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謂わばネタ掃き溜め保管場所
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ああ、また客か。
ぼさぼさの頭を面倒臭そうに掻きながら、男が溜息をつく。
拍子に銜えていた煙草を落としそうになった。
慌てて噛み直すがぱらぱらと灰が男のしわしわのズボンの上に振り落ちた。
どうやら焼けて穴が開いたりはしなかったようだ。
良かった。折角の一張羅だ。
男はほっと胸を撫で下ろすと、事務所の入り口付近で躊躇う人の気配に目を向ける。
曇りガラスの向こうの人影の顔は良く見えない。
けれど、背格好からして女性だと知れた。
これで美人ならば面倒な仕事も悪くはない。
いつまでたっても開けられない扉を開けに男は立ち上がる。
ドアノブに触れようとした瞬間、静かにノブは回った。

「…おっと、いらっしゃい」
「あなたが…この事務所の探偵ですか?」

するりと静かな声が耳を打った。
扉を開けた女性が見上げる形で問うたのだ、と男が認識したのは数秒経ってからの事だった。
色白の女性の澄んだ色の瞳が少しだけ細められる。

「ああ。俺が……まぁ、一応探偵だな」

彼女の言葉に答えてなかったと人の良い笑みを浮かべると女性が微笑む。

「それは良かった。…少し、依頼したいことがございます」

静かな声でそう告げた女性のために男は身体を退けた。
大柄な自分が事務所の出入り口を半分塞いだ形だったからだった。
決して広くはない事務所に女性が一歩足を踏み出す。
雑然と書類が積み上げられている机の前に応対用の机とソファがあった。
顎をしゃくって示せば、一つ頷いて女性がソファに向かって歩き出す。
その後姿を見ながら、男は開けた扉を閉めた。

「さ、て。この事務所にいらっしゃったということは、どうやら普通の探偵では手に負えないことがおありのようだ。
悪魔との契約の調査ですか?それとも…」



つらつらと言葉を紡ぎ始めた男が後ろ手で閉めた扉の表には、”吉崎オカルト探偵事務所”と書かれてあった。




title by ロメア ( http://rei.hanagumori.com/ )


>>架空職業タイトルより拝借
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此処は思うがままにつらつらとその時書きたいものを書く掃き溜め。
サイトにあげる文章の草稿や、ただのメモ等もあがります。大体が修正されてサイトにin(笑
そんなところです。

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