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時間を告げる開始音。流れる音に身を委ねた時に何時だって自然と口から突いて出るのは音だった。
此処はどうすれば気持ちが伝わって聞こえるのか、とか。
一気に吹き込むように歌い上げるフレーズ、とか。
全部全部此処に立つまでに幾度も重ねた練習で生まれたもので、此処に立つ時いつも僕自身は音になる感覚を覚える。
自分の音を紡ぐしかないと優しく教えてくれた人の為に、その人が作り上げるものの手助けが出来るならば。
「……カイト兄さんって格好良かったんだ」
と。
ふと悔しそうに呟いたのは一番末の双子の一人。じっと見詰めて来るものだからカイトは流石に居心地が悪くなって首を傾げた。先程開けたばかりのアイスは少しずつ溶け始めている。
「…えぇと?」
「普段はそんなにボケかましてるのに」
それじゃ詐欺だよ、と唇を尖らせて大層不機嫌そうな様子なのだ。
一体何をしでかしてしまったんだろうかと記憶を浚ってみるが、カイトにそのような覚えは全くと言っていいほど無い。いよいよ困ったカイトは苦し紛れにスプーンに掬ったアイスを口に含む。
甘いバニラが口内に広がったが今は余り味わっていられる心地ではなかった。
「…レン?」
それ以上何も言って寄越さない末っ子の名を呼べば、顔を上げた勝ち気な瞳と目が合った。
「いや、忘れて…。今の」
「……え?」
「いつか追い越す」
とんと膝を振り下ろす反動で立ち上がった末っ子が笑った。
曲の開始を告げる独特の電子音。それはスイッチと一緒。
歌うことを第一の存在定義とする彼らにとって、歌う為に向かうステージはいつだって命を懸けていると言っていい。
「………、何?」
元気良く懸けていく末っ子の後ろ姿にカイトは小さく問いを投げた。
結局彼は自分の中で結論を見つけて解決してしまったらしい。呆然とアイスを手に首を傾げるカイトにくすくすと笑いが零される。
「メイコさん?」
「いや…、お年頃よね…と思っただけ」
するりと細くしなやかな女性の腕がカイトの肩に絡む。背後からメイコに寄りかかられた状態で矢張り首を傾げるしかないカイトはもう一口とアイスを掬った。
「……後輩が頑張るんだもの。私達も負けてはいられないわね」
「そうだね、メイコさん」
ステージの上で軽やかで伸びのある声で歌う末っ子の姿を見詰めてカイトが笑った。
自分より先輩であるメイコと後輩として出てきた妹弟たちは、競争手であり、それでいて存在定義を分かつ無類の存在でもある。
一人では不可能な無限に広がる音楽性を、音楽を愛する彼の人は楽しみで愛しいと言った。
そしてカイトはその全てをひっくるめて自身の存在さえも愛しいと知ったのだ。
だからステージに立つ時の、幾重の光源によって影が伸びる世界を何より一つの証明だと知る。
きっと”キョウダイ”達もそうであるように。
>>KAITOお兄さんは天然で可愛い人だけど、ステージ立つと豹変したら良い。
それを下の子たちは悔しいと思いながらも好きだといいな。
MEIKOお姉さんとKAITOお兄さんは兄弟というより親友のように仲が良かったら良いとかおもっています。
ボカロの子達は皆可愛い。
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サイトにあげる文章の草稿や、ただのメモ等もあがります。大体が修正されてサイトにin(笑
そんなところです。
ブログ内文章無断転載禁止ですよー。