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謂わばネタ掃き溜め保管場所
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こつん。窓を突く乾いた音にギルバートは振り返った。読み途中の本に栞を挟み込みすぐに窓を開ける。
僅か空気の震えるような澄んだ鳥の声が一つ。部屋に舞い込んだ緑白に手を差し伸ばせば声が返る。
「やぁ、ギルバート」
それは屈託のない少年の声。【漂う物】として世界を飛び回る存在の、それにしては何とも明るい声だ。
「ごめん。ちょっとだけ休ませて貰えないかな?」
永く錆を喰らい続けることに負担はないようだが、時折疲れを見せるとこうやって羽を休めに来る。
そっと手に舞い降りた鳥に笑いかけて「勿論」とギルバートは答える。
外はこの【漂う物】が苦手とする寒さを纏った冷たい風が吹いていて、タオルケットを一枚引っ掴むと暖炉の前に上手に丸めた。慣れた仕草でタオルケットの上に移動した【漂う物】が小さく鳴く。
「どういたしまして」
それが礼だと読み取って笑えば、器用に丸くなった鳥が僅かに羽を振るわせた。
普段人に触れ合う際には人の姿を極力崩さない彼が、こうやって鳥の姿であるのは限られている。
「そういえばね、ギル」
「うん?」
「ついこの間、花の国に行った時に凄く良いものを見つけたんだよ」
「良いもの?」
「そう。今度ここに来る時に持ってくるね」
「……オズ」
知識の妖精として生まれたギルバートが【漂う物】オズと出会ったのは永く前ではない。
精霊に昇華した今でもそうだが、ギルバートもその妹も妖精としては若い方だった。大空を舞った【漂う物】が大地に降り立つ瞬間、金糸に翡翠の瞳の、柔らかな笑みを湛えた少年に姿を変えたことを今でも良く覚えている。
それが時折羽を休めに来るオズとの出会い。
「……にしても寒いね」
「寒いのが苦手なんだから今時期暖かい国で休めば良いのに」
実際、オズは空を飛び回る時そうやって周回している。しかし言葉に鳥の姿の【漂う物】は首を振った。
「嫌だよ。休む場所には拘りがあるんだ」
微かな声で紡がれた言葉に、目を丸くしたギルバートがまんざらでもないように笑ったのを丸くなり半分眠りに落ち掛けていた【漂う物】は暈ける視界に映していた。


>>もふもふ設定のオズとギル。
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此処は思うがままにつらつらとその時書きたいものを書く掃き溜め。
サイトにあげる文章の草稿や、ただのメモ等もあがります。大体が修正されてサイトにin(笑
そんなところです。

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