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まるで地獄のようだと思った。
何をしても幾ら斬っても終わりの見えない煉獄の、その中で微かに声を聞いた気がして女は笑った。
初めて、始めて、人として接してくれた不器用なその言葉は嫌いではなかった。
寧ろ一筋、人として縋れる物のように感じられて、女はただその為にありたいと思った。
そんな風に思うのさえ、初めてであったのだ。
いつまでも続く訳のない幸福と呼べるのか分からない、短い、短すぎる日々は、矢張り生まれてこの方ずっと縛られ続けた強大な者によって呆気なく奪われ壊されてしまった。
恨むことなど出来ようもない。
兄と呼ぶべき存在はそれら全てを女の業、と。罪、と言い放つ。
女はそれに反論するべきであったが、幼い頃から罪悪感と抑え続けてきた黒き衝動の狭間で、結局は兄の言葉に従うしかなかった。
一番の不幸は其処にあるとに気付く機会も与えられず、女はただ兄の言うままに動くしか無く、望みも無く、生きながら既に死んでいると同じ。
望むことはなく、望むことも許されぬ、と何処かで諦めていた女に「ちゃんと前を向け」と人らしい…厳しいが何処か優しさを含んだ言葉を掛けたのは、兄の天下の為、血肉の礎と知らずなるべきであった虚偽の婚姻にて夫となった男だった。
初めて。
そう、初めて花を贈られた。
白い可憐な、その花を女は震える手で受け取った。一輪の儚く散るであろう花。
けれど、それこそが女の全てに成った。
「…長政、さま」
討たれてしまったその人。
偽りの婚姻であろうとも、女の全てになった男。
女は愛おしむよう、歌うように名を紡ぐ。
乾いた音を立てて爆ぜる火の粉を女は無造作に手で払った。
傍らには血を吸い固まったような鈍い色の布が、否…布を身に付けた人物が横たわっている。
俯せ故に顔は見えず、ただ床に染みた鈍色の赤がもう二度とそれが動くことは無いのを告げていた。
「……どうして、」
何も言ってはくれないの?
女の唇が紡ぐ言葉は声には為らず、宛てた人物は世にはない。
罪の意識故に壊れそうな精神に語りかけたのは、本当に望んだ男であっただろうか。
黄泉路へと旅立った男が女の罪悪の声に語りかけるには余りにも都合の良すぎた声では無かっただろうか。
兄の言うが儘、刃を振るい数多の命を奪った女が自身の罪に耐えかねず、壊れかけた精神で聞いた声が幻聴でなかったと証明できるものは何一つ無い。
であればこそ今この時、女に返る声は在る筈もない。
「……ふふ…」
気付いたわけでなく、女は笑う。
壊れたのではなく箍が外れたと言うが正しいのかも知れない。
抑え込んできた破壊衝動はもう自制が殆ど効かない。
女の弱く不安定な精神は、完全に崩壊の道を辿り始めている。
だからだろうか。女は自身の頬を伝った涙が何に対してであったのか、もう分からなかった。
上がる火の手は嘗めるように建物を覆い尽くし、既に女の退路もない。
祈るように瞳を閉じた女に、死が安息を与えるか。
もう一度小さく呟かれた名だけが答えを持ち得ていた。
>>英雄外伝お市ストーリーモードクリア記念(?
何て言うか確かにBASARAの世界の中にあっては、お市のストーリーは
鬱に近かったんだろうな。
行き着くところまで行けてないままに、兄まで手を掛けた彼女の
辿り着く場所はどこなのだろうと思ってしまう。
久しぶりに病みがちな文章は楽しい^^^
少しDODに近いものがあるからかもしれないなぁ。
其処にRomanはあるのかしら…?(違
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サイトにあげる文章の草稿や、ただのメモ等もあがります。大体が修正されてサイトにin(笑
そんなところです。
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