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謂わばネタ掃き溜め保管場所
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じとじとと暑い日差しを浴びながら、何を馬鹿なと少女はこめかみを押さえた。
拍子に鮮やかな髪がさらさらと小さな背中に滑り落ちる。
目深に被った帽子は日焼け防止のはずだったが、正直少女はあんまり気にも留めていなかった。
それよりも。
暗い闇の髪を無造作に伸ばしたTシャツにジーパン姿の男が、一心にしていることの方が気になった。
日陰も生まぬ、海岸。
空の青を映す海。
遠くには入道雲。
ある意味絵に描いたような夏の景色。
その中で男は遠浅の海に膝までジーパンが濡れるのも気に留めず入りながら、何かを探しているようだった。
屈んで、悪戯に水面を揺らしてはまた顔を上げる。
暑さで流れる汗をTシャツの袖で拭う。
長すぎる前髪を払えば、夜の海を思わせる色の瞳が覗いた。

「…カイム」

気は乗らないと思いつつも少女は声を掛ける。
じっと窺うように動きを止めた男に、少女が盛大に溜息を吐いてみせた。

「そんなところで何をしておる」
「探し物」
「見れば分かる馬鹿者」
「…お前が言ったんだ」
「あれは、絵空事だ。…真に受けるな」
「あるかもしれないだろう?」
「…あるわけがない」

純粋なわけでもあるまいに、男はそんな風に言う。
日の光を受けて柔らかに、光る虹のような石がこの海岸にあるなど誰が言い始めたのか。
そしてそれを見つけられたら幸せになる、などと。
無いからこそ、見つけたら幸せになれるといわれるのだ。
そういった少女に男は不器用に笑った。
言葉はなく、その直後男は何かを見つけたように身を屈め、手を水面に入れる。
小さな水音。


「前に言ったな。アンヘル」
「……うん?」
「信じなければ、在ると認識しなければ、其れは在っても無いのと同じだと」
「ああ」
「ならば、これも同じだ」

そう言って投げて寄越したものを両手で受け取って少女は息を呑む。
掌で虹色を微かに反射で見せる半透明の石。
太陽光が当たり反射することによってプリズムを作り出す石。


「………我が馬鹿者だったようだな」


掌で石を転がしながら少女が笑った。
釣られて男も笑った。





>>夏っぽいように。現代パラレルカイアン。
   へたれな暗黒王子とツンデレで少女な天使な彼女が好きです。
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此処は思うがままにつらつらとその時書きたいものを書く掃き溜め。
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そんなところです。

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