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謂わばネタ掃き溜め保管場所
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それはまるで、砂漠の中から一粒の金を探すような途方もない作業だった。
雪に隠れてしまうその儚すぎる存在を、寒さで感覚が奪われる中で捜すのは、途方もないことであった。
けれども、未だ少女の年齢を出ない彼女は小さく息を吐き出して諦めきれないと前を見据える。
少年とも取れる中性的な雰囲気を纏う彼女が、寒さを凌ぐために襟を掻き合わせた。
別に慣らしたいと思ったわけでもないが、カチカチと寒さで歯が鳴る。
生理的現象とも言えるそれを情けないと舌打ち一つで打ち消して少女はまた一歩と雪原の中、その探し人の名を呼ぶ。
残像はあるのに、実像はない。
触れれば温かいはずなのに、存在が薄い。
人間として一番不確かな存在でもある彼を捜すのは容易ではない。
けれど、彼女は諦めようともしなかった。
そっと空気に溶けるような希薄な、彼の、その…今にでも消えてしまいそうな存在を捕まえたとばかりに宙に手を伸ばす。
空気を掴んだ手は存在を掴むことが叶わず落ちるはずだった。

なのに。


「…つかまえた、冬さん」


柔らかに笑んで告げる言葉は、寒さに震え小さく風に掻き消えてしまいそうなほどであったのに。

「……景ちゃん」

確かなものとして未だ存在の不安定な彼を繋ぎ止める。
幻のように雪景色に溶けそうでいた彼が、その言葉でゆっくりと実像を結ぶ。
存在があるようで無い狭間で揺れる彼が時折消えそうになる度に、見つけ出す彼女のその言葉はある種絶対でもあるようで、儚く消えてしまいそうな願いの言葉にも似ていた。

「……冷たいね」

冷え切ってしまっているのは彼女の方なのに、捕まえた手を労るように包んでぽつりと落とされた言葉に彼が少女を抱き締めた。
突然の抱擁に驚くかと思えば、一瞬息を詰めただけで受け入れた少女は優しく彼の背を撫でる。
幼子をあやすような手つきに抱き締める腕に一層力が篭もる。
それは少女の存在を確かめるためか、自分の存在を確かめるためか分からないけれど。

 

「帰ろ、冬さん」

そんな彼の心情を汲み取ってか掛けられた声は、優しい。
存在として不確定であるが故に永久に近い彼と、そんな彼を繋ぎ止める彼女、どちらが先に縋ったのだろう。
そしていつか突き付けられる答えに絶望を覚えるのはどちらが先だろう。


いや、既に二人は互いの手を取った時から、終焉を知っていた。




>> 書かないと言いながらうっかり書く分類不可の冬さんと景ちゃん
    最初から終わるのか、最初から無いのか、
    だからこそ生まれる可能性を、きっと人間ではない対の彼女も望んでいてくれたら

    その時に生まれるに至るのでしょう、と
    歪曲しすぎて捏造しすぎて、辿り着いた先の話です

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此処は思うがままにつらつらとその時書きたいものを書く掃き溜め。
サイトにあげる文章の草稿や、ただのメモ等もあがります。大体が修正されてサイトにin(笑
そんなところです。

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