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謂わばネタ掃き溜め保管場所
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もぞもぞもぞもぞもぞもぞもぞ。

「………」

もぞもぞもぞもぞもぞもぞもぞもぞもぞもぞもぞ。

「………………………」

もぞもぞもぞもぞもぞもぞもぞもぞもぞもぞもぞもぞもぞもぞ……

「……おい」

痺れを切らした、と少しだけ険を含んだ声が上がる。
庭に続く縁側で部屋を見渡し部屋の住人に仁王立ちになって声を掛けた元春は、しかし直後に顔を上げたえらく体格のいい男の、それこそ体格には相応しくない人懐こい笑顔に気を削がれた。
鮮やかな、この国の人間には酷く見慣れない髪を首の後ろで一つに括ったその男は、元春を見てにこにこと笑う。

「春…!」
「…あのな。……俺、怒ってんのよ? 分かってるか?」
「…? 怒ッテ? 何故?」
「……………部屋の半分を正体不明な菓子で埋められて怒らない城主がいるか」
「アア…、コノ飴ガ気ニナルンダナ…。コレハ冬殿ニ頼マレテ作ッタンダ」
「全部引き取って貰えるんだろうな」
「……イヤ。モウ来テ、必要ナ分ダケ持ッテイッタ」
「…じゃ、これは?」
「余ッタ」

がくり。
頭が痛くなる答えに元春は明らかに肩を落とす。
それを不思議そうに見た男は、確かに部屋の半分を埋め尽くす自身が作った飴を見渡した。
南瓜味の飴を作って欲しい。ハロウィンだからね、と冬の名を冠する知り合いが依頼してきたのはつい先日。
材料も相手が用意してくれたので男は飴を作るだけだった。
ただ材料自体が多かったとはいえ、作り過ぎたことは男だって自覚している。

「どうする気だ…こんなに」
「配レバ良イ」
「…配る?」
「ソウイウ習ワシガ、……エェット、南蛮ニハアル」
「ふうん」
「本来ノ意味合イガ違ッタンダガ……、マァ…簡単ニ言ウト」
「?」
「Trick or Treat」

聞き慣れない言葉に首を傾げた元春に男が笑う。
いつもは片言のような少しぎこちない言葉使いだというのに、それは妙に流暢であった。

「オ菓子ヲクレナイト、悪戯スルゾ……ト、子供タチガ仮装シテ近所ノ家ヲ訪ネテマワル。悪戯自体ハ可愛イモノダガ」
「ああ…。要するに、そう言われたら訪ねてこられた家の大人は子供にお菓子を与えるってことだな」
「ソウイウコト」
「それで、一つ問題があるんだが」
「何ダロウカ?」
「此処には、そういう習わしはないぞ」
「……………ソウダナ」

首を傾げて思案し始めた男は、やがて簡単なことだとぽんと両の手を打った。

「Then I will give everybody treat.」
「は?」
「配ロウ、春!」
「………はぁ?」

がさがさと自分の作った飴を掻き分けてきた男が何処から取り出したのか篭を一つ。
全く意図の掴めない元春に押しつけるようにして、元春が受け取ったのを良いことにあろうことか篭に自身の作った飴をどんどん入れていく。

「…ちょ、」
「配リニ行ケバ問題ナイ。ソウダロウ?」
「………お前な」

自らも篭を持って飴を詰める男に何を言っても無駄だろう。
多分何を言っても別に悪意のないことならば良いだろうと言われてお終いだ。
性別にしては上背のある元春が見上げなければならない、ある意味恵まれた体格の男は首の根本で髪を結わえていた飾り紐を外す。
癖のある鮮やかな髪が流れた。
立ち上がってしまえば幾分も元春よりも高い位置にある顔を、見上げればにこにこと実に楽しそうに男は元春を急かすのだ。

「…………まぁ」

どうやって詰めてしまったのか。
二つの篭に部屋の半分を埋め尽くしていた飴を詰め終えた男は、元春の手を当たり前のように引く。
それに観念して、元春が笑った。


「仕方ないか」



>> 元春サイドハロウィン。
    体格の良い、けど犬っていうか大型犬……なのは悪魔どの。
    元春はちっとも怖そうじゃないんだけどな、って思っていたらいいと思う。

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「は、ろ……うぃ、ん…」

聞き慣れない単語を何とか口に出して、渡された見たこともないお菓子に目を落とす。
「悪戯とお菓子どっちが良い? 景ちゃん」と聞いてきた彼に素直に「お菓子」と答えたのだ。
くるくると巻かれた何の味だか分からない二色の飴。
美味しそうかと言われると正直首を傾げる代物の其れを見詰めながら、隆景はもう一度うーんと首を傾げた。
南瓜味と言って渡された飴だがしかしそれが本当にその味をしているのか疑わしかった。

「それ、駄目そう?」

いつまで経っても飴に口をつけない隆景の姿に、お菓子をあげた張本人がおそるおそると尋ねた。
じっと飴を見詰めたまま固まっていた隆景がその声に反応して視線を上げる。
ふるりと一回首を振って隆景は曖昧に答えた。

「いや、珍しいお菓子だなぁって」
「飴だよ。それ」
「それはさっきも聞いたけど…。僕、こんなもの見たこと無いもの」

飴を示してそう言った隆景はもう一度視線を落とす。
そしてそのまま一向に食べようともしない姿に、彼は悪戯気に笑った。

「こんなことなら」
「…冬さん?」
「選ばせずに悪戯をしてしまえば良かったかな」
「………………?」

それはそれはある意味不穏な響きを持った言葉に、隆景は意図を掴めず首を傾げるしかない。
彼は「冗談だよ」と笑って飴を持ったままの手を引いて引き寄せる。
小柄な隆景はすぐに腕の中に収まってしまって、弱くない力で抱き締められて意味が分からず大人しくしている。

「まぁ、いいか」
「…何が…?」
「こっちの話」

ぽつんと呟かれた声に疑問を返しても、結局は答えは返ってこず。


「ねぇ、景ちゃん?」
「なに?」
「僕にも頂戴?」
「……………ああ、うん」

一瞬、躊躇した隆景が心得たというように彼の肩に手を置いた。
悪戯かお菓子か。
それは、二人だけの秘密。




>> 景ちゃんと冬さんのハロウィン。
    なんだか良くわかんない景ちゃんと、反応を楽しむ冬さん。

寂しかった、とぽつんと呟いた言葉は静寂の中とっぷりと浸かるように沈む。
朝とも夜とも分からぬ空模様は夕焼けにも朝焼けにも見え、何よりも遠くかけ離れた現実味を帯びない不可思議な情景でもあった。
軋みを上げて回るような時間は、なにかしら絡繰り染みた狂気の色を垣間見せたし、其れによって染められたような銀糸の髪は風に攫われてどこか儚げにも見えた。
だから、つ、と手を伸ばそうとした指先を咎めるようにして、彼女は一歩を踏み留まる。
触れれば体温はきっと温かい。
それに安堵してしまうのは簡単だ。
けれど、それではならないのを聡明な彼女は感じ取っていた。

「………冬、さん」

ふわりと振り返って少し微笑み言葉を促す彼に、つきりと痛む胸の内を隠して笑う。
繰り返す始まりと終わり。狂気は人が故。
彼の狂気が逸脱しているのは人としてまだ人ではない故。
其処まで知って尚、傍にいたいと思ったのは身勝手な意志。

「なぁに? 景ちゃん」

呼ばれた名に、終わりを垣間見た気がして泣きそうになったのは何故だろう。



>>可哀想なのは、どちらなのか
   人になりきれない人か
   其れを好きになってしまった人か

   彼は冬さん
   彼女は景ちゃん

ねぇ、ねぇ、景ちゃん。
至極嬉しそうにそう呼ばわる一応奥方に隆景は碌でも無さそう、と思いながらも向き合った。

「どうかしたの? 冬さん」

うんうん、とにこにこと笑う人物はどこからどう見ても性別的に男である。
奥方とは本来女性を指す言葉であるのだから、致命的なずれでもあるのだが隆景も家臣達も全くと言っていいほど気にはしていなかった。
夫婦とは子を成すことも目的と入れるなら、この二人はその目的を成す可能性としての第一条件は持ち合わせていた。
奥方が男性であるにも関わらず、その条件を満たすことが出来るというのなら。
結果として旦那でもある隆景が女性であればいいことである。

「あのね、景ちゃん。ラブポーションって知ってる?」
「……らぶ…、何?」

両手を前に合わせて、上機嫌のままの奥方に聞き慣れない言葉を反芻した隆景は首を傾げた。
らぶ、とかいう言葉は前に胡散臭い南蛮人から聞いたような気がする。
確か意味合いは”愛”だっと記憶しているが定かではない。
その後の言葉に至っては全く聞いたことがなかった。
銀糸と呼ぶに相応しい癖のあるふわりとした髪を揺らして、奥方が笑った。

「ああ…。そうかそうか。聞き慣れないよね」
「……南蛮語?」
「南蛮ってどこら辺を指すのかが僕には分からないからなぁ。これは英語というのだけれどね」
「……えいご?」
「いいよ。南蛮語で」

そこに重要性は無いのだと言いたげに両手に包まれていた小瓶を奥方は隆景に差し出した。
薄く桃色に色づいた瓶の中には液体が入っている。
受け取った小瓶を目線の高さまで持ち上げて隆景はしげしげと眺めた。

「…これが、その…らぶなんとかなの?」
「うん。ラブポーションね」
「……薬?」
「良い線いってるよ。景ちゃん」
「どうしたの、これ」
「貰ったの」

素直に答える奥方に曖昧に相槌を打って、隆景は小瓶をゆっくりと振った。
少しだけとろみのあるようにも思える液体が瓶の中で揺れる。

「……それで」
「うん?」
「どんな薬なの、これは」

予感的にはあんまり良い薬では無さそうだ。
笑顔の奥方は少しだけ首を傾げると「んー」と小さく唸った。
言い難い効用のものだとでもいうのだろうか。しかし隆景には薬の名前さえ聞き覚えのないものだ。ここは聞いておかねばなるまい。

「ほら、あるじゃない? よく…」
「何が?」
「ここにだってあると思うんだ」
「……だから、何が?」
「意地悪…」

そう言われても困る、と沈黙を貫けば観念したように奥方が一つ溜息を吐いた。
そして愛の毒とも言うのだ、と宣う。

「…愛の毒?」
「つまりは妙薬ってこと」
「………ああ」
「理解した?」
「つまりは媚薬ってことでしょ?」
「そんな身も蓋もない」
「でもそういうことでしょ?」
「まぁ、ね」

世間一般で言う惚れ薬や、強壮剤。そんなものの類だと、肩をすくめて肯定した奥方と、手に持ったままの小瓶を交互に眺めやりながら隆景は思案する。

「くだらない」

じっと様子を覗っていた奥方が驚くよりも早く小瓶を手にしたまま隆景は立ち上がった。
そしてそのまま障子を開け放つと城をぐるりと巡る堀目掛けて小瓶を放り投げる。
あ、と奥方の声が背中から聞こえる。
くるりと振り返れば立ち上がっていた奥方と目があった。小柄な隆景よりも大きい背丈とその割りには細い印象を受ける体躯。
綺麗に弧を描いて目標を違えることなく堀に吸い込まれていった小瓶の、哀れな末路とも言えるぽちゃりという水音が聞こえた。

「景ちゃん」
「要らないじゃない」

何かを言おうとした奥方にさらりと隆景が言う。

「…うん?」
「僕たちには必要ないでしょ、そういったものは」
「……うん」

にこりと笑った隆景に、奥方はそれ以上の言葉は言えなかった。
愛の毒を食らったか、というのなれば既にもう食らったと目の前の…小柄な少年のような女性はいうのだろう。
男として育てられて来た彼女はいつだってそう言う意味で潔い。

 

「そうだった。僕もだからこそ、此処に居るんだったからね」

 

まだ人間にもなれていない存在を。
受け入れて尚、引き留めた其の手を。その言葉を、知ってしまったときから奥方と呼ばれる彼もまた毒を食らったに等しい。
やんわりとゆっくりと依存性も高く、或いは致死性まで持つ、その毒を。




>>最早オリジナルに近いが、全く版権じゃ無いとも言い切れないので
   出来てしまった分類不可。
   冬さんと呼ばれているのは奥方である彼が冬を冠する名であるからです。
   冬さん、景ちゃん、と呼び合う仲の妙な夫婦。

   たぶんこれ以上はないと思う突発的。
   これの元出が分かるむつきさんにひっそりと捧げます。

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女性
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此処は思うがままにつらつらとその時書きたいものを書く掃き溜め。
サイトにあげる文章の草稿や、ただのメモ等もあがります。大体が修正されてサイトにin(笑
そんなところです。

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