分の力になってくれるだろうとのことだった。
何も話してないのに、ある程度複雑なことになっていると思ってくれたのかと元親は言葉の通りに此処を訪れた。
正直、今の自分はどうしていいか分からない。
あの時、触れた元就が別れを告げて…、そして自分は歌を紡いで、気づいたら政宗の家で介抱されていた。
元就が何処に行ってしまったのか分からない。
「えぇと」
「立ち話もなんです。お入りなさい」
するりと踵を返して建物の内部へと招き入れた謙信に従って元親は大人しく建物の中に入った。
無言のまま廊下を歩き、客間に通される。
そこで漸く振り返った謙信が柔らかな笑みを浮かべた。
「……それで、あなたの用件は?」
「それは」
「…調律師」
「………」
「そうですね。貴方が歌を紡いだのは5日ほど前。…あまりにも害意も何もない歌の割に強い音でした」
「それは政宗も言ってた」
「ええ。だからこそ、政宗はすぐにあの場所に向かい、そこで意識を失っていたあなたを見つけた」
手で備え付けの椅子に座るように促して、謙信は窓の外に視線を向ける。
倣うように窓の外に視線を向けた元親はしかしすぐに視線を落とす。
「音を操られましたね?」
「……なぁ」
「なんです?」
「あれが、音を操ったってことなら…。そしたら…あの時俺の傍にいた人間が…調律師って…そういうことか?」
「……断言は出来ません。けれど、可能性は高い」
謙信の淡々とした言葉にぎゅっと両手を握りこむ。
元就が調律師で、自分がカナリアなのなら、本来二人はどんなことであれ接触もするべきではない。
それを知っていて、それゆえの「さよなら」なのか。
「俺は…」
「不思議なことですが…。あの後、弱かったのですが、違う歌が聞こえました。あれは子守唄でした」
つと視線を元親に向けて謙信が首を傾げる。
「一緒に居た人物。……カナリアではなかったのですか?」
「カナリアなら、聖地で顔見知りのはずだろ? ……大体同じくらいの年頃だと思うし」
「……保護漏れということもありえます」
「けど、音の…紡ぎ方を心得てるようだった」
「元親。分かっていませんね。……まぁ、わたくしも実際会ったことがないのでなんとも言えませんが…調律師はカナリアの音を操り、使役することが出来ても…自らでその音を紡ぐことはできないはずです」
「…え? それじゃ」
「……確かめたわけではないので定かではないですが」
そう付け足して、けれど謙信は問う。
「確かめに追いかけますか?」
「何処に行ったのか分かるのか?」
「…今何処にいるのかは分かりません。けれど、あの後すぐに…東の方に向かっていったのは知れています」
「東…」
確かこの町から東に向かえば、二日で大きな街に着く。
謙信の情報が確かであるのならまだそこに居るかもしれなかった。
木の葉を隠すなら森の中。
人を隠すのなら人ごみの中が良い。
「どうします?」
「とりあえず良く分かんねぇけどそうする」
「…なら、気をつけて」
「ああ」
政宗にもとりあえず東に足を向けることを伝えなければなるまい。
準備もせねばならないと、立ち上がった元親に音もなく近寄った謙信がす、と手を差し出してきた。
「………?」
「おまもりです。持っていきなさい。きっとあなたの役に立ちます」
白い手が渡してきたものはつるりとした空色の玉。
表面に少しだけ刻まれた文様が、玉が光を反射すると絶妙に乱反射を起こして綺麗に見えた。
「いいのか」
「いいですよ」
紐の通されたそれを迷わず首にかけると、謙信が柔らかな笑みを深くした。
そしてその玉を確かめるよう指先で触れ、すぐさまに離す。
「また、困ったことがあったらいつでも立ち寄りなさい」
「ああ」
頷いて迷わず立ち去る後姿を見送って、謙信は先程から浮かべていた笑みを消した。
そしてふうと小さく溜息を吐く。
「何じゃ。溜息なぞ吐いて」
「いえ…。何でもありませぬよ。…少し……。いえ、人を好きになるというのは不思議なものです」
「突然何を言うのかと思うたら」
部屋の奥から声を掛けて来た人物が苦笑を零したので、謙信は振り返った。
「彼は、きっとその者を好いているのですよ」
分かります。
そういった彼女はもう一度柔らかく微笑む。
>>頭が眠くて半分機能してない(待)
創作カナリア設定話。龍虎は公認恋仲。そしてもう謙信も女の方で。
これ以上、女にすることはないと思う。しないと思うよ(好き勝手)
てか謙信は公式でも性別不詳だって思うけどね。
さてちかたん追いかけろよー…_ノ乙(、ン、)_
癖のない艶やかな黒髪は肩に付く寸前の位置で揺れた。
その髪をさらりとかき上げて、彼女はほうっと息を吐く。澄んだ切れ長の瞳が窓から差し込む陽光に細められた。
「…何を、しているのやら」
ぽつんと呟かれた言葉には何の感情も無い様で。
けれど静かに揺れている。ゆっくりと瞼を落とした彼女が深く息を吸い込む。
紡がれたのは音。優しく寄せて返すような旋律。
外から聞こえていた喧嘩の声が途端吸い込まれるように消えていく。
些か緩慢な動きでベットから抜け出した彼女は淀みない動きで着替え始めた。
* * * * *
「……久しぶりですね」
にこりと笑って出迎えた人物に元親は思わず言葉を失った。
人としての感情の起伏とは少しずれた感性の彼女を忘れるわけがない。
自分よりも幾分も年上のはずの彼女の容姿は、自分が最後に見た頃と余り変わっていない。
言ってしまえば、年齢不詳の域だ。
次期カナリアの聖地の長と呼ばれた彼女は、或る日突然聖地を出て行ってしまった。
恋をしたのだといった。そしてそれを知ってしまったが故に聖地で長としての任には就けそうにない、といった。
あまりにも静かに、少しだけ悲しそうに話すので、何も言わずに頷いた思い出がある。
「……えーっと、謙信? なんであんたがここに」
「おや? 政宗から聞いてきたのでしょう?」
「ああ…。えっと俺の力になってくれる人がいる…って話だった」
「………わたくしだとは言ってなかったということですね?」
心得たとばかりに問うてきた謙信に、一体どういうことだと元親は腑に落ちないままに頷いた。
起き上がって大事無いことを確認した元親は、政宗に礼を言ってとりあえず町を去ろうとした。
それを「まぁ、待てよ」と止めたのは政宗で、挙句事情の説明を何もしない元親に笑顔で「お前、悩んでるんだったらいい事を教えてやる」と言って、この場所を教えたのだ。
なんでも今の自分の力になってくれるだろうとのことだった。
何も話してないのに、ある程度複雑なことになっていると思ってくれたのかと元親は言葉の通りに此処を訪れた。
正直、今の自分はどうしていいか分からない。
あの時、触れた元就が別れを告げて…、そして自分は歌を紡いで、気づいたら政宗の家で介抱されていた。
元就が何処に行ってしまったのか分からない。
「えぇと」
「立ち話もなんです。お入りなさい」
するりと踵を返して建物の内部へと招き入れた謙信に従って元親は大人しく建物の中に入った。
無言のまま廊下を歩き、客間に通される。
そこで漸く振り返った謙信が柔らかな笑みを浮かべた。
「……それで、あなたの用件は?」
「それは」
「…調律師」
「………」
「そうですね。貴方が歌を紡いだのは5日ほど前。…あまりにも害意も何もない歌の割に強い音でした」
「それは政宗も言ってた」
「ええ。だからこそ、政宗はすぐにあの場所に向かい、そこで意識を失っていたあなたを見つけた」
手で備え付けの椅子に座るように促して、謙信は窓の外に視線を向ける。
倣うように窓の外に視線を向けた元親はしかしすぐに視線を落とす。
「音を操られましたね?」
「……なぁ」
「なんです?」
「あれが、音を操ったってことなら…。そしたら…あの時俺の傍にいた人間が…調律師って…そういうことか?」
「……断言は出来ません。けれど、可能性は高い」
謙信の淡々とした言葉にぎゅっと両手を握りこむ。
元就が調律師で、自分がカナリアなのなら、本来二人はどんなことであれ接触もするべきではない。
それを知っていて、それゆえの「さよなら」なのか。
「俺は…」
「不思議なことですが…。あの後、弱かったのですが、違う歌が聞こえました。あれは子守唄でした」
つと視線を元親に向けて謙信が首を傾げる。
「一緒に居た人物。……カナリアではなかったのですか?」
「カナリアなら、聖地で顔見知りのはずだろ? ……大体同じくらいの年頃だと思うし」
「……保護漏れということもありえます」
「けど、音の…紡ぎ方を心得てるようだった」
「元親。分かっていませんね。……まぁ、わたくしも実際会ったことがないのでなんとも言えませんが…調律師はカナリアの音を操り、使役することが出来ても…自らでその音を紡ぐことはできないはずです」
「…え? それじゃ」
「……確かめたわけではないので定かではないですが」
そう付け足して、けれど謙信は問う。
「確かめに追いかけますか?」
「何処に行ったのか分かるのか?」
「…今何処にいるのかは分かりません。けれど、あの後すぐに…東の方に向かっていったのは知れています」
「東…」
確かこの町から東に向かえば、二日で大きな街に着く。
謙信の情報が確かであるのならまだそこに居るかもしれなかった。
木の葉を隠すなら森の中。
人を隠すのなら人ごみの中が良い。
「どうします?」
「とりあえず良く分かんねぇけどそうする」
「…なら、気をつけて」
「ああ」
政宗にもとりあえず東に足を向けることを伝えなければなるまい。
準備もせねばならないと、立ち上がった元親に音もなく近寄った謙信がす、と手を差し出してきた。
「………?」
「おまもりです。持っていきなさい。きっとあなたの役に立ちます」
白い手が渡してきたものはつるりとした空色の玉。
表面に少しだけ刻まれた文様が、玉が光を反射すると絶妙に乱反射を起こして綺麗に見えた。
「いいのか」
「いいですよ」
紐の通されたそれを迷わず首にかけると、謙信が柔らかな笑みを深くした。
そしてその玉を確かめるよう指先で触れ、すぐさまに離す。
「また、困ったことがあったらいつでも立ち寄りなさい」
「ああ」
頷いて迷わず立ち去る後姿を見送って、謙信は先程から浮かべていた笑みを消した。
そしてふうと小さく溜息を吐く。
「何じゃ。溜息なぞ吐いて」
「いえ…。何でもありませぬよ。…少し……。いえ、人を好きになるというのは不思議なものです」
「突然何を言うのかと思うたら」
部屋の奥から声を掛けて来た人物が苦笑を零したので、謙信は振り返った。
「彼は、きっとその者を好いているのですよ」
分かります。
そういった彼女はもう一度柔らかく微笑む。
>>頭が眠くて半分機能してない(待)
創作カナリア設定話。龍虎は公認恋仲。そしてもう謙信も女の方で。
これ以上、女にすることはないと思う。しないと思うよ(好き勝手)
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此処は思うがままにつらつらとその時書きたいものを書く掃き溜め。
サイトにあげる文章の草稿や、ただのメモ等もあがります。大体が修正されてサイトにin(笑
そんなところです。
ブログ内文章無断転載禁止ですよー。
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