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謂わばネタ掃き溜め保管場所
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ネタ切れなんですよ。
良い笑顔で言って寄越した言葉に一瞬何のことだと目を見張ったヴァンが口内で小さく反芻する。

―ネタ切れ?

「………はい。ネタ切れ、です」

丁度ヴァンの向いに姿勢正しく座っていたカンタビレがそれを強調するように頷く。
何が、誰が…と聞くまでもなく。

「そうか。遂に来たか」
「いつかは来る事態です」
「ネタ切れと言うよりはネタに追いつかない筆の速さが問題なのだろう」
「……はい。それはいつもですが」
「で」
「察しが良くて幸いです、ヴァン」
「これはあれではないのか。所謂…」
「はい。所謂あれです」

その場繋ぎの対談形式。
普段ならば有り得ない方法だな、とヴァンは内心独りごちた。

「やりたかったのもあるようです」
「やりたかった?」
「ほら…。此処の人、会話主体の文章を余り書かないので、会話でどれだけやれるか…と」
「甚だ愚問だ」
「あ、珍しい。同感です」

にこりと笑ったカンタビレの笑顔はヴァンに向けられるものとしては珍く清々しい。

「しかしせめてもの意地なんでしょうね。時折入る表現描写」
「意地と言うよりはこれがないとたぶん自分では表現が利かないと思っているのだろう」
「ええ。恐らく」
「……で?」
「ああ、はい。そうでした。あのですね?」
「……ちょ。顔が近い。珍しく近い」
「これで何処まで続けられるか、のテストタイプが私たちです」

身を乗り出して小声で言うのには分かりきった事実。
だからこそヴァンは眉をあからさまに顰めて溜息を盛大に吐いた。

「おや。珍しい」
「……引っ張り出されたと思ったら案の定そんなことか、と思っただけだ」
「まだヴァンは良いですよ。ここに来たの開始5分前じゃないですか。私いつから居ると思うんです?」
「アルトノート…」
「はい」
「そう言えば最近図書室にも居ないと思っていた。彼処が住処のようなのに」
「それは大概失礼な。ちゃんと自室で生活していますよ」
「ではなく」
「はい」
「………一週間ほど姿を見なかったと、私の記憶が正しければ」
「惜しい。正確には5日ほど前から此処にいました」
「何の為に」
「せっせとそれはもうせっせと」
「……?」
「この部屋のセッティングをしてました」
「……人選ミスだ」
「何か?」
「……いや。てっきり、定例会議出席が嫌で逃げ出したのかと」
「其処まで子供ではありません」
「で、アルトノート」
「やっと現実的な問題に気付いてくれました?」
「……ああ」
「そうです」

頷くカンタビレが溜息を一つ。

「私たちは今、何だかとんでもない問題にぶつかっています」
「ああ」
「…どうしましょう?」
「とは」
「随分と投げやりじゃないですか」
「そんなことはない」
「……態度に出てますけど」
「ではアルトノート、言わせてくれ」
「はい、どうぞ」
「その問題は私たちのせいじゃない」
「正論です」
「なら、私たちがそれを気にする必要はないのでは?」
「でも此処にいますから」
「偶々だ」
「いいえ。私が貴方を呼びました。私は此処の人に呼ばれました。……偶々じゃないんです」
「……偶々、だ。アルトノート」

大体、と言葉を切ったヴァンがじっと見詰めてくる視線を正面から受ける。

「…何故、私だった? 貴方の副官でも良いじゃないか」
「そうしたら私の日常になってしまいます」
「いいじゃないかそれで」
「それはそれで、私だけ損をするので」
「そう言うキャラだったか?」
「道連れにさせて…いや、どうせなら日頃の鬱憤でも晴らさせて貰おうか、と」
「ああ…実に良い笑顔だ」
「光栄です」
「で」
「今日、ヴァンの発言それ多いですね」
「それ以外に言うことがない」
「……まぁ、いいでしょう」
「目下突きつけられた問題打破だが」
「無理」
「………即答か」
「はい。無理です。まずもうこれ自体本当に間が抜けてます。向いてませんから」
「…誰が」
「此処の人」
「あー……、確かに」
「なので、打ち切り。そろそろ打ち切りにしようかな…とお伺いを…」
「どこから出した、その糸電話」

 

……………。

「はい、諦めますって」
「やけにあっさりと」
「割り切りは割と早いと言ってました」
「なら最初からこの方法をとるのが間違っている」
「だから最初に言ったでしょう? ネタ切れです」
「……成る程。たぶんその理由だけでは無さそうだが」
「そうですね。でも気にしなくても良いのでは」
「私たちには関係がないからな」
「はい」


「では」
「帰って良いのか?」
「はい。私も帰ります」
「そうか良かった」

 


つまりは。
何処で終わらせたらいいのか、ということ。
会話だけだと間延びどころではないということ。

結論から言うと向いてない。




>>本当がっかりするほど向いてなかった…(苦笑)
   人選もミスった気がしている。何でか。

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―ああ、ほら。これを見てご覧よ。

と歌を終えて譜面をチェックしていた僕に彼は言う。
穏やかな声に楽しさも含んで、だから顔を上げた僕は視線が合った瞬間に少しだけ首を傾げた。
心底嬉しそうな、何だろう? 凄い暖かな笑み。

「何ですか? マスター」

手招いて画面を示すので覗き込む。
そこには長い南国の海の色に似た髪を二つに結った少女が映り込んでいる。瞼が降りているので少女の瞳の色までは分からないが、左腕にナンバリングだろうか、刻印があった。

「……この子」
「そう。分かるかい? 君の妹と呼べる存在だろうね」

くすくすと笑う声に僕も思わず釣られて笑う。

「嬉しそうですね、マスター」
「うん」

訊けば間もなく答えは返った。

「いつか、この子が世に出てきたら君と一緒に歌うこともあるんだろうね。どんな歌を歌うんだろう。楽しみだね」

屈託無く。
楽しみと言った彼が視線をあげて僕を見る。
ああ、そう。この人は。

「はい。僕も楽しみです、マスター」

心底音楽を、歌を、そして僕らが歌うことを愛し望んでくれるから。
だからこそ一つ一つ彼の手から生まれる音を間違うことなく声に乗せて歌いたいと思うのだ。
大切な気持ちは、全て彼のその姿勢から受け取ったから。
自分も彼も終わりがあって、けれど音は必ず続いていくものだと最初に教えてくれたその日から僕にとって彼の存在は主人である枠を越えた。
純粋に彼の音を表現したいと思った、その気持ちは。


「……君もいつか、そんな思いを感じるだろうか」

そんな人に出会えるだろうか。
君はどんな音を紡ぐのだろうか。
僕は未だ目覚めを待つように眠る少女の映像に語りかけ、ゆっくりとそれを見つめていた彼に視線を移して笑う。
笑い返す彼の瞳は矢張り穏やかで温かかった。




>>まさかのボーカロイド、お兄ちゃんネタ。
   本当なんて言うかお兄ちゃんに弱くないですか自分(苦笑

突然の出来事だった。
段差に掛けた方の足場が崩れ落ちて視線が崩れる。落ちる、と思うのと同時。
一瞬重力から開放された体は急速な落下によってもう一度重力に捕らわれる。
視界がくるりと反転する。驚くよりも先に何もかもが分からなくなりそうな―…。

「……え?」

意識を手放そうとした瞬間。
放り出され不安定に揺れた手を何かが掴んだ。
一際強く衝撃が走り、しかしそれ以上の落下は無い。
支えられた手は軋み鈍痛が走る。
何事が起こったのかと事態を把握する前に、視界に柔らかな青が映った。
空? 否。それはふわりと風に揺れた、

「…大丈夫、かしら?」

優しい女性の声が降る。
見上げた視線が金緑色の瞳と絡んだ。少しだけ苦しそうに寄せられた眉が自分を支えているという事実を言外に物語る。

「あの…っ」

呼びかけるよりも先に女性の手がもう片方添えられる。
ぐっと引き上げられる力はしかし女性の物で大人の男1人を持ち上げるのには些か足りない。
もう一度引き上げようと力を込めた女性に合わせて不安定に揺れていた足を引っかかる足場に掛けて反動を利用して上に飛んだ。

「上出来ね」

小さく女性が歌うように呟いた言葉。
一瞬の浮遊感は音素の介入によるものかと冷静に頭が判断するのと同時に引き上げられた体が足場を得る。

「……無事?」
「あ…、はい。助かりました」

女性の髪は長く伸ばされた柔らかな青。
あの時、視界の端を掠めたのはその色。
金緑を閃かせる瞳がふっと伏せられ彼女が安堵の息を吐いた。

「えぇと…」
「良かったわ」
「ありがとうございます」
「いいえ。どう致しまして。…けど、一人で来るには些か危険な場所ではないかしら。ガルディオス伯爵」

にこり。
穏やかな印象さを残したまま嫣然と微笑んだ女性が名を紡ぐ。

「…貴、女は…」
「私はフィオリトゥーラ。教団の任で此処に調査に来たの」

それ以上の詮索は許さない、と。
笑顔の裏に貼り付けたまま名乗った女性は複製された故郷の地の景色に良く溶け込んでいた。




>> 捏造女性版カンタビレの冒頭部分だったメモ書きを文章に書き起こしてみたもの。
    結局日の目は見れなかったっていう(苦笑

鮮やかな紅が視界で揺れる。
腰まで伸ばした癖のない髪を揺らして歩く少女の首に巻かれたマフラーは淡い色合いで、不思議とそれが深紅を際立たせた。
ほっそりとした足が制服のスカートから伸び、それが膝中で髪に合わせて揺れる。
寒いのは苦手と宣った彼女を三十分、用事があるとはいえ待たせてしまった罪悪感は消えず押し黙ったままの男は数歩前を行く少女を眺めるばかり。
沈黙は耳に痛すぎるほどの静けさではなく町の喧噪に塗り潰された。
沈黙が流れているのは男と少女の間だけなのだ。

「……全く」

呆れた、と溜息混じりに沈黙を破ったのは少女の方だ。
振り返れば長い髪が宙を舞う。金の混じった虹彩を閃かせて瞬く彼女の瞳が男を見据えた。

「本当にお前は馬鹿者だ」

はっきりと告げる声音は少女のもの。
しかし告げられた言葉は年齢よりも重みを帯びた色を含んでいる。

「…別に気にしてなどないと言ったであろう? それを無駄に気にするのは愚か者のすることぞ」


そういって笑った少女に男は言葉を失う。
元々口数の少ない男は何も言い返せない。ただ少女の後に続いた言葉が何よりも愛しいと思った。
嘗て大空を翔ることを許されていた頃、契約と共に失った声の替わりに代弁者ともなった存在は―
今はただ同じ人間として在る。
何よりもそれは奇跡と感謝してもし足りないほどで、全てを憎み血を好んだ自分が救われるなどと男は思いもしなかったけれど。
そっと冷えた少女の手を取って男は握りしめる。
驚き目を丸くした少女が花のように笑ったのはその直後。

「……馬鹿者」


もう一度呟かれた言葉は優しく暖かかった。





>> 一定周期でカイアン飢えが来るんだよな。
    大好きなんだぜ。カイアン。

じとじとと暑い日差しを浴びながら、何を馬鹿なと少女はこめかみを押さえた。
拍子に鮮やかな髪がさらさらと小さな背中に滑り落ちる。
目深に被った帽子は日焼け防止のはずだったが、正直少女はあんまり気にも留めていなかった。
それよりも。
暗い闇の髪を無造作に伸ばしたTシャツにジーパン姿の男が、一心にしていることの方が気になった。
日陰も生まぬ、海岸。
空の青を映す海。
遠くには入道雲。
ある意味絵に描いたような夏の景色。
その中で男は遠浅の海に膝までジーパンが濡れるのも気に留めず入りながら、何かを探しているようだった。
屈んで、悪戯に水面を揺らしてはまた顔を上げる。
暑さで流れる汗をTシャツの袖で拭う。
長すぎる前髪を払えば、夜の海を思わせる色の瞳が覗いた。

「…カイム」

気は乗らないと思いつつも少女は声を掛ける。
じっと窺うように動きを止めた男に、少女が盛大に溜息を吐いてみせた。

「そんなところで何をしておる」
「探し物」
「見れば分かる馬鹿者」
「…お前が言ったんだ」
「あれは、絵空事だ。…真に受けるな」
「あるかもしれないだろう?」
「…あるわけがない」

純粋なわけでもあるまいに、男はそんな風に言う。
日の光を受けて柔らかに、光る虹のような石がこの海岸にあるなど誰が言い始めたのか。
そしてそれを見つけられたら幸せになる、などと。
無いからこそ、見つけたら幸せになれるといわれるのだ。
そういった少女に男は不器用に笑った。
言葉はなく、その直後男は何かを見つけたように身を屈め、手を水面に入れる。
小さな水音。


「前に言ったな。アンヘル」
「……うん?」
「信じなければ、在ると認識しなければ、其れは在っても無いのと同じだと」
「ああ」
「ならば、これも同じだ」

そう言って投げて寄越したものを両手で受け取って少女は息を呑む。
掌で虹色を微かに反射で見せる半透明の石。
太陽光が当たり反射することによってプリズムを作り出す石。


「………我が馬鹿者だったようだな」


掌で石を転がしながら少女が笑った。
釣られて男も笑った。





>>夏っぽいように。現代パラレルカイアン。
   へたれな暗黒王子とツンデレで少女な天使な彼女が好きです。
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プロフィール
HN:
くまがい
HP:
性別:
女性
自己紹介:
此処は思うがままにつらつらとその時書きたいものを書く掃き溜め。
サイトにあげる文章の草稿や、ただのメモ等もあがります。大体が修正されてサイトにin(笑
そんなところです。

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