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謂わばネタ掃き溜め保管場所
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それはいつの夢だったか。抑も僕は夢なんて見ない、と虚ろに眠気だけを誘う沈黙の中でフレンは首を僅かに傾げた。
静かすぎる空間は居心地が良いのに、とても退屈だ。
いや抑もそれに対して退屈で飽くという感覚を抱くのは自分ではない。
現に届いていた手紙を机に座り読んでいるフレンの部屋で、備え付けのソファに座りこっくりこっくりと首を振り眠りについている存在がある。
手入れが何もされていない癖に艶やかな背中まで伸ばされた髪がさらさらと揺れ、大きく首が揺れた瞬間軌跡を描いて方に落ちる。
体勢が崩れソファに半分寝そべった様子にフレンは小さく笑みを履いた。
今は隠れて見えない気の強そうな、しっかり前を見据える自分とは違った印象を触れ合う人々に与える瞳がフレンは好きだ。
詰まらない報告に目を通すのも疲れ、なるべく音を立てないように手紙を置くと椅子を引く。
そっとソファに回り込み惰眠を貪る自身の半身とも呼べる存在に手を伸ばした。
指先が頬に触れ、暖かさを伝えると同時に身動いだユーリがゆっくりと目を開け、そしてぼんやりと焦点を結ばない視点でフレンを見上げる。
「……ん?」
ごめんと象りそうになる唇を、指先で遮ってフレンは笑ったままユーリの髪を梳いた。
さらりと掌と指先を通っていく心地良い触りにもう一度髪に手を差し入れる。くすぐったいのか首を小さく振ってユーリがゆるゆるとまた瞳を閉じる。
瞬きを繰り返す合間に、少しだけ落とされた声は本当に心地良い。
「夢、――夢を見たよ」
「ユーリが?」
「おかしいよな。オレたちは夢なんか見ない。そう作られてないから」
「……うん」
瞬きの間隔が長くなっていく。また眠りに落ちかけるユーリが覗き込むフレンに手を伸ばした。
中空で足りずそのままの手を取ってフレンが握るとユーリが微笑む。
「どんな夢だった?」
「……うん、馬鹿みたいな夢」
フレンの問いにユーリは小さく自嘲した。
フレンもユーリも本来は夢を見ない。見ることが出来ない。そのようには作られてはいないから。
「馬鹿みたい?」
だから誤認識だとしてもユーリが夢を見たというのはとても過ぎたことのような気がした。
だってそんな贅沢が許される身ではない。
「オレもフレンも、普通の人間みたいだったよ」
「……ユーリ」
「ホント、馬鹿みたいな夢」
だからきっと気のせいだと思う。誤認識だ、と付け足すユーリはそれ以上言葉を返さなかった。
規則正しい寝息と握った手の温度にフレンもまた床に腰を下ろし、目を閉じる。ユーリの手を両手で包み込み額に当てて小さく息を吐いた。
もし本当に、ユーリが夢を見ていたのなら。
それが本当に、叶う事があったのなら。

それはなんて、なんて、贅沢で幸せな。

「それでも僕は夢を見ないよ」


>>NieRパロをするなら一番デボポポがおいしいなと思う。
   デボルがユーリ、ポポルがフレン。

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此処は思うがままにつらつらとその時書きたいものを書く掃き溜め。
サイトにあげる文章の草稿や、ただのメモ等もあがります。大体が修正されてサイトにin(笑
そんなところです。

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