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謂わばネタ掃き溜め保管場所
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伸ばされる手がないな、と思う。
呼ばれる声もないとそこで気付いた。ぼんやりと視点が定まらない視界で鐘の音だけが響くので煩いと思ったのに、何も出来ない。冷たい風が攫うのだ。
全て攫っていくのはいつだって当たり前に世界に存在する物。そして攫われていく物も然り。
「……、ああ」
もう言葉は要らないと気付く。
呼ばれることもなければ自ら言葉を紡ぐ必要もない。語りかけてくる相手がいない。語るのを望む相手もいない。
遠く聞こえる鐘の音は弔鐘だ。喪を示す黒が空にはためくから否応なしに気付いてしまう。
小さく水音が流れて捕まりそうになる寸前に宙に逃げた。そこで何かを言いたげな水馬を見る。
「すみません。私は行きます」
ここに居る意味はもう無いので。
居てくれと言った人はもう居ないので。
小さく「そうか」と返った言葉に感謝した。彼はあれでいて良く理解している。自分を閉じこめた檻はたった一人、あの男の手と言葉、その存在でしかない。失えばまた世界を回るだけ。
僅かに手を振る水馬は、本来ならきっと逃がすなと申し遣っていただろう。
見逃したのは存在の定義を知る故に。

特段、何もないのだけど。
あの低い温度の、妙に優しく羽に触れる手が無くなるのが寂しかった。
存在にまた巡り会ったとしてもその手は、


(たった一度きりだから)


>>もふ設定。
   北の大国の暗黒王の死に際するならば。

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此処は思うがままにつらつらとその時書きたいものを書く掃き溜め。
サイトにあげる文章の草稿や、ただのメモ等もあがります。大体が修正されてサイトにin(笑
そんなところです。

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