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鮮やかな紅が視界で揺れる。
腰まで伸ばした癖のない髪を揺らして歩く少女の首に巻かれたマフラーは淡い色合いで、不思議とそれが深紅を際立たせた。
ほっそりとした足が制服のスカートから伸び、それが膝中で髪に合わせて揺れる。
寒いのは苦手と宣った彼女を三十分、用事があるとはいえ待たせてしまった罪悪感は消えず押し黙ったままの男は数歩前を行く少女を眺めるばかり。
沈黙は耳に痛すぎるほどの静けさではなく町の喧噪に塗り潰された。
沈黙が流れているのは男と少女の間だけなのだ。
「……全く」
呆れた、と溜息混じりに沈黙を破ったのは少女の方だ。
振り返れば長い髪が宙を舞う。金の混じった虹彩を閃かせて瞬く彼女の瞳が男を見据えた。
「本当にお前は馬鹿者だ」
はっきりと告げる声音は少女のもの。
しかし告げられた言葉は年齢よりも重みを帯びた色を含んでいる。
「…別に気にしてなどないと言ったであろう? それを無駄に気にするのは愚か者のすることぞ」
そういって笑った少女に男は言葉を失う。
元々口数の少ない男は何も言い返せない。ただ少女の後に続いた言葉が何よりも愛しいと思った。
嘗て大空を翔ることを許されていた頃、契約と共に失った声の替わりに代弁者ともなった存在は―
今はただ同じ人間として在る。
何よりもそれは奇跡と感謝してもし足りないほどで、全てを憎み血を好んだ自分が救われるなどと男は思いもしなかったけれど。
そっと冷えた少女の手を取って男は握りしめる。
驚き目を丸くした少女が花のように笑ったのはその直後。
「……馬鹿者」
もう一度呟かれた言葉は優しく暖かかった。
>> 一定周期でカイアン飢えが来るんだよな。
大好きなんだぜ。カイアン。
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サイトにあげる文章の草稿や、ただのメモ等もあがります。大体が修正されてサイトにin(笑
そんなところです。
ブログ内文章無断転載禁止ですよー。