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謂わばネタ掃き溜め保管場所
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狭く閉ざしていた視界に鋏を入れてくれた人を、覚えている。
笑うと大人のくせに子供みたいで、一緒に寝転がって遊んだりもした。
兄と呼んで欲しかったらしく、呼び方に不服だったのか少し残念がって笑った。
そんな人を覚えている。
忘れてしまえれば楽だったのかもしれない、と思う。
けれど実際は忘れなくて良かったとも、思う。

「でも実際、これだけ似てると腹は立つけど」
「何の話?」
「君の外見の話だよ」

自分が知ってる面影よりも、もっともっと幼いけど。
思ったよりも器用な人だったなぁと思う。オルゴール職人と自ら名乗るだけあって細かい作業が得意だった。
「ふうん」
意識を引き戻すような短い相槌。じっと此方を見詰める瞳の色も同じ色。
「誰と重ねたの?」
「……え?」
「いや、何となく気になって」
にこりと満面の笑みを浮かべたところをみると、粗方見当はついているのだろう。
それはそうかと思い直した。
たぶん彼は色んなことを、隠してきたかったことを知っているから。
それでいて何も言わないのが気に入らないとも思う。過去を求める一途さなら帽子屋の方が分かりやすい。
「別に。君に関係あること?」
「うーん、どうだろう」
笑う。
「何となく、どうやったら呼べるかなぁって思っただけだよ」

 ―ねぇ、どうやって君を呼んだらいいかな。

瞬間重なる声に目眩がした。
覚えているのも、忘れてしまうのも、きっとどっちも辛い。
自分が取った選択と、無意識に兄が取った選択は、どちらも。
「勝手にしたらいいよ」
視界さえ暈けるような感覚に素っ気なく言い返せば、「そう」とだけ返った。



>>これだけの短いのに、書いてる間に色々と見失った。
   そんなこんなオズとヴィンス。

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ふと、人混みの中に知った色を見つけた気がして振り返る。
誰も居ないはずなのに立ち止まった先で、でも確かに誰かを視界の端に捉えた感覚があった。
「……?」
連日、仕事にどっぷり浸かっていたからただ疲れているだけかもしれない。
そう思うのに立ち止まってしまった体は、自然と向かっていた場所とは別の方向に足を向ける。
一本細い路地を通り抜ければ開けた視界に一つの影が映った。
「……レイム、さん?」
不思議そうに名を呼ぶ、それが珍しくて立ち止まったまま笑う。
外灯が無い場所で色素の抜けたような銀髪だけ、月明かりに照らされて浮かぶ。風に揺れて不安を煽ぐ様子に一歩踏み出した。
「こんなところで何やってるんだ?」
「それはこっちの台詞ですヨ? 不用心にふらふらして良い場所じゃないんですケド、判ってます?」
にこりと笑う顔の血色の悪さだけが目についた。
何も月明かりのせいではない。たぶん手を伸ばして触れたら想像と違わず冷たいのだろう。
普段纏う白と紫の私服ではなく、宵闇に紛れる黒を基調とした服装をして、それでも紛れないのは酷く病的なまでの白さが目立つからだ。
「ザークシーズ……」
「お仕事デス」
それは、分かる。そうでなければ好き好んで彼が制服に袖を通すわけもない。
にこりと笑んだ彼が軽い足取りで脇を通り抜けようとした。小さく、小さく、聞こえた音に、振り返る。
「ザクス、」
反射的に伸ばした腕は振り払われない。
バランスを崩しかけてそれでも止まれたのは、偏に相手の反射神経の良さからだ。
「危ない、ですよ…。レイムさん」
小さく、咳き込む音。
「お前…」
「大丈夫ですヨ。少し咽せただけですから」
笑おうとして苦しそうに眉を寄せる、それに腹が立つ。
「どこが大丈夫なんだ」
確かに戦いにはとことん不向きで役に立たない自覚はある。
挙げ句、細くて掴み所が無さそうに見える割に剣を扱わせたら勝てる者が殆ど居ないのも分かっている。
考えなくても頼りないことくらいは知ってはいる。
――それでも。
「ちょ、っと……、レイムさん」
身長の差と相手の軽さを逆手にとって、掴んだ腕を引き寄せて無理矢理担いだ。
暴れるかと思ったら驚いた声を上げるだけで大人しくしているのが逆にらしいと言えばらしい。
「恥ずかしいんですケド」
「私だって恥ずかしい」
良い図体した大人の男が担がれて、担いで人通りのある場所に出て行くなど。
けど本当は歩くのさえ辛いであろうに気丈に振る舞おうとするのを見るくらいならマシだった。
「なら止めたら良いのに」
くすくすと笑いを含んだ声が耳の近くで聞こえる。同時に咳き込む音も。
軽いのに決して軽くはない、それは。
「もう少し行けば馬車を止めてある。送ってやるから」
「……困りましたネェ」
少しだけ調子の落ちた声が耳を擽った。

「               」
「それはこっちの台詞だ」
囁かれた言葉に直ぐに反論して返して、はっとする。何を真面目に返すことがあるのか。
今のは無し、と言いたくて結局言えないまま馬車についてしまった。

 

――貴方のこと、本気で好きになったらどうしてくれるんです?



>>七夕に引っかけて何かを書きたかったはずが、無理だったんでこれはこれでいいかな、と。
   眼鏡と帽子屋さんは仲良しこよし。

「ああ、やっと見つけましたヨ」
少しだけ口角をを上げて笑った相手を無視して進んでいくと、意外そうな顔をされる。
「おや」と小さく声が聞こえて、纏わりつくようでありながら決して手の出せない一定の距離でついてきた。
「怒ってるんですかァ…?」
小さく問われる声も無視。
手にしていた杖で背中を突かれても無視。
とにかく無視を決め込む態度に相手は小さく溜息を零した。
「あのね、レイムさん」
そしていつもの人を喰ったような話し方ではなく、落ち着いた調子で声を掛けてくる。
本来の相手の話し方はこちらに近い。
「そんなに眉間に皺寄せて我慢して無くても、伝わりますよ」
ゆっくりと距離を取りながらついてくる相手が苦笑を落とした。
「怒ってるんですね?」
そして殆ど無自覚に近い、言葉を繋いだ。
「どうしてです?」
「あのな、お前が……っ」
振り返った先でにこりと笑った顔を正直ぶん殴りたいと思う。
いつだってギリギリのところで彼は確信犯であるから、どれが計算されていないものか見失う。
「レイムさん?」
「無茶ばっかりするからだ!」
空いた手を握れば、ひんやりと血が通っているのかと心配になるほどに冷たかった。
強く握っても顔色一つ変えない相手に痺れを切らす。
「無理は利かないんだ。もっと大切にしろ」
「……ああ、はい」
優しいんですね、と続いた言葉にやはりぶん殴りたくなった。
代わりに手を引っ張りそのまま、細い体を抱き込む。「おや」とまた小さく声が上がるが無視することにした。
「ご免なさい」
小さく、聞こえるか聞こえないかの瀬戸際で耳元に囁かれる言葉は謝罪。
全て本当は解っていて、それで解ってないままに笑うそれに
「いや、いい」
返した言葉も虚実を孕むので、結局どちらも嘘吐きなのかもしれないと思うのだ。


>>ぶれの無い二人です。なんというか、そんな感じ。

「つまりは、愛が足りないんじゃない」
「……は? 何を言ってるの?」
足りないのは君の頭の方じゃないかな、と言いかけてヴィンセントは手にしていた鋏をくるりと回した。
逆手から順手。弧を描いた鋏の先は落ち着きを取り戻して手の中に収まる。
「だから、そんな破壊衝動」
す、と指がヴィンセントの腕の中にあるぬいぐるみに向く。
腕の縫い目が鋏で切られ綿が少しだけ出てしまったそれは痛々しくも思えた。
「嫌だなぁ、オズ君は変なことを言うんだね」
「そう? 結構当たってる気がするんだけど」
にこりと屈託もなしに笑う少年にヴィンセントは首を傾げる。
何とも理解し難い。
「だって好きだからこうするんでしょう?」
「だって愛が足りないから気を引こうと、壊そうとするんだろ?」
ほぼ同時だった言葉が落ちた。
「別にそんなことないよ?」
「どうかな? なんかそういうところに疎いの、似てるよね」
さらりと言ってのけられた言葉に眉を顰めたのも束の間、少年の腕が伸びて鋏を奪い取る。
金色の装飾が施された鋏が、少年の手に収まるのを見詰めながらヴィンセントは手を伸ばした。
鋏が無いのは、嫌で。けれど指先を捕らえたのは少年の手。
「返して」
「嫌だよ」
「無いと困るんだ」
「だって可哀想だろ」
主語のない言葉にヴィンセントは笑う。
「可哀想じゃないよ、だって痛くもないんだもの」
腕の中のぬいぐるみを示して言えば、オズも笑った。
「違うよ」
そして嫌なことを言う。
「可哀想なのも痛いのも、それじゃなくて」


――ヴィンセントの方だよ。


>>あれだが……。姉妹の中でオズ坊ちゃんはほぼ上固定。
   ナイトレイさんとこの息子たちは坊ちゃんの嫁らしい。

ふわふわしたシフォン素材のワンピースを身に纏い、街の中を歩いていく少女の髪の色は鮮やかな色。
足取りには迷いが無く、ふと目にとまった噴水に目を細めた。
キャスケットを被り五分袖のパーカーに半ズボンの、後ろ姿だけでは少年にも見える人物をそこで見かける。
ウェストポーチに無造作に片手をつっこみ、何かを取り出し作業しているのか戯れているのか、その姿は楽しげでもあった。
「何をやっておるのだ?」
背中に問いかければ、肩越しに振り返った相手が笑う。
「ああ、アンヘル! 今日はオフなの?」
にこにこと機嫌の良さそうな声に、アンヘルと呼ばれた少女もまた笑った。いや、正確に言うなら既に少女の年齢は出掛かっているのだが、どうにも身長は伸びず少女の姿に近いまま成人を迎えてしまったというべきか。
「いいや、少しだけ時間が空いただけだ」
質問に返せば、「そうなんだ」と相槌を打つ相手が手にしていた小型の測量器具をポーチにしまう。
「お前こそ、今日は休みか?」
「ううん。そんなわけないじゃない。お休みなら僕、一日中お家で寝てる」
「健康的なんだか、不健康なんだか…」
「そう? まぁ、良いじゃない」
どうだっていいよと付け足し噴水の縁に腰掛けた少年のような少女は、少しだけ陽に透ければ薄い黒髪を揺らして笑う。水しぶきが掛かっているはずなのだが頓着はないらしい。
「で、どうしたの? なんかあった?」
またウェストポーチに手を突っ込んで何かを探し当てたらしい少女がアンヘルに何かを投げて寄越す。
取り落とすことなく両手で受け取ったそれは小さなキャンディだった。要するにおやつか。
「何かあったように見えるか?」
溜息一つ落として同じように噴水の縁に腰掛けたアンヘルが手のひらのキャンディを手慰みに転がす。
自分の分のキャンディは既に口の中らしい。ころころと転がしながらアンヘルの様子を見つめる少女に観念してアンヘルが立ち上がった。
背中から流れる鮮やかな赤い髪が噴水の光を受けて綺麗な残滓を描く。
「隆景」
「はいはい」
「この格好、どう思う?」
「………は?」
意を決して聞いた言葉に隆景は目を丸くした。質問を上手く処理しきれなかったらしい。
一度二度と瞬きを繰り返した後に、アンヘルの頭からつま先までを視線で追う。特に変なところは無い。
「かわいいよ?」
なので素直に感想を言った。
少年のような格好ばかりをする隆景も一応女性だ。可愛い格好が嫌いなわけではない。
アンヘルの腰まで伸びる癖のない鮮やかな髪も綺麗で好きだし、今の格好―柔らかなシフォン素材のワンピースも彼女に似合って可愛いと思う。
「本当に?」
「ええ? なんでそこで嘘つく必要があるの」
疑い深く聞いてきたアンヘルにふるふると隆景が首を振る。
お世辞でも何でもなく可愛いと言った筈だが、何か気に障ることをしただろうか。
しかし隆景の心配を余所に貰ったキャンディを握りしめたままアンヘルは眉間に皺を寄せて、また座り込んだ。
「誰かに何か言われた?」
「いいや」
「それじゃ、どうしたの」
やっと手のひらのキャンディの包み紙を開けて口の中に放り込んだアンヘルが困ったように首を傾げる。
「あやつがな」
「カイムさ、」
「ああ、あの馬鹿者がな…!」
アンヘルが良くも悪くもそういう風に言い表すのは、昔は学芸員であり今はこの人工惑星のセキュリティやシステム管理部門に移管した男性でしかない。
「どしたの」
「…………これは嫌だ、と言われたんだ」
指先でワンピースの裾を引っ張ってアンヘルが溜息をつく。
(ああ、なんだろう。可愛い)
そう隆景が思った瞬間に、接続されているデータベースのガイアが突っつくように反応をしてきた。
(何、ガイア? ああ、そういうこと)
学習機能のついているAIを積んだデータベースは少しずつ悪知恵もついていくらしい。
あまりにも悪さをするようならば親とも言える開発者とシステム管理者が怒るだろうが、これは範疇のうちか。
先ほどアンヘルがカイムの元で何かを話していたらしい映像が映し出される。監視カメラの映像ログ。
「あのさ、アンヘルさん、アンヘルさん」
監視カメラに音声を拾う機能はないが、カイムが何かを言ったのとやりとりの様子だけは何となく掴めた。
よいしょ、と少しだけ反動を付けてから立ち上がって隆景が笑う。
「何だ?」
「カイムってさ、水玉模様好きじゃないんじゃないの?」
「え?」
柔らかなシフォンの、ワンピースは少しだけ大きめのドット。
コントラストは淡く、クリーム色の生地に薄く水色が乗るだけなのだが。
「僕が思うに、アンヘルにその服が似合わないんじゃなくて」
口数が少ないと言うより無口過ぎる印象の男は上手く言えなかったのだろう。
「水玉模様は好きじゃないのに、アンヘルが着ると嫌いじゃなくなっちゃうから」

――だから、嫌だったんでしょう?

笑って告げればアンヘルが少しだけ照れたように赤くなって俯いた。
「そうなら、」
小さく呟かれる声に隆景が笑う。
「そうとちゃんと言え、馬鹿者」



>> 時折書きたいカイムとアンヘル。今回は分類不可、博/物館/惑星パロにて。
    なんか可愛い女の子な、そんなのが書きたかったんだな。

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プロフィール
HN:
くまがい
HP:
性別:
女性
自己紹介:
此処は思うがままにつらつらとその時書きたいものを書く掃き溜め。
サイトにあげる文章の草稿や、ただのメモ等もあがります。大体が修正されてサイトにin(笑
そんなところです。

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