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謂わばネタ掃き溜め保管場所
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遠くで鳴く鳥が輪を作る。
地平を赤く染め上げる落日は真実血で染め上げた世界をさらに深いものにしただけだった。
動くものはなく、曇り切りもう焦点を結ばない無数の目が虚空を見上げているだけで。
それを閉じさせてやる者さえいない、そんな中で。

「毛利」

全てを受け入れるように立ち尽くした人影は細く小さい。
呼びかけは幽かで、ともすれば儚く届く前に消えてしまっただろう。
しかし肩越しにゆるゆると振り返った人影に声は届いたらしい。声は無く唇だけが動く。
掠れすぎて出ないのか、ただ声を上げるのさえ億劫なのか。
形の良い薄い唇が形作ったのは元親の名だった。

「……もういい。戻るぞ」

冷徹に全てを切り捨てる知将は時折終えた戦場で祈るわけでも嘆くわけでもなくただ立ち尽くした。
己の所業を受け止め受け入れるようで、無言で告解をするようでもあった。
華奢な背中はそれでも曲げられることなく凛と立つことが不思議に思えるほどに、その姿は儚く。
いつだったか。
初めてそんな姿に手を伸ばした。
驚いた表情の奥に微かに震えるような正気が見えて、同じように生きる人間で、考えだけが違いそれ故に可哀想なのだと知った。

「……元就」

もう一度呼びかける。
地に縫い付けられたように動かない足がゆっくりと踵を返した。
元親の声に僅か首を傾げたが掛けられる声はない。
ただ元親が当たり前のように伸ばした手に、少しだけ怯えるように躊躇って応えた手は温かかった。





>>こういうのがシンプルに好きなのかも知れないな、とか。

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此処は思うがままにつらつらとその時書きたいものを書く掃き溜め。
サイトにあげる文章の草稿や、ただのメモ等もあがります。大体が修正されてサイトにin(笑
そんなところです。

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