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謂わばネタ掃き溜め保管場所
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呆然と、レスターは自分が現在置かれている状況を冷静に捉えようとした。その努力は涙ぐましいが、結局報われることはない。
「……あの、ニア?」
恐る恐る、その白く細い指がネクタイにかけられたところで声をかければ平素同様淡々とした声音が返って来る。
「何でしょう? レスター。私、今忙しいです」
「……いや、忙しいって…。いや、あのニア、とりあえず落ち着いてくれないか」
「私は落ち着いていますよ?」
漸く顔を上げて小首を傾げたニアの容姿は年齢にそぐわぬ幼さで、ただ浮かべた表情だけが歳相応だった。
モニターの明かりだけが犇く部屋の中、何が悲しくて親子程年の離れた相手に押し倒されていなければならないのだろうと、ふとレスターは思う。体格でいえばかなりの差があるが故か、何もなければニアを難なく押しのけられる筈なのに傷がつかないよう丁寧に背中に回されて縛られてしまっている両手は確かめるまでも無く力が入らない。
上手に縛ったものだ。
特殊な訓練を受けているレスターでさえ抜けられぬよう計算されている。
そんなことに使う頭ではないだろうにと目の前のニアを見遣れば、今まで見せた事のない笑みをニアは零した。
「レスターでもそんな顔をするんですね」
「ニア、悪い冗談は…」
いつも玩具を弄る手は迷うことなくネクタイを解きカッターシャツにまで手を伸ばした。
「冗談は好きじゃ有りませんよ、レスター」
「……それでは、これは」
「本気です」
「………、ニア」
ゆっくりとボタンが外されていくのを歯痒い面持ちで見守りながら、最後の望みとばかりにシャツを脱がせにかかっている張本人の名を呼ぶ。ふわりとした癖のある髪を揺らしてニアが再び頭を上げた。
「何です?」
「………止せ」
「何故です?」
折角此処までしたのに。
そうぽつりと呟いたニアは再びボタンを外す手を動かす。
「ニア…!」
遂にズボンのベルトまで手が掛かった所でレスターは声を荒げた。
もう一度顔を上げたニアが少しだけ眉間に皺を寄せた。
「ああ、もう…。五月蝿い、です」
そして小さな身体で伸びるようにして、レスターに口付ける。
腕は自由にならず何とか抵抗の意志を示していた言葉も封じられてしまえばレスターに抵抗の術はない。
「…ん」
「ニア」
「……ねぇ、レスター。そんなに嫌なら何故必死で抵抗しないんです?」
呼吸の限界息継ぎのために少しだけ離れた合間に名を呼べばそう返って来た。
元々体格の差はかなり大きい。レスターが必死で抵抗すれば確かに退けられる可能性は高い。
「……レスター、答えを」
「ニア、私は」
「……それは肯定と取りますよ?」
にこりとニアが笑った。
そして何かを言いかけるレスターの口をまた塞ぐ。
乗り掛かられたニアの体重は軽くレスターにはどうともない重さでは有ったが床と背中の間にある腕が、その負荷に痛みを訴えてくる。
するりとシャツの中に入った白い手は器用に肩からシャツを落とし、レスターはいよいよ観念するしかないと一度唸った。
「ニア」
「…はい?」
「………後で後悔しても知らないぞ」
「しませんよ」
私はしません。
そう鮮やかに告げたニアのもう片方の手がレスターの頤からするりと首筋をなぞる様に落ちた。
「だからレスターも、責任は感じなくて結構です」

 

***

どうしてこうなったんだろうとふと起き掛けの頭でレスターは考える。
隣には健やかな寝息を立てる年下の上司。
どうにも夢としても由々しき事態だが、出来れば夢オチで終わらせたかったのだが一緒のベッド、しかも裸同士で眠っている以上そうはいかないらしい。
「……ああ、やってしまった」
ある意味手段を選ばず煽られたとはいえ、本当に親子ほど年の離れた、しかも立場上は上司と関係を持つなんて。
両手で顔を覆ったレスターが悲観にくれる横で半覚醒した小さな上司はレスターに、平素と同じ声で何事もなかったように「おはようございます、レスター」と挨拶をして寄越した。



>>寧ろ言い訳をするなら、むつきさんがいけない…の一言で事足りると思う。
   というわけでむつきさんへ。

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