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謂わばネタ掃き溜め保管場所
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作動音。目の前のモニターには星海。何処を見ても孤独を表す闇と、照らす星の瞬き。
沈黙に身を浸らせ意識を委ねる。戦闘は始まらない。

『………、ボコ?』

瞬間。静かすぎたコクピット内に臨戦態勢下に似付かわしくない声が滑り込んだ。
聞き覚えがある、ではなく聞いた声。
しかし通信回線は開いていない。ならば、勝手に入ったことになるが。

「カチアナ、何の用だ」
『ああ、無事ね。その様子じゃ』
「……うん?」

サイドに収納されていたキーボードを取り出し回線が何を経由して行われているのかを探る。
どうやら軍の回線ではなく、医療部独自の専用回線でアクセスを掛けてきたらしい。

『……えっと……、ああ、そこにいるの』
「カチアナ?」
『この星域での戦闘はもう無いと思うわ。直にボコのところにも伝達されると思うけど』
「……カチアナ?」
『あんたの指揮してる隊の2つ程前の隊かしらね…戦闘があって、………衝突した両者は壊滅状態よ』
「…カチアナ」
『もしかしたらあんたもそこに応援に行ってるんじゃないか…って思ったんだけど要らぬ心配だったみた…』
「カチアナ」
『……無事で、良かった』

珍しく早口で言葉を並び立てる通信相手の名を何度も呼んだ後、ぽつりと落ちた声は穏やかだった。
小さく安堵した声音に自然と笑みが浮かぶ。

「俺が落とされるわけがないだろう」
『…どうかな。あんたはなんだかんだで喧嘩っ早いから』
「大丈夫だ」
『うん。そうね』
「……それより、お前の方が大丈夫なのか?」
『……………ああ、うん。………だって私たちの出番は殆ど無かったから』

回線越しの声は少し笑ったように聞こえた。
良くはない。それは自嘲の響きを含んで聞こえた為だ。
出番が無いと言った。それは敵味方の縛りが無く一早く医療機関の中で駆けつけられるノルンが手遅れであったと言うことに他ならない。
他の医療艦より早く動けるエイル。軍上部の決裁を受けず独自の判断で動ける命令系統。
それを持ってしても手遅れであった戦場に駆けつけた医者は―…。

「酷いのか」
『……ええ』
「……そうか」

短い言葉に通信相手の悔しさだけを言外に感じ取る。
職業としては年若い優秀な腕を持つ医者である彼女の心中は量りきれるものではない。

『とりあえず……あんたが無事かどうか…それが心配だったの』
「医者失格じゃないか? 公私混同」
『そうね。……だけど、私はもう…大切な人を失いたくないの』

両親を失い、アカデミーで親しかった友人を二人失い、それ以上に多くの生死を見てきたカチアナの言葉は大きい。
誰も失いたくない。
出来れば、救えるのなら、自らの手で。
彼女の腕は細いけれど、数多の命を救う医者の手であるから。

「そうだな。……カチアナ」
『うん?』
「休憩中か、それか時間を見て抜け出してきたんだろう?」
『うん』
「俺は無事だから戻れ。………お前を待ってる人たちがいるだろう」
『…分かってる』

頷く気配。
そして小さく息を吸う音。

『それじゃ、戻る。無断で回線繋げてごめん。………そしてありがとう、イザーク』

肝心なところで、名を呼ぶ―。
イザークは内心苦笑して通信終了の摘みを上げた。通信を示していた画面が外部カメラから映し出される映像だけを流す。
そして一変して訪れた静寂に瞳を伏せた。
桿を伝いくる振動は鼓動の音に似ている気がして、それが可笑しくて笑う。


「……ふん。それならお互い様だろう」

通信を切った直後に繋がる一人事は、コクピットの中で緩やかに溶け入った。




>>懐かしくてついつい…(苦笑

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ネタ切れなんですよ。
良い笑顔で言って寄越した言葉に一瞬何のことだと目を見張ったヴァンが口内で小さく反芻する。

―ネタ切れ?

「………はい。ネタ切れ、です」

丁度ヴァンの向いに姿勢正しく座っていたカンタビレがそれを強調するように頷く。
何が、誰が…と聞くまでもなく。

「そうか。遂に来たか」
「いつかは来る事態です」
「ネタ切れと言うよりはネタに追いつかない筆の速さが問題なのだろう」
「……はい。それはいつもですが」
「で」
「察しが良くて幸いです、ヴァン」
「これはあれではないのか。所謂…」
「はい。所謂あれです」

その場繋ぎの対談形式。
普段ならば有り得ない方法だな、とヴァンは内心独りごちた。

「やりたかったのもあるようです」
「やりたかった?」
「ほら…。此処の人、会話主体の文章を余り書かないので、会話でどれだけやれるか…と」
「甚だ愚問だ」
「あ、珍しい。同感です」

にこりと笑ったカンタビレの笑顔はヴァンに向けられるものとしては珍く清々しい。

「しかしせめてもの意地なんでしょうね。時折入る表現描写」
「意地と言うよりはこれがないとたぶん自分では表現が利かないと思っているのだろう」
「ええ。恐らく」
「……で?」
「ああ、はい。そうでした。あのですね?」
「……ちょ。顔が近い。珍しく近い」
「これで何処まで続けられるか、のテストタイプが私たちです」

身を乗り出して小声で言うのには分かりきった事実。
だからこそヴァンは眉をあからさまに顰めて溜息を盛大に吐いた。

「おや。珍しい」
「……引っ張り出されたと思ったら案の定そんなことか、と思っただけだ」
「まだヴァンは良いですよ。ここに来たの開始5分前じゃないですか。私いつから居ると思うんです?」
「アルトノート…」
「はい」
「そう言えば最近図書室にも居ないと思っていた。彼処が住処のようなのに」
「それは大概失礼な。ちゃんと自室で生活していますよ」
「ではなく」
「はい」
「………一週間ほど姿を見なかったと、私の記憶が正しければ」
「惜しい。正確には5日ほど前から此処にいました」
「何の為に」
「せっせとそれはもうせっせと」
「……?」
「この部屋のセッティングをしてました」
「……人選ミスだ」
「何か?」
「……いや。てっきり、定例会議出席が嫌で逃げ出したのかと」
「其処まで子供ではありません」
「で、アルトノート」
「やっと現実的な問題に気付いてくれました?」
「……ああ」
「そうです」

頷くカンタビレが溜息を一つ。

「私たちは今、何だかとんでもない問題にぶつかっています」
「ああ」
「…どうしましょう?」
「とは」
「随分と投げやりじゃないですか」
「そんなことはない」
「……態度に出てますけど」
「ではアルトノート、言わせてくれ」
「はい、どうぞ」
「その問題は私たちのせいじゃない」
「正論です」
「なら、私たちがそれを気にする必要はないのでは?」
「でも此処にいますから」
「偶々だ」
「いいえ。私が貴方を呼びました。私は此処の人に呼ばれました。……偶々じゃないんです」
「……偶々、だ。アルトノート」

大体、と言葉を切ったヴァンがじっと見詰めてくる視線を正面から受ける。

「…何故、私だった? 貴方の副官でも良いじゃないか」
「そうしたら私の日常になってしまいます」
「いいじゃないかそれで」
「それはそれで、私だけ損をするので」
「そう言うキャラだったか?」
「道連れにさせて…いや、どうせなら日頃の鬱憤でも晴らさせて貰おうか、と」
「ああ…実に良い笑顔だ」
「光栄です」
「で」
「今日、ヴァンの発言それ多いですね」
「それ以外に言うことがない」
「……まぁ、いいでしょう」
「目下突きつけられた問題打破だが」
「無理」
「………即答か」
「はい。無理です。まずもうこれ自体本当に間が抜けてます。向いてませんから」
「…誰が」
「此処の人」
「あー……、確かに」
「なので、打ち切り。そろそろ打ち切りにしようかな…とお伺いを…」
「どこから出した、その糸電話」

 

……………。

「はい、諦めますって」
「やけにあっさりと」
「割り切りは割と早いと言ってました」
「なら最初からこの方法をとるのが間違っている」
「だから最初に言ったでしょう? ネタ切れです」
「……成る程。たぶんその理由だけでは無さそうだが」
「そうですね。でも気にしなくても良いのでは」
「私たちには関係がないからな」
「はい」


「では」
「帰って良いのか?」
「はい。私も帰ります」
「そうか良かった」

 


つまりは。
何処で終わらせたらいいのか、ということ。
会話だけだと間延びどころではないということ。

結論から言うと向いてない。




>>本当がっかりするほど向いてなかった…(苦笑)
   人選もミスった気がしている。何でか。

何故この状況に追い込まれたか。
蝋燭が消えてしまった室内で政宗は未だ暗闇に慣れきっていない瞳を瞬かせた。
背中というよりは腰に近い部分に腕を回され、随分と下の位置で抱きついてきた相手は微動だにしない。
多少肌蹴てしまった夜着の隙間に相手の日に灼けた髪が触れてくすぐったい。

「………あー、………幸村?」

仕方ない。
意を決して呼びかければ回された腕に力を込められただけで無言が返った。
一体何事だと一つ溜息を吐いて、二人分の体重を支えるように床についていた腕の片方で幸村の背を撫でる。
二度三度、子供をあやすように繰り返せば不意に腕の力は弱まった。

「幸村、落ち着いたか?」
「……政宗、殿」

そろりと顔を上げた幸村の瞳は普段の明るさが影を潜めている。闇と同じ暗さを宿す瞳に本能的に危うさを感じ背筋が粟立った。
平素は明るく真っ直ぐな気質の幸村は時折、戦を終えた後の気持ちの切り替えが出来ず闇に沈むようになる。
その度に宥め賺すのは幸村の忍の役目であったはずだが今回に限ってはそれが適用していないようだ。

「一国の主に堂々と夜這いたぁ、良い度胸だな?」
「……申し訳ない」

力の弱まった腕はしかし政宗を離さない。
謝罪の言葉を口にする幸村の瞳の色は未だ闇に沈んだままである。
他人の体温が安堵するのだろうか。折角一度上げた顔を伏せて身を寄せてきた幸村に今度こそ政宗は盛大に溜息を吐いた。

「………お前、此処に来ること誰かに言ってきたか?」
「いや、誰にも」
「お前の忍にもか?」
「佐助にも言っておらぬ」
「……」

先日、甲斐にて小競り合いがあったのは知っている。
そしてその足のまま此処に来たというのか。
であれば甲斐の国主も忍も大層心配しているであろう。いや、忍に関してはどう行動するか知っていて黙認したのかもしれない。

「………面倒臭ぇ」
「政宗殿」

思わず零れた本音に小さく返る言葉は深みを持った。
いよいよ覚悟を決めなければと余分の体重を支えてすっかり痺れてしまった腕をずらした。

「幸村、如何だっていいがな…俺は」
「代りではなく政宗殿が良いから此処まで来た」
「……あぁ、そ」

言葉は突然姿勢を変えて口付を仕掛けてきた唇に吸い込まれた。
辛うじて支えていた二人分の体重を支えきれずに背中を強か床に打ちつけ眉を顰めたのも束の間、息継ぎを許さず深くなる接吻が思考回路を鈍らせる。何とか振り切って自由になる腕で幸村の髪を引き唇を引き剥がした。

「……は、」

冗談。
空気を求めて無意識で漏れた声に政宗が内心苦く思うと至近距離で痛いと呻く声が聞こえる。
限りなく二人の距離は零に近い。
髪を引かれ少し仰け反った幸村の喉がこくりと動いた。

「……分かった、分かった」

落ち着かせるような柔らかな口調で告げた政宗が口角を吊り上げる。
暗闇に漸く慣れた視界は訝しげに政宗を見た幸村の瞳を捉えた。
掴んでいた髪を離してやる。急なことに反応が遅れた幸村が頭を支え切れず、しかし咄嗟の判断かこつりとぶつかった額同士に衝撃は殆ど走らない。

「……とりあえず幸村」
「何で御座ろう」
「明日、必死で殺されない言い訳でも考えておけ。俺はフォローはしないぜ?」
「………承知した」

素直に頷いた幸村の唇がもう一度政宗のそれと重なる。
角度を変えて深くなる口付を甘んじて受けながら政宗は幸村の首に腕を回した。
必死で縋りつくかのような、その行動にいつだって絆され流されてしまう…これを愛と呼べるかは知らない。




>>幸政。少し大人な雰囲気を目指したつもり(?)
   男前UKEってどう書くんだ!ちょうむずかしい…!(笑

   たっつんお誕生日おめでとー、文です。
   これでお祝いか…という感じだけどお誕生日おめでとー!

時にこれは何ぞ?
と無表情に困惑の色を浮かべた元就が首を傾げる。些細な変化は余り気付く者がいない。
それをしっかりと見抜いた元親が元就の白い手の上で所在無げにしている物体に視線を落とす。

「南蛮の菓子、だ」
「だから…」
「やる」

押し返そうとする手をやんわりと押し戻した元親が笑った。憮然とした表情で眉間の皺を深めた元就が困ったと視線を落とした。
掌を転がるほどしかないそれは目の前の男が持ってきたものだった。
何だと聞いたら先程の答えである。

「何故、」
「…それ、暖かいと溶けるからな。早く食えよ」
「長曾我部」

何かを言おうとした元就に、溜息一つ落とした元親が白い掌の上に乗っていた菓子を摘んだ。
あ、と声をあげる前に口を開いた元就の口内に菓子が放り込まれる。
今まで食べたことの無い味に眉間にまた皺を寄せた元就は、しかし呆然と呟いた。
苦味はある。
けれど、それに勝るほどの。


「………甘い」
「ああ」

不思議な甘さを持つ菓子は、元親の言った通り溶けるものらしい。
舌先で解けるように溶けていく不思議な感覚に知らず目を閉じると、唇に触れた何かがあった。
節くれだった長い指が形を確かめるように唇をなぞるので薄っすらと瞼を持ち上げた元就が笑う。

合図は一度。
言葉も無く引き合った影が蝋燭の明かりに照らされ、触れる寸前に明かりは消える。
しんと静まり返った冬の寒さに互いの温度を確かめるような口付けは数度、秘め事のように行われた。



>>バレンタイン瀬戸内。
   一歩間違えば深夜番組枠、その寸前暗転が私の手法(黙れ

―ああ、ほら。これを見てご覧よ。

と歌を終えて譜面をチェックしていた僕に彼は言う。
穏やかな声に楽しさも含んで、だから顔を上げた僕は視線が合った瞬間に少しだけ首を傾げた。
心底嬉しそうな、何だろう? 凄い暖かな笑み。

「何ですか? マスター」

手招いて画面を示すので覗き込む。
そこには長い南国の海の色に似た髪を二つに結った少女が映り込んでいる。瞼が降りているので少女の瞳の色までは分からないが、左腕にナンバリングだろうか、刻印があった。

「……この子」
「そう。分かるかい? 君の妹と呼べる存在だろうね」

くすくすと笑う声に僕も思わず釣られて笑う。

「嬉しそうですね、マスター」
「うん」

訊けば間もなく答えは返った。

「いつか、この子が世に出てきたら君と一緒に歌うこともあるんだろうね。どんな歌を歌うんだろう。楽しみだね」

屈託無く。
楽しみと言った彼が視線をあげて僕を見る。
ああ、そう。この人は。

「はい。僕も楽しみです、マスター」

心底音楽を、歌を、そして僕らが歌うことを愛し望んでくれるから。
だからこそ一つ一つ彼の手から生まれる音を間違うことなく声に乗せて歌いたいと思うのだ。
大切な気持ちは、全て彼のその姿勢から受け取ったから。
自分も彼も終わりがあって、けれど音は必ず続いていくものだと最初に教えてくれたその日から僕にとって彼の存在は主人である枠を越えた。
純粋に彼の音を表現したいと思った、その気持ちは。


「……君もいつか、そんな思いを感じるだろうか」

そんな人に出会えるだろうか。
君はどんな音を紡ぐのだろうか。
僕は未だ目覚めを待つように眠る少女の映像に語りかけ、ゆっくりとそれを見つめていた彼に視線を移して笑う。
笑い返す彼の瞳は矢張り穏やかで温かかった。




>>まさかのボーカロイド、お兄ちゃんネタ。
   本当なんて言うかお兄ちゃんに弱くないですか自分(苦笑

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プロフィール
HN:
くまがい
HP:
性別:
女性
自己紹介:
此処は思うがままにつらつらとその時書きたいものを書く掃き溜め。
サイトにあげる文章の草稿や、ただのメモ等もあがります。大体が修正されてサイトにin(笑
そんなところです。

ブログ内文章無断転載禁止ですよー。
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