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謂わばネタ掃き溜め保管場所
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目覚めは最悪だった。重い頭を無理矢理に起こせば鈍痛を引き起こし、身体の倦怠感はなお一層深くなる。
子供達の登校の元気な声は自分の現状と相まって奇妙に、実に奇妙に精神を追い詰めるのだ。
カーテンを無理矢理に開ければ眩しい陽光が目に刺さるようだった。やめておけば良かったと後悔しても今更遅い。
抑も後悔と言う言葉は先に立たないからこそ”後”なんて文字が入っているのだろう。
全く先人というのは憎たらしいくらいに賢いものだ。
何でも失敗すれば先人の教え云々となってしまうのさえ腹立たしい。
一度低く呻いて寝返りを打った所で、見慣れた自分の部屋に見慣れないものがあって思わず目を疑った。

「………へ?」
「だらしのない男よな。長曾我部」

冷水を頭から被ったかのように、寝ぼけた頭がさっと冷える。
腰に手を当てて切れ長の瞳で呆れたように見下ろしている人物の声は、非常に涼やかだ。

「…………も、毛利?」
「…うん? そなた、まだ寝ぼけておるか?」

訝しげに眉根を寄せた毛利が何を思ったかじっと覗き込んできた。
琥珀色の瞳が間近になる。
近づけば相手の顔立ちが本当に整っているものであると、実感せざるを得なかった。

「何で毛利が此処に…」
「ふん、知れたこと。いつまで経っても起きてこぬ、と心配するので見に来てやっただけだ」
「…………あ」
「納得したか?」

そうだ、と思い当たる。
朝夕賄い付きの自分の住む下宿に、彼が期限付きで入居してきたのである。
確か住んでいるアパートの改修工事で運悪く一週間ほど其処に住めなくなったとか何とか。
その間はホテル暮らしでもしようとしていたらしいが、自分の友人でもあり毛利とも顔見知りである慶次が「だったらうちにその間いたらいいんじゃねぇの?」と言ったのだ。
慶次は友人でありながら、自分が世話になっている下宿の夫婦の甥だ。
人の良い彼らは毛利の事情を知ると一言返事で、毛利が此処に厄介なるのを受け入れた。

「……やべ。今何時?」
「後二分で八時になるな」
「………げ」

さらりと言われた言葉に血の気の引く思いがする。
今日の一限目の講義は必須修得単位であるために落とすわけにはいかない。
先程までの倦怠感など何処へやら。
慌てて起き上がると平然とその場に立っている毛利の横にある箪笥に手を掛けた。

「ちょっとごめんよ…っと」

相手がいいとも悪いとも聞く間もなく引き出しを引く。
そこから適当に服を引っ張り出して着替え始めた自分を毛利は何か納得のいかぬ様子でじっと見詰めてきた。

「何だよ」
「………いや」
「何だよ?」
「なんでもない。起きたのなら大事無いな。……先に下に行く」

くるりと踵を返してとんとんと階段を下りて行ってしまった毛利の後姿を見送る。
何か悪いことしただろうか。



「なんだぁ? 一体」


問いかけても自分では何も分からず、寝癖の酷い髪をガシガシと掻いた。
不機嫌そうな顔で降りていった毛利の態度に納得したのは、その後昼休みにあった慶次の一言。


「……毛利サン、女の子だよ?」
「……マジ?!」

やってしまった。
それだけは間違いが無かった。
中世的な容姿ゆえの最大の誤認だった。






>>現代っぽい感じで。まぁ、ありがちの設定。
   元就の名前が出てこないのは、最後のわけのせい。
   しかし終わってると思う、色々自分の頭が(今更)
   文章冒頭がやけに皮肉気味なのは、本当は頭が良くて結構心の奥では皮肉っぽいことも考えてんじゃないの?元親…と思って試験的にやった結果でした。結果は玉砕でした…(苦笑

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そんなところです。

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