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謂わばネタ掃き溜め保管場所
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キラキラと日差しが海水に反射して水面の下にある砂に光の模様をつける。
青空は果てを知らず、何処まででも続いているようだった。浅瀬で海水に腰まで浸かったまま空を仰いだ男が眩しそうに目を細めた。
柔らかな明るい海の色を切り取ったような瞳が青を映す。
ふと視線を地上に戻して、砂浜に立っている人影を見つけて男は手を振った。
元々日焼けしない体質の男はがたいは良いものの、毎日海に接しているとは思えない肌の白さだ。

「もーとーなーりー」
「うるさい」

名を呼べば不機嫌に一言返される。
眉間に皺の寄った不機嫌顔で、薄い緑色の日傘を差した人物は小さく溜息を吐いてみせた。
真夏の日差しは容赦なく照りつけて、汗はしとどに流れ落ちる。
見ている分には涼しげな白の綿パンを穿いた元就はうんざりとした様子で空を見上げた。
太陽は好きだったが、此処まで徹底的に照らなくても良いと思う。
ただの我が侭だとは思ったが、そう思わせる位の本日の暑さである。

「そういえばよぉ」

顔を水につけずにゆったりと泳ぎながら男が砂浜の元就に話しかける。
それに小さく相槌を打って返したものの、きっと水音に消されて聞こえてはないだろう。
けれど男は話を続けた。

「昨日だったか、カイムが此処で水遊びしてたらしいぜ」
「…ほう? それは珍しい」

首を傾げるのも当然のこと。
足を付いて泳ぐのを止めた男も「だよな」と言った。
近所に住むあの一種の暗闇を引き連れた男が、炎天下の中海に入るなど珍しい以外の何ものでもない。
海にいるその人物を想像して、全くと言って良い程情景と似合わぬミスマッチぶりに元就が小さく笑いを零した。

「なんでも、あの噂を」
「…噂? ああ…あれか。馬鹿馬鹿しい」

そう言い捨てた元就に男が笑う。
言うと思った、と言いながら浜に戻ってくる男の片手は固く握られている。

「アンヘルもきっと同じ事言っただろうなぁ」
「だろうな」
「んで、きっと自分を笑ったに違いないぜ?」
「…何?」
「だってよぉ。ほら」

握られたままの手が元就に突き出される。意味が分からず掌を差し出すところりと水気を含んだ何かが掌を転がった。
半透明のそれ。
丸みを帯びて、太陽光が入れば微かにプリズムを生む。

「成程…」

指先を動かし巧く掌の上えで転がしながら元就が笑った。
日の光を浴びて柔らかに光る虹の石。それを見つけられたならば幸せが訪れると、まことしやかに広まった噂。
白詰草の四葉とそう対して変わらないのだろう、その信憑性。

「其れがないと思ってしまえば、在ったとして存在しないものと同じ」
「逆に信じれば、本当は無かったとしても在るっていう可能性が生まれる…ってか?」
「…ああ。実に馬鹿らしい事よな」
「そう言うなよ」
「これとて、ただの硝子の破片が石のように研磨されただけのものだと言うに」
「でも、綺麗だろ」


さらりと屈託無く述べた男に、元就が一瞬呆気にとられる。
視線を掌に落とすとプリズムを生むその様は確かにがらくたとは言え、綺麗と表現するのに相応しかった。

「悔しいが」

小さく俯いたまま呟いた元就が、ゆっくりと顔を上げる。


「今回は我の負けのようだ。元親」

 

別に勝負なんてしてねぇけどな。

笑って海に戻る男の背中とその男が受け渡していった硝子の破片を交互に見詰めて元就が小さく苦笑を漏らす。
そんな暑い夏の昼下がり。

 

>>一つ前に書いたカイアンの対になるような話。
   アニキとオクラとカイムとアンヘルは割と近所のイメージ。
   元就とアンヘルは何となく似てるけどやっぱり違うから、仲良しだといい(笑
   うっかりパラレルです^^^^

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そんなところです。

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