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謂わばネタ掃き溜め保管場所
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ふわりと髪を揺らす拍子に薄紫の、その上品とさえ言える色の羽がはらと宙を舞う。
首を傾げ、屋外への吹き抜けになっている階段の踊り場の、その水溜まりを覗き込む姿は落ち着いた雰囲気と裏腹に妙に幼かった。
「……あの、」
小さく声が上がる。
水溜まりに向かって話しかける姿は変なことこの上ないが、この際それは除外された。
僅かな自らゆったりと白い影が浮かんでくる。
「何か御用ですか?」
「別に」
ぺたりと絡み付いた髪をそのままに水溜まりから顔を出した水馬は素っ気なくそう答える。
その様子からして何かしらあるとしか思えないのだが、相手は気にはしていないらしい。
視線を合わすように屈み込んで水気を含む真紅の瞳を覗き込む。
「嘘吐きですね。水馬さんは嘘は苦手なはずでしょう?」
「別に特段用事はないから、そう答えたまでだが」
「では用事じゃない御用はなんですか?」
その言葉に水馬は一端音もなく水の中に沈み、首を傾げて答えを待つ相手に突然抱きついた。
水気を存分に含んだままの行動に冷たいとふるふると頭を振れば小さな羽がはらはらと落ち、とんとんと訴えるように背中を叩かれる。
「何を、するんです」
「なんとなく」
ふるりと身体を震わせた女性が小さく「もう」と呟く。
途端姿は消え毛並みの美しい鳥が空を舞った。水馬の伸びてきた手をかい括り上階に降り立つと澄んだ音で鳴く。
彼女然り、大体の【漂う物】は冷たい水を厭う。
水馬にとって澄んだ水であれば温度などは関係ないので自然と身体が冷え切っても当人は気にも留めない。
抱きつけば冷たくて仕方ないのだ。
手すりの上で濡れてしまった身体を何度か震わせた鳥は、それを階下で眺める水馬を一別すると一度弧を描き飛んで奥へと行ってしまった。
それを眺めて水馬は暢気に思う。
そうだ。今度虐められたら抱き込んで水の中にでも飛び込もう。
自分がいれば溺れることもないから構うまい、と。


>>鳥と水馬。
   いつも虐められている仕返し。
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此処は思うがままにつらつらとその時書きたいものを書く掃き溜め。
サイトにあげる文章の草稿や、ただのメモ等もあがります。大体が修正されてサイトにin(笑
そんなところです。

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