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謂わばネタ掃き溜め保管場所
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午後の陽気が満ちるオフィス内は沈黙で満ちている。
長閑な空気がぼんやりと思考を暈かす誘惑の中、じっと手元に視線を落とすフレンが何度目かの唸りをあげたのに、堪え切れなくなったのか窓際のデスクのクロームが顔を上げた。
眼鏡をゆっくりと押し上げ、首を傾げる。
「シーフォ、具合でも悪いか?」
淡々とした物言いの中に気遣いを含ませる上司の声にフレンもはっと顔を上げた。開いたままのモニタに映し出されたデータは先程から思うように進んでいない。
すみませんと小さく謝り改めて仕事に向き合うが、全く頭に入ってこない状況に頭を振る。
気合いを入れ直そうと試みるのだが、すぐに思考が違うところに飛んでいってしまう。
原因は分かっている。いやその原因が自分にとっては一番の問題でフレンはもう一度小さく唸ると今度は席を立った。
「ちょっと休憩行ってきます」
勤務態度が常に真面目だと評価されるフレンが、折り目正しく断って席を離れるのを誰も咎めなかった。

社内自販機の一番左上のボタンを押し、落ちてきた缶を手に取る。
ひんやりと冷たすぎる感覚は覚束ない思考を急に覚まさせてくれたようだ。
プルトップに指をかけ一気に中身を半分飲み干せば、喉を通る冷たい感覚に心地良さを感じて一息吐き、こつんと通路の偏光ガラスに頭を押しつけ身を預けた。
上司が咎めるのも無理はない、と今日の自分にくすりと苦笑を零す。
仕事とは関係のないことが気がかりで全く集中出来てない。いつもならこの時間には終わってる仕事もまだ残っている。散々な有様だ。
原因は考えるまでもなく分かっているのだが、それがどうにも情けなくて肩を落とす。
少し軽くなった缶を振ってフレンは細く息を吐き出した。
スーツのポケットに手を突っ込むと、指先にかさりと厚めの紙が当たる。
折れないよう気をつけて取り出し視線を落とした。郊外にある遊園地のチケット。昨日、手渡されたものだ。
(……分かってるのかな)
ぼんやり手渡してきた相手の様子を思い直して、フレンは分からないわけがないだろうと首を振る。
彼女が自分に対して恋愛感情を抱いてるのだと気付いたのは、そんなに前のことではない。
それに気付いた日以来全く素振りを見せないが、チケットを渡してきた際、自分の出方を僅かに窺っていた。期待を持たせる気も無いなら受け取らない方が良かったと分かっていたのに。
(分かってないのは僕の方か)
隣人の少女とは、歳が離れている。
幼い頃から血は繋がってないが妹のようだと思っていた。妹のように可愛がってきた……はずだった。
差し出されたチケットを見下ろし、自分が受け取らないチケットはどこに行くのだろう。余り話したことはないが学校の男友達でも誘うのだろうか。
そう思った瞬間フレンは迷わずチケットに手を伸ばしていたのだ。
それが所謂、妹馬鹿と呼ばれる感情に因る衝動だったら問題はない。
可愛い妹を知らない男に渡したくないと思うのは、多少は行きすぎていても健全な考えな気がする。
けれど、久しく触れてなかった少女に触れた時、子供の頃の幼さではなく、発展途上ではあるが確かに女性へと変わり始めた柔らかさに勝手に戸惑った。
いつも屈託無く名前を呼ぶ彼女はいつの間にあんなに大きくなってしまっていたのか。
よく後ろを付いて回っていた幼い足取りをはっきりと思い出せるのに情けない話だ。
自分の方こそ彼女をどのように見ていたのだろう。その答えが自分で出せていないのではないか。
妹みたいなもの、と決めつけているのではないかと考え込んでは思考の迷路に迷い込む。
じっと見詰めていたチケットをスーツの上着にしまい込み一つ息を吐くと、フレンは軽く首を振り今はもう考えないことにした。



***

本当にごめん。
そう土下座する勢いで謝られ、ユーリは電話口でありながらもどうしたらいいかと思案し何とか出てきた言葉が、「まぁいいよ」という何ともし難いものだった。
ぶっきらぼうに言ったつもりはないが、元々女性でありながら粗雑な印象を与えやすい口調だったし、多少なり落胆したのは間違いなかったので、電話越しの相手がどのようにとっても仕方なかった。そうは思う。
だから咄嗟に次に相手に言われた言葉が理解出来なかった。
自分がどう反応したのかも分からないまま通話は終了し、重心を傾けベッドの上に仰向けになり腕を投げ出してユーリは天井を見上げる。
そのまま体重を移動させ、近くの椅子に掛かっていた制服の上着に手を伸ばし、けれど上着に辿り着く前に指先を下ろす。
まだ手にしたままの携帯電話のメールボタンを押す。
そして何文字か打ち込んで送信した後、椅子に背を向けるように寝返りを打った。
「……ばか」


>>フレにょユリ年の差の続きになるはずが全然、先が思い浮かばなくて^q^
   ボツというか書きかけ途中。暫く封印。

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此処は思うがままにつらつらとその時書きたいものを書く掃き溜め。
サイトにあげる文章の草稿や、ただのメモ等もあがります。大体が修正されてサイトにin(笑
そんなところです。

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