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謂わばネタ掃き溜め保管場所
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「は、ろ……うぃ、ん…」

聞き慣れない単語を何とか口に出して、渡された見たこともないお菓子に目を落とす。
「悪戯とお菓子どっちが良い? 景ちゃん」と聞いてきた彼に素直に「お菓子」と答えたのだ。
くるくると巻かれた何の味だか分からない二色の飴。
美味しそうかと言われると正直首を傾げる代物の其れを見詰めながら、隆景はもう一度うーんと首を傾げた。
南瓜味と言って渡された飴だがしかしそれが本当にその味をしているのか疑わしかった。

「それ、駄目そう?」

いつまで経っても飴に口をつけない隆景の姿に、お菓子をあげた張本人がおそるおそると尋ねた。
じっと飴を見詰めたまま固まっていた隆景がその声に反応して視線を上げる。
ふるりと一回首を振って隆景は曖昧に答えた。

「いや、珍しいお菓子だなぁって」
「飴だよ。それ」
「それはさっきも聞いたけど…。僕、こんなもの見たこと無いもの」

飴を示してそう言った隆景はもう一度視線を落とす。
そしてそのまま一向に食べようともしない姿に、彼は悪戯気に笑った。

「こんなことなら」
「…冬さん?」
「選ばせずに悪戯をしてしまえば良かったかな」
「………………?」

それはそれはある意味不穏な響きを持った言葉に、隆景は意図を掴めず首を傾げるしかない。
彼は「冗談だよ」と笑って飴を持ったままの手を引いて引き寄せる。
小柄な隆景はすぐに腕の中に収まってしまって、弱くない力で抱き締められて意味が分からず大人しくしている。

「まぁ、いいか」
「…何が…?」
「こっちの話」

ぽつんと呟かれた声に疑問を返しても、結局は答えは返ってこず。


「ねぇ、景ちゃん?」
「なに?」
「僕にも頂戴?」
「……………ああ、うん」

一瞬、躊躇した隆景が心得たというように彼の肩に手を置いた。
悪戯かお菓子か。
それは、二人だけの秘密。




>> 景ちゃんと冬さんのハロウィン。
    なんだか良くわかんない景ちゃんと、反応を楽しむ冬さん。

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気付けば春は遠い。
秋の様相は薄れ冬の気配は色濃くなる。全ての生命が眠りにつく季節。
寒さは否応なしに自身が生きていることを自覚させてくれたし、凛と張り詰めた空気は嫌いではなかった。
けれど、こればかりはどうしようもないと元就は独りごちる。
する、と襖が音もなく開くので元就は気配の主を悟って、彼にしては穏やかな声音で名を呼んだ。

「隆元か」
「はい。父上」
「…して」
「隆景からの書状によりますれば、どうやらご無事のようです」
「ふん、しぶといものだな」
「ご安心なさったのでは?」
「……いや。ではまだ四国は切り取れぬ、と思うたまでのこと」
「ええ。長曾我部殿がご存命とあれば、同盟を破棄するのは先送りにした方が宜しいかと」
「分かっておる」
「はい」

父親によく似た顔立ちの隆元が苦笑を零す。
少しだけ眉を顰めて抗議の様相を示したが、結局元就は何も言わず差し出された書状を受け取った。
丁寧に書かれた書状には、先日行われた四国での戦について書かれてある。無言で一通り目を通すと視線を上げた元就はじっと父の様子を覗う隆元の視線とかち合う。
容姿をとれば瓜二つと言えるだろう二人の、しかし纏う雰囲気は異なっていた。
元就に言わせれば、容姿は自分のものであったとしても嫡男の性格や内面性は妻のそれによく似ている。
穏やかでありながら芯は強く、肝心なところで折れぬ頑固さも持ち合わせているあたりなどそうだ。

「何だ?」
「いえ。宜しかったですね」
「隆元、別に我は…」

にこりと笑んだ息子が言葉を続けようとする元就を制す。
そしてもう一つ、傍らに置いていた書状を手渡すともう一度笑んだ。

「別に宜しいのではないのかと思います」
「隆元?」
「あの方とおられる父上は、…楽しそうですから」
「何を…」
「父上の中にあった冷たいものを、溶かせるのはあの方以外にはないのでしょう」
「隆元」
「……お喋りが過ぎました。失礼致します」

するりと父の言及が掛かる前に隆元は部屋から音も無く辞する。とんと軽い音で閉まってしまった襖を見詰め、短く息を吐き出してから元就は今程渡された書状に目を落とした。
表書きは自らの三男の字に間違いは無い。
乾いた音を立てて開けば、はらりともう一枚の書が現れる。
それは元就のどの息子の字でも家臣のものでもなかった。
見かけと海賊のような部下に慕われているには存外繊細そうな字が並んでいる。
少しだけ震えているように見える筆跡に、そっと冷たい指先を這わせた。

「…、無事で良かった」


誰にとも無く、呟けば。


「そうでしょうとも」

と若干幼さを残す声が襖から帰って、元就は自分でも馬鹿と思えるくらいにびくりと体を震わせた。
襖向こうの相手は気配を読んだか小さく苦笑する。

「……無礼ぞ」
「申し訳ありませぬ。けれど、無理を聞いて届けた書状で父上に安心して頂けたのならば、多少の無茶も報われます」

淡々と答える言葉に淀みは無く、幽かに乾いた音を立て開いた襖には元就の三男。
未だ四国の動向を探るために動いていたはずだったが…、どうやら戻ってきたらしい。

「戻ってきていたのなら、隆元と一緒に来れば良かろうに」
「……早馬で戻って参りました故、今少し間に合いませんでした」
「帰ってきたばかりか」
「はい」
「何か変わったことが」
「お会いしたいと申しておりました。余りにもしつこいので」
「…………待て」

にこりと笑った隆景の言葉に制止をかけるも、気に留めた風も無く息子は告げる。

「直にお着きになります。それを伝えに参りました」
「…小早川の当主とあろう者が、伝達兵と同じ役割をするとは…」
「私の馬が一番早うございました。…だからのこと」

動じることなく告げた隆景が、矢張り先程長兄が言ってのけたように父に言うのだ。
「宜しかったですね」と。
意味が分からぬと不平を漏らせば苦笑が返り、少し悔しいですが喜ばしいことだと言う。
元就は用件だけを告げ下がった息子の姿を見送ってから、そっと立ち上がり溜息を吐いた。
本当は意味など理屈ではなく知っているのだ。
そんな父親の性質全てを見越して、息子達は笑って寄越した。
父親の頑な過ぎる冷たさに暖かさを取り戻させた、その存在に対しての気持ちを読んだ上で。

 

「…………分からぬ、な」

暫くすれば訪れるだろう騒がしい男を思い浮かべて、元就は眉間に皺を寄せる。
けれどそれは不快からではなかった。





>> 思えば、息子は元就よりも精神的に出来ているような気がするなの話(え
    なんかよく伝え辛い感じの話です。あいた …!

腕を引っ張られるがままにして路地を暫く歩いていた光秀は、不意に立ち止まった。
かくんと抵抗を受けたからか少し重心をずらし前を行く信幸が訝しげに振り向く。
肩を揺らすように少し笑いながら、視線を合わせてきた光秀の瞳には非道く不可解な暗い光りが宿る。

「……光秀?」
「今更、どうしてですか?」

ぽつりと呟かれた声はしかし鮮明すぎる。歩みを止めて向き直った信幸が困ったように首を傾げるのを黙って見守った光秀は、更に言葉を重ねようと口を開いた。
一見、酔っているとは見えない男は、けれども平素の彼を知っている人間から見れば相当酔いが回っていると知れる。一瞬ふらりと不安定に揺れた足下に気を取られた信幸の手を、腕を掴まれていた手を逆に捕まえて、光秀はきつく握った。
強さに思わず眉を寄せた信幸に光秀は笑う。
暗い印象の笑みは、人によっては恐怖感さえ抱かせるに値するものだ。

「貴方は私とはもう会わないといったはずだ」
「会えないと言ったまで」
「同じことでしょう」
「…少し意味合いが違うけど…。光秀がそう思うというのならば仕方ない」

淡々と逸らすことなく言葉を言った信幸に光秀が今度は首を傾げる。
もう随分と前。自分も目の前の彼もまだ少年と呼ぶに相応しい様相であり年齢だった頃の、邂逅は一方的な別れで閉じられた。
始めて触れた生の音。生きて返すその音。奇跡を紡ぐ歌声。
歌を紡ぐ奇跡の存在よりもなお希少な光秀の存在は、しかし世界で唯一単身音を紡ぐカナリアたちには疎まれるものでしかない。
知っていても、音を操れる能力故に惹かれるのは自然なこと。
だからこそ偶然であったとしても、その邂逅は光秀にとって特別なものであった。

「………信幸、貴方は」
「あの時のようではないよ。光秀。でなければ、名前だって存在だって忘れているはず。何年前のことだと思っている? 忘れるのは十分すぎる時間は過ぎた」
「私は」
「調律師と関わるのは、特にまだ自らの音を操ることがしっかりと出来ない子供にとっては禁忌とされているのがカナリアの教えでもある。あの時は、自分も…それに含まれていた」
「……」
「だからといって許して欲しいという気はない。けれど、決して嫌だったわけではない」

それだけは、とだけ言って笑う信幸に光秀は捕まえていた腕を放す。
解放された腕をちらりとだけ見遣って信幸は、一歩後ろに下がった。
距離を置いた上でじっと見据えた光秀の瞳には、言いようがない感情があるように思えて信幸はふと笑うしかない。
ただただ生まれながらに孤独なのだ。絶対的に孤高の力を持つ故に。
自らが内包する孤高の力は、決して一人では行使し得ない力であるのさえ孤独に拍車を掛ける。
だからこそ自然ともう一歩と距離を置いた信幸の唇から旋律が滑り落ちた。
低音の、けれど暖かみを帯びた色を含む音。その声。
するりと音が空気に溶ける寸前、残滓を留め置くように光秀の指先が触れる。
途端色を変えた音を信幸は目を細めて見守った。
初めてではないけれど相変わらず不思議な感覚だと思う信幸にとってもまた、調律師である光秀のその力、彼の言葉、彼との邂逅は特別なものであった。
だからこそ申し訳ないと思っていたし、出来るならばもう一度会えないかと聖地の外で暮らすことを選択した。
言葉にすれば全て言い訳に過ぎず、それが出来るほど信幸は強かでもない。
すっと宙の一点で止めるように指を置いた光秀が、「もういいですよ」と柔らかに言う。
漸くと音の止んだ空間で笑ったのはどちらが先かは知れなかったが。


「…此処にいますか?」
「気が変わらぬ限りは」
「また、会いに来ても?」
「……勿論」

言葉よりも雄弁に音は伝えたようだ。
内包したその全てを。




>>情けないことに、途中で何を書きたかったのか見失った感がひしひし。
   光秀と信幸は低温で低糖で仲良しだと良いな。

   という結論です ←頭悪い

寂しかった、とぽつんと呟いた言葉は静寂の中とっぷりと浸かるように沈む。
朝とも夜とも分からぬ空模様は夕焼けにも朝焼けにも見え、何よりも遠くかけ離れた現実味を帯びない不可思議な情景でもあった。
軋みを上げて回るような時間は、なにかしら絡繰り染みた狂気の色を垣間見せたし、其れによって染められたような銀糸の髪は風に攫われてどこか儚げにも見えた。
だから、つ、と手を伸ばそうとした指先を咎めるようにして、彼女は一歩を踏み留まる。
触れれば体温はきっと温かい。
それに安堵してしまうのは簡単だ。
けれど、それではならないのを聡明な彼女は感じ取っていた。

「………冬、さん」

ふわりと振り返って少し微笑み言葉を促す彼に、つきりと痛む胸の内を隠して笑う。
繰り返す始まりと終わり。狂気は人が故。
彼の狂気が逸脱しているのは人としてまだ人ではない故。
其処まで知って尚、傍にいたいと思ったのは身勝手な意志。

「なぁに? 景ちゃん」

呼ばれた名に、終わりを垣間見た気がして泣きそうになったのは何故だろう。



>>可哀想なのは、どちらなのか
   人になりきれない人か
   其れを好きになってしまった人か

   彼は冬さん
   彼女は景ちゃん

うつらうつら、と意識がたゆたう心地良さに重くなる目蓋を咎めるように、そっと指が頤を掬う。
眠いと意思表示をするようにふるりと首を振るったが、関係ないと言いたげに指が唇をなぞった。

「………眠い」

漸く声を上げれば満足そうに男が笑う。
海での生活を主とする割に、この男は日焼けをしない。体質なのだ、と前に話していた気がする。
脱色されたような白に近い銀髪は癖であちらこちらに向き収まり悪く、けれど指先で触れれば柔らかで心地良い。
無造作に伸ばした指先がその髪を掴む。一房とつい、と引けば応えるように男が身を屈めた。

「眠い。寝かせろ」

それだけを告げて眠ってしまおうとする元就を、男は尚も引き止めるように触れてくる。
さらりと真っ直ぐな髪を梳いて首筋にそのまま掌を宛がう。性別にしては細い首は、男の大きな手であれば簡単に絞められるだろう。その危うさであるというのに元就は気にせず寝てしまおうと目蓋を閉じる。

「…おい」

不機嫌そうに元就に声が掛けられる。珍しいくらいに険を含んだ声に薄ら目を開けた元就は、笑って見せた。
眠さで何故笑うなんて行為に出たのかは分からない。
ただそうすればいいという本能にも近い直感で笑った元就を、驚いて目を丸くした男が覗き込んだ。

「おい。…元就」
「…ん」
「てめぇ、それ分かってやってんのか。卑怯だぞ」
「…な、」

問おうとした声は半分以上が、急に口吻けしてきた男の口腔に飲み込まれる。
突然の行為に一瞬抵抗も忘れた元就だったが、執拗に口吻けを求める男の隙を突いて鳩尾に拳をめり込ませた。
声にならない悲鳴を上げて床に沈んだ男を気のない視線で見遣りながら、小さく息を吐く。


「長曾我部、我は眠いと申したのだ」
「……も…っ、何も急所……」
「日輪が登る頃になったら、また話でも聞いてやる故。……今は寝かせろ」

尚も言葉を発する男には一瞥もくれず、元就は瞳を閉じる。
全くもって不本意ながら、五月蝿いと感じるこの男の声は耳に心地良いのだ。
出来るなれば文句ではない言葉であれば良かったのだがな、と少し我が侭なことを思った元就の、その意識が眠りの海に沈むまで時間は掛からなかった。



>>元就はやかましいと思いながら、元親の声が嫌いじゃないと良い。
   その声を聞くと安心してしまうと良い。
   そんな妄想^q^(またか

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プロフィール
HN:
くまがい
HP:
性別:
女性
自己紹介:
此処は思うがままにつらつらとその時書きたいものを書く掃き溜め。
サイトにあげる文章の草稿や、ただのメモ等もあがります。大体が修正されてサイトにin(笑
そんなところです。

ブログ内文章無断転載禁止ですよー。
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