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それはきっと子供が構って欲しい時と一緒なんだねぇ、とぼんやり呟かれた言葉に首を傾げたのは兄と弟両方だった。
箒を持ったまま呟かれた言葉は妙に今の空間と馴染んでしまう。
手が足りないと引き受け箒を受け取ったは良いが、あまりにも綿埃が多くていまいち捗らない。
「オズ?」
「何となく思っただけだよ」
絨毯の上の綿埃を上手く集めるコツを何となく覚え始めたオズが笑う。
てきぱきと掃除をこなしていく従者の姿を思い出して、これはこれで大変だと思った。
「それよりもギル、手が止まってるけど?」
「……え? あ、ああ」
オズの一言に手を休めていたギルバートが思い出したかのように、床に転がり散らばっているぬいぐるみを拾うのを再開する。
腕に抱えた箱にぬいぐるみを無造作に入れていく様子を横目で見遣って、箒を動かした。
どうにも掃除がされていなかった部屋は扉を開けて換気をしても、なかなか埃っぽさが抜けない。
掃除をする二人とは別に部屋の主であるヴィンセントは、ぬいぐるみを拾い上げる兄につかず離れずくっついて歩く。
「ヴィンス、そこにいられたら邪魔だ」
「嫌だよ。だって捨てる気でしょう?」
それ、と指し示されたのはギルバートが抱えている箱である。
大体ぬいぐるみと呼ぶにしても、残骸と呼ぶに相応しい有様のそれは、
「あのなぁ。……だったらどうするんだ、これ」
「直してよ」
「どうせ、お前は直した傍から駄目にしていくだろ」
それに幾ら綺麗に繕うにしても、物理的に無理なぬいぐるみも箱の中には存在している。
捨てるというのは当然の判断だった。
「酷いよ、兄さん」
「ヴィンセント、お前なぁ…」
心底傷ついた風に言葉を重ねる弟に、呆れた兄の声が返る。
これはこれでギルバートの負けだろう。なんだかんだと結局面倒を見ることになるのは決まり切ったことだ。
「………分かった。直してやるから。今回限りだぞ」
「本当?! ありがとう、ギル」
眉間に皺を寄せて、結局根負けをした兄に満面の笑みを浮かべる弟。
一連の遣り取りを見守ってオズは小さく笑みを零した。
全く本当に。
一通り散乱していたぬいぐるみを拾い終えたギルバートが、「直せるのだけだぞ」と念を押して部屋を出て行く。
少しだけ急いた足音が遠のいた。
部屋に残ったのは、オズとヴィンセント。
「ねぇ、ヴィンセント」
「何?」
「こんなことしなくたって良いと思うよ」
「何のこと?」
床を掃いていた箒の端が何かに当たる。ギルバートの拾い忘れたぬいぐるみの一つが箒の邪魔をした。
それを拾い上げる。
「ギルはさ、こんなことしなくたって見捨てるなんてしないだろうから」
それはそれで問題がないわけでもないのだけど。
一種、愛情が貰えないと本能的に悟る子供の信号に似た行動を言い当てたオズに、ヴィンセントが首を傾げた。
「何を言い出すのかと思ったら」
さっきのもそれなの、と付け加えたヴィンセントにオズは笑う。
全く本当に、兄も弟も。
「大丈夫だよ、二人は」
少なくとも互いが互いを疎みながら捨てられなくて、それを抱えて愛情を欲して怖れても。
「少なくともオレは好きだしね」
どうにも日溜まりにあるものよりも、それを羨ましがりながら一歩を踏み出せないのが好きみたいだと思って笑えば、一拍遅れて盛大に間の抜けた声が返った。
>>オズはナイトレイさんちの子たちが大好きです^^
(エリオット含む)
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サイトにあげる文章の草稿や、ただのメモ等もあがります。大体が修正されてサイトにin(笑
そんなところです。
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