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謂わばネタ掃き溜め保管場所
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よくもまぁ、飽きぬものだ。
小さく呟かれた言葉に男は反応せずにもくもくと地面を掘り起こす。
不器用なその行動に溜息一つをついて、少女が首の根元でゆるく髪を結んだ。
腰まで届く癖の無い鮮やかな色の髪は微かな風にさえも反応して、さらさらと揺れる。
スコップをざくりと男が不器用に入れたのと同時に少女は、弁を開けて水が溢れ出したホースの口を男と、男がこさえた穴に降りかかるように向けた。

「?!」

咄嗟に反応した男が、からんとスコップを投げ出して一歩下がる。
それでも水の方が早く彼のシャツの半分は濡れてしまった。

「アンヘル」

避難がましく名前を呼ばれる。
ホースの口を上に向けたまま、セーラーの夏服を着た少女は笑った。
青空と、対を成す赤。
余りの眩しさに男が目を細めると少女がスカートのポケットから包みを取り出し、中身を全てぶちまける様に穴の上で振った。
小さな種がぱらりぱらりと、落ちていく。
水分を吸って黒に変色した土の上では種は何処にあるのか良く分からなかった。

「……雑すぎる」
「これ位で丁度良い」

文句を言ったつもりがさらりと言い返されて、男が返答に詰まると少女がまた笑った。


「…にしても、どういう風の吹き回しだ?」
「何?」
「お主が……、植物とはいえ…一から命を育む行為を進んで行うなど」

ああ。
確かに嘗ては奪うことだけに快感を得た記憶がある。
遠い遠い遙か昔に。
温もりも絆も忘れかけてしまいそうになった時に、

”― 馬鹿者”

そう、諭した声があった。
それが何よりもかけがえないと気付いたのはいつだったのかなどもう思い出せない。

「…カイム?」
「ああ。そうだな…。……気まぐれだ」

何の運命の巡り会わせか。
姿は違えど魂の同一、に会えたそれは本当になんて…。
だからこそまた温もりも絆も信じられることが出来るようになったのだ。男の、輪廻の中にあっても深く傷つき癒されることの無かった魂は。


「……気紛れで育てるなど、馬鹿のすることだ。馬鹿者。……最後までちゃんと面倒を見てやらねば」
「ああ」
「…分かってるのか?」
「知ってるさ」

男の長い前髪に隠れてしまった表情を読み取るように、覗き込んできた少女に男が微かに笑う。
一瞬呆気に取られた少女が、矢張り同じように笑った。





>>カテゴリー追加してしまった。
   DODパラレルカイアン。

   本当、アンヘルと元就の口調って似てるよね。
   書いてて殊更に思った。
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嗤う。
歪みを含んだ笑い声が空間を滑り落ちていく。まるで壊れてしまったみたいだと、幼馴染みの変わりようにアスランは唇を噛んだ。
天窓から注がれる陽光が、柔らかな栗色の髪を甘い色に染め上げる。
伏せられた瞳は長い睫に彩られて、けれどその下、侵されることのない至高の色が奇妙に揺れた。
ねぇ、と力ない声で呼びかけられる。
それにアスランは答えられなかった。名前を呼んでやることさえ出来ない。
喉が焼けてしまったように渇いて引き攣った呼吸音だけが漏れる。
右手に持ったままの銃がやけに重く、微かに指先だけが震える。
伏せ目がちだった幼馴染みが静かに顔を上げた。
柔らかに笑みを浮かべた表情に、一瞬の錯覚を覚える。
目の前にいる彼は自分のよく知っている幼馴染みだ、と都合の良いように解釈しようとした寸前で幼馴染みが口を開いた。
はっきりとした口調は奇妙に耳に残っていく。

「ねぇ、アスラン」

呼ばれた名。
聞き慣れた声で、聞き慣れた口調で。
なのに背筋を這い上がった悪寒は払拭されずに、アスランは息を吐くとそれを凝視した。
幼馴染みの、その姿で、全く違うように見えるそれ。

「…………お前は、誰、だ」

だからこそ、問うた。
それに幼馴染みは幼い頃からよく知ってる笑みを浮かべる。


「誰って? ………僕が誰だって関係ないじゃない。アスラン」
「…お前」
「さぁ、僕を殺しに来たんでしょう? 右手に持ってるそれで、ちゃんと僕の此処を撃たないと」

するりと自身の心臓をなぞるように掌を宛てて笑う。
その仕草に嫌悪感を覚えた。目の前が暗くなる。気付けば構えた銃口を相手に突きつけていた。

「外さないでね。君の腕が良いのは知ってるけど」

痛いのは嫌なんだ、とぽつりと呟いて彼が笑う。


「キラ…」
「ねぇ、アスラン知ってた? 僕はね、君のことが大嫌いだったんだよ」

残酷に告げられた言葉に思考は全ての罪悪感を停止させた。
指をかけた引き金を引くのに、対して時間は掛からない。
耳を裂くような銃声の後、ゆっくりと微笑みながら傾いだ身体を呆然と眺める以外にアスランに出来ることはない。
ただ少しだけ優しく「それでいいんだ」と言葉がかけられたような気がして、倒れ込んだ幼馴染みの姿を凝視する。
笑うことも泣くことも、叫ぶこともしなかった。

 

分かってしまった。
後で、一人になって、最後の言葉の意味を、推し量れば。
嘘の下手な幼馴染みが吐いた最期の嘘は、アスランを騙せるくらいには上手だった。





>>アスランについた最後の嘘。
   後に気付いたキラの嘘。

   ……此処に種の話を書く時は大体、死にネタだ。なぜ…^q^

かちんかちんかちんかちん。
金属の擦れる硬質な音を聞きながらうたた寝をしていれば影が落ちる。
ふと顔を上げれば不機嫌そうに見下ろしてくる青い瞳とぶつかった。

「無用心すぎる」
「…あら、ボコ」
「ボコ、じゃない! お前、こんなところでなんで昼寝なんて」
「………夜勤明けなの。疲れてるのよ」

癖の無い銀色の髪が視界で揺れる。
近づいたと思ったのは錯覚ではなくて、向かいの椅子に尊大に座った彼がとんとんとテーブルを指で叩く。
そんなことをされたら眠れたものではないな、とカチアナは一つ溜息をついた。

「あのね」
「夜勤明けということは一応上がりなんだろう?」
「……何時呼ばれるか分からない。それが医者ってもんよ?」
「寝て来い」

臨時で乗り込んだ艦で宛がわれた部屋は医療室から遠い。
何かあってコールを受けた場合移動が面倒臭かった。
だからこそ休憩室で少しでも仮眠をと思ったのに目の前の彼は不服らしい。

「遠いの」
「…それじゃ此処を使え」

短く答えたカチアナの言葉の意味を正確に捉えたらしい。
音も無くテーブルの上を一枚のカードキーが滑って、カチアナの腕に当たった。

「………?」
「その部屋なら遠くないだろう」
「………このキー。あんたのじゃない」
「使ってないベッドが一つある。俺はこれからブリッジに行くからな。暫くは俺も使わない」
「……ふぅん」

キーを摘み上げてまじまじと見たカチアナが上体を起こした。

「とりあえず此処で寝るな。寝て来い」
「…なぁに? それは隊長命令?」

くすりと笑ったカチアナにイザークが眉を顰める。
彼は確かにこの艦を中心とした一個隊の隊長であり司令官だが、カチアナはノルン出身の軍医だ。
普通の軍の命令系統には入らず、独特の命令系統で動く。
ノルンが解散された今でもそれは健在、―いや尚更、その権限は暗黙で強くなっている。
軍服を羽織ってはいるが、正確に彼女は今軍籍には入ってはいない。
だというのに、カチアナが敢えてイザークに”命令”といったのは。


「…ああ、命令だ。クルニコワ軍医。……寝て来い」

少しだけ柔らかさを含ませてそう言ったイザークにカチアナが笑う。

「了解しました。ジュール隊長」

今まで呼んだことのない呼び方で。
軽く敬礼をとって立ち上がったカチアナが一度振り向く。

「ありがとう。イザーク」
「いいから早く寝て来い」

ひらひらと手を振ってカチアナを追いやる仕種をすると、素直にカチアナが休憩室を後にしていく。
その背中を見送ってからイザークは溜息一つだけを残して、自分も休憩室を去った。




>>久しぶりのエイル殿。
   捏造も甚だしいけど、本当にカチアナというキャラは良くできた捏造キャラだと思ってます。
   (自画自賛か馬鹿やろう)
   捏造が酷く趣味です(笑
空が哭く。そうだと知れて、……目を瞑る。
全てを享受するため。自分を取り巻く全てを否定するため。

「……なんて馬鹿なことを」
「君に何が分かるっていうの?」
「分からない。分かりたくはない」
「なら、黙っているんだね」

嘗ての幼馴染に冷たく言い放って、至高の色を宿した瞳をキラは細めた。
目の前に広がるのは戦場の跡。
誰もこの自由の翼を持つ男には敵わない、と唯一敵うかもしれないアスランは唇を噛み締める。
いつから狂ってしまったのか。
精神的に追い詰められたのは、自分であったのか目の前の彼だったのか、もう分からない。
ただ…。
平和のため、その為に…と惜しげもなく行使される自由の翼の脅威に苦い思いを抱くしかない。

「キラ」
「…なに?」
「きっと、……お前、後悔する。することになる」

一つ一つ言い聞かせるように言ったアスランに、不意に厳しげだった表情を歪めてキラが呟いた。
小さすぎて風に攫われてしまえば聞こえない。
その音を注意深く拾う。

「…そんなこと、今更だよ」

その声は、撃ちたくないと言った過去と被る。
長い前髪に遮られていまいち表情が良く見えないアスランが手を伸ばそうとした。
寸前で払われた手に呆然とすると、先程までの表情など微塵も見せず作り物かとも思える笑顔でキラが笑う。


「ねぇ、アスラン?」
「…キラ」
「教えてよ。…なら、どうやって平和は出来るっていうの?」

瞬間。
この純粋な魂は、故にどこか軋みを立てて、中から少しずつ壊れてしまったのだと、アスランは痛感した。
そして救いは何処にあるんだろう、と困ったことを考え始める。

きっと答えは、枠の外にあるのだろう。




>>どちらかといえば、一方的にキラが壊れたのではなく。
   アスランもキラも、少しずつ緩やかに壊れた感じで(?)
滑り落ちているのは、水の音。
後は時の音。
悲しみも何もかも落ちて流れていくのは、幸いなことか不幸なことか。

「…………何かを守るためには何かを切り捨てなければならない、か」

それは大局的に見れば。
国を背負うのであれば、必ず守るために何かを捨てなければならないのだ。
覚悟はあった。分かっていたはずだった。
なのにいざとなったらこんなにも自分には覚悟がなく、こんなにも臆病だった。
ぐしゃりと肩まで伸ばした髪を掴む。
視界の端の髪は薄い金色。誰かが日溜りの色だといった。
けれど、血に良く染まる色だな、と自嘲気味に今は思う。
この手は見えなくとも血に汚れて、この身は流される血の犠牲によって生きながらえているに等しかった。
分かっていたはずだった。
理解しているはずだった。
皇帝という地位が如何に血によって、犠牲によって、築き上げられているのかを。
けれど実際は分かってはいなかったのだ。

「………陛下」

篭ったはずの部屋に、声が落ちた。
静かに柔らかくそれを呼ばれてのろのろと顔を上げる。
自分とは対照的な冴えた銀色の髪がふわりと揺れて、淀みない足音が自分の目の前で止まった。
空の色というよりは雪国の海の色に似ている瞳が覗く。

「アスラン、か」
「……会議の時間でしょう?」
「……出たくない」
「陛下」
「…おれ、は…もう」
「…ピオニー」

嗜めるように名を呼ばれる。
目の前にある雪国の海を模したような瞳が静かに瞬いた。

「…貴方は、大切なことを忘れてませんか?」
「何?」
「貴方がいたからこそ救われたものがいるんです。…そうでしょう?」

分からない。
そう呟いた声に、小さく息が零される。
何も分からないと言えば、今度はそっと笑った彼が言い聞かせるように言葉を紡いだ。

「…貴方が最初に此処を臨んだ時の覚悟はそんなことで、折れるようなものでしたか?」

静かに問われて、首を横に振った。
わからないと思ったけれど、それは違うと思ったからだ。

「なら、貴方が今出来ることをやっていただかないと」
「…アスラン?」
「私も困ってしまいます」

そういって彼は驚くほど穏やかに笑った。
良く分からないと結論も、割り切りも出来ないままで、全てを後悔しそうな中で、その表情だけが違うもののように見えて、悲しいことばかりの中に一つだけ違うものが混ざった。
だからこそ、まだ歩いていけるのかもしれないとぼんやりと思えたことは幸運なことだったのだろうか。
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プロフィール
HN:
くまがい
HP:
性別:
女性
自己紹介:
此処は思うがままにつらつらとその時書きたいものを書く掃き溜め。
サイトにあげる文章の草稿や、ただのメモ等もあがります。大体が修正されてサイトにin(笑
そんなところです。

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