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白銀の髪がふわりと舞う。どちらかというと銀より白に近い髪は、風に攫われ、その色白の頬を悪戯に擽っていく。
手袋をはめた細い腕を持ち上げ、彼女はぼんやりと人工海を眺めていた。
天気は晴れ。きらきらと波間に光が反射する、その様を飽きもせずに見ている。
利き手には日傘を持っていたが差すことはせず、色白の彼女とは正反対に濃いめの服装は綺麗なコントラストを作った。
一つの絵画のようだ。
そう思ったのは人工海の浜に臨む道路を歩いてきた男である。稲穂のような少しくすんだ柔らかな色の短く切り揃えられた髪が、彼女の白銀の髪を揺らす風に同じように擽られる。
ぼんやりと彼女が佇む姿は白昼夢のようだ。タイトなラインのパンツに、少しだけ身体のラインを隠すようにボリュームのある変わった形のジャケットを羽織る彼女は、頬に掛かる髪を遠慮なく払うと、ことりと首を傾げた。
「レイムさん? そんなとこで何してるんです?」
男に掛けられる声ははっきりとしている。背中を向けたままの彼女が、何故男に気付いたのか。
そんなことは言うまでもないのだろう。いつも気配に敏感な彼女は男が本気で見つからないように息を潜めない限りは、男の存在を取り零したりはしない。
「エノアこそ、そんなところで何をしてるんだ?」
小さく息を吐き出して問い返すと、肩越しに振り返った彼女はにこりと笑った。
「海を見てました」
ストレートな答えだ。確かに海を眺めていたのだからそうには違いない。けれど日光を直接浴びることさえ若干身体に障る、彼女が日傘も差さずに海を眺めているのは少しおかしい。
「どこの?」
だから疑問の侭に問いかける。
男の言葉に彼女は、綺麗な深紅の瞳を数度瞬かせると、軽い足取りで踵を返した。
ふわりと裾が風を孕み、しかし元に落ち着く。その数秒の間に彼女は儚い笑みを浮かべる。
「あなたの国の」
何故、と疑問は浮かばない。
一つ素直に返された言葉を許すように足早に距離を詰め、佇むその細い身体に腕を回す。
「レイム?」
抱き竦められて不思議そうに名を呼ぶ声に、薄い肩に額を押しつけた。
彼女は命の重さを知っているからこそ、自分が嘗て奪った命の重さを真摯に背負い続けている。その罪の重さを。
低い体温の、その細い指が恐る恐る男の肩に触れた。
「レイム、大丈夫だ」
ゆるりと視線を向ければ、僅かに細められた真紅の瞳が真っ直ぐに男を見据える。
抱き締めた身体の相変わらず低い温度にも胸を痛め、なかなか抱き締める腕の力を緩めない様子に彼女は困ったように、嬉しそうに笑った。
「レイムさん、甘やかすから」
綺麗な声が、そうやって小さく痛みを訴える。
「私、何だか許された気がして、困っちゃいます」
――ああ、なんて不器用で、なんて凜とした、
「エノアを許すなんて烏滸がましいことしないよ」
「はい」
「俺はただエノアと一緒にいたいだけだから」
>>久しぶりに頼まれたから書いてみる二人はなんてラブなのだろうと、小一時間(笑)
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サイトにあげる文章の草稿や、ただのメモ等もあがります。大体が修正されてサイトにin(笑
そんなところです。
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