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謂わばネタ掃き溜め保管場所
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いや真逆。
それを言うのなら、抑も手に入れようと思った時点で間違っていたのだ。
最初から過ちである行動の結果というのは、結局の所一つしかない。
或る意味潔いのかもしれない。自分の人生の中で一番潔いのが今この瞬間だということは、どういう皮肉かは知らないけれど。
呼吸は油断すれば途切れそうになる。視界は狭まっていく。
なんとも耳に付く雑音のような呼吸音は自分のものらしい。冷たくなる感覚に笑いさえ零れたのに、口の端から零れたのは一筋の血液。

「……はは」

情けない、とは思いたくは無かった。
最期だろう。
覗き込んでくる左右色の違う瞳は、「どうして」と問うてくる。いや実際声でも届いているのかもしれない。
ただ死に瀕して低下しすぎた聴覚では、もう音は聞き取れなかった。
手にしたのは至高の宝石だったか? ―”殺戮の女王”。
けれど、其れが一体何になったのだろうというのか。
嗚呼。これが、だからこそ彼女が殺戮の名を抱いたというのかもしれない。
所有者を、その家族を、簒奪者を、少なからず死に導くものだというのなら。


「…随分と、”女王”に対する接吻の代償は…高くついちまったなぁ」

自分の命を奪うのなら。
もう一人の簒奪者の、その命だけはせめて。
身勝手な願いに女王が応える可能性など、万に一つもないのだろうが。




>> Compensation de baiser = キスの代償
  冬の天秤とローランサン。
  分かり辛いぞ!死にネタ^^(またか)
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ほら、喩えばよぉ。
これが今生の別れになったらどうする?

縁側でくつろぎながらのんびりと言うには不釣り合いな言葉だなと、白日の下で晒される白銀の髪を見詰める。
ゆったりと吹く風を感じながら、元就は書きかけだった書状を書き上げて筆を置いた。
ことりと乾いた音に反応したか縁側に寝そべっていた背中が振り返る。

「終わったのか」
「…ああ」
「お疲れさん」

にっと笑った男に、何の表情も返さず元就はすっと立ち上がった。
数歩で縁側に辿り着いた元就は許可を取るでもなく男の横に座る。
当たり前のような所作は、結局男にとっても元就にとっても当たり前のことだった。

「…下らん喩え話だな」
「ん?」
「先程の、だ」
「…ああ。でもよぉ、有り得なくない限りなく現実に近い喩え話だろう?」
「だから下らんと言ったのだ」

一言で切り捨てた元就は、けれどふと陽光の下で見る自分の掌に視線を落とし、微かな声で問うた。

「ならば、我も問おう」
「うん?」
「此度が、我とそなた…最後の逢瀬となるならば、どうする?」

言葉と声は違えど先程と同じ問い。
一瞬呆けた男は、しかし次の瞬間には酷く獰猛な笑い方をする。

「そうさなぁ」

じっと元就を射抜く視線は鋭い。
それに怯むことなく言葉を待ち続ける元就の首に、這うように大きな掌が触れた。

「誰かに奪われるのは惜しい。…此処で俺が殺っちまうか…」

その気になれば元就など縊り殺せてしまうだろう手は、しかしそうはしない。
緩やかに確かめるように元就の首をなぞった後、優しく元就の髪を梳いた。
そして首の後ろに回した手を己の方に引き寄せるようにして、元就の身体を引き寄せる。
互いの吐息が掛かる距離。
その近さで見詰めた男の目の色は海の色を模している。

「それか。取り戻せばいいだけの話だろう?」

誰がいつ貴様のものになったというのだ。
抑も黄泉に赴かねばならぬ話かも知れぬと言うのに、容易く言うものよ。


小さくそう言えば、男は笑う。
先程とは違う無邪気な笑みで。

「黄泉なんざ怖かねぇよ。俺は鬼だからな」

そうして軽く口吻付けてきたのを甘受して元就も笑う。


「そうに違いない」




>>こんな雰囲気の親就もえ。
   大人なんだか子供なんだか、おとこらしいんだか、そうじゃないんだか。

誰もいなくて寂しくて、寂しささえも忘れられた。
それなのに音色は、誰も聞くものがいなくても錆びる事も無く続いていく。
荒野をただ滑る旋律。
優しい歌。
誰もいない何も無い、その場所で。
それでも音は続いてた。
歌だった。
優しい優しい歌で、温かな歌で、これが本当に本当の意味で歌われていた時、屹度倖せだった。
喪われてしまって、何を失ったのかも分からなくなっていた。
ただ歌だけが続いていた。
今も屹度続いている。
褪せること無い旋律だけが続き、歌い手は朽ちて、でも歌は消えずに。

「…待ってて」

泣きそうになった。
歌が微かに耳に届いた。溢れる思いで喉が詰まった。今もまだ彼処で続いているのであろう、たった独りでそこにあるのだろう。忘れていたことも全て越える様な感情に頬が濡れた。
優しい歌。
どうやって作った?
優しく歌った。不器用な、その無機質な腕が冷たいのに温かいと、何よりも温かいと感じた。
ぎこちなく軋むような、けどその音は、何よりの伴奏だった。


「………今」

もう一度。
停止する寸前までそれを続けるだろう、無機質の、何よりもかけがえのない、その、


「あいにいくね」


そうしたら、今度は、一緒に。
歌も自分も一緒に。
荒野を滑り流れて、落ちるように、それで、歌だけを残して。


屹度、どれだけの日々を失ったことの悲しみと、失ったことでの狂気とで生き続けたのだろう。
今はもう、原型も殆ど留めていない、それは。





              ――グラモフォン



>>riyaのグラモフォンをリスペクトしつつ。
   上手く表現できません。もしかしたら残された側の方が書きやすかったかも、
   きっと戻ってくるんだと思うんだ。
   一緒に終わるために。

目覚めは最悪だった。重い頭を無理矢理に起こせば鈍痛を引き起こし、身体の倦怠感はなお一層深くなる。
子供達の登校の元気な声は自分の現状と相まって奇妙に、実に奇妙に精神を追い詰めるのだ。
カーテンを無理矢理に開ければ眩しい陽光が目に刺さるようだった。やめておけば良かったと後悔しても今更遅い。
抑も後悔と言う言葉は先に立たないからこそ”後”なんて文字が入っているのだろう。
全く先人というのは憎たらしいくらいに賢いものだ。
何でも失敗すれば先人の教え云々となってしまうのさえ腹立たしい。
一度低く呻いて寝返りを打った所で、見慣れた自分の部屋に見慣れないものがあって思わず目を疑った。

「………へ?」
「だらしのない男よな。長曾我部」

冷水を頭から被ったかのように、寝ぼけた頭がさっと冷える。
腰に手を当てて切れ長の瞳で呆れたように見下ろしている人物の声は、非常に涼やかだ。

「…………も、毛利?」
「…うん? そなた、まだ寝ぼけておるか?」

訝しげに眉根を寄せた毛利が何を思ったかじっと覗き込んできた。
琥珀色の瞳が間近になる。
近づけば相手の顔立ちが本当に整っているものであると、実感せざるを得なかった。

「何で毛利が此処に…」
「ふん、知れたこと。いつまで経っても起きてこぬ、と心配するので見に来てやっただけだ」
「…………あ」
「納得したか?」

そうだ、と思い当たる。
朝夕賄い付きの自分の住む下宿に、彼が期限付きで入居してきたのである。
確か住んでいるアパートの改修工事で運悪く一週間ほど其処に住めなくなったとか何とか。
その間はホテル暮らしでもしようとしていたらしいが、自分の友人でもあり毛利とも顔見知りである慶次が「だったらうちにその間いたらいいんじゃねぇの?」と言ったのだ。
慶次は友人でありながら、自分が世話になっている下宿の夫婦の甥だ。
人の良い彼らは毛利の事情を知ると一言返事で、毛利が此処に厄介なるのを受け入れた。

「……やべ。今何時?」
「後二分で八時になるな」
「………げ」

さらりと言われた言葉に血の気の引く思いがする。
今日の一限目の講義は必須修得単位であるために落とすわけにはいかない。
先程までの倦怠感など何処へやら。
慌てて起き上がると平然とその場に立っている毛利の横にある箪笥に手を掛けた。

「ちょっとごめんよ…っと」

相手がいいとも悪いとも聞く間もなく引き出しを引く。
そこから適当に服を引っ張り出して着替え始めた自分を毛利は何か納得のいかぬ様子でじっと見詰めてきた。

「何だよ」
「………いや」
「何だよ?」
「なんでもない。起きたのなら大事無いな。……先に下に行く」

くるりと踵を返してとんとんと階段を下りて行ってしまった毛利の後姿を見送る。
何か悪いことしただろうか。



「なんだぁ? 一体」


問いかけても自分では何も分からず、寝癖の酷い髪をガシガシと掻いた。
不機嫌そうな顔で降りていった毛利の態度に納得したのは、その後昼休みにあった慶次の一言。


「……毛利サン、女の子だよ?」
「……マジ?!」

やってしまった。
それだけは間違いが無かった。
中世的な容姿ゆえの最大の誤認だった。






>>現代っぽい感じで。まぁ、ありがちの設定。
   元就の名前が出てこないのは、最後のわけのせい。
   しかし終わってると思う、色々自分の頭が(今更)
   文章冒頭がやけに皮肉気味なのは、本当は頭が良くて結構心の奥では皮肉っぽいことも考えてんじゃないの?元親…と思って試験的にやった結果でした。結果は玉砕でした…(苦笑

初夏の緑。
影を落とす庭の端でゆったりとした所作で立ち上がった元就に控えめに声がかかった。

「父上」

穏やかな調子の声に振り向けば縁側から、元就によく似た容姿の青年が手に書状を持って庭に下りてくるところだった。

「…何用か、隆元」

其の青年の名を、正確には自分の子の名を元就は平素よりも柔らかな調子で呼んだ。
気に留めた風もなく歩み寄ってきた隆元が自身の手に握られた書状を視線で示す。

「何処からだ?」
「土佐の長曾我部殿から」
「……ふん」

長曾我部。
其の名が出てきた瞬間に反射的に眉を顰めた元就が思い出したかのように空を仰いだ。
初夏の爽やかな色合いの青が続く空の上、中天に日輪はある。
眩しさに目を細めた元就は、しかし次の瞬間崇拝する日輪ではなく、太陽の匂いのする白銀の髪の男の姿を正確に脳裏に蘇らせる。

―何とも疎ましきことよ。

内心毒づきながら息子の手にあった書状に手を伸ばした。
心得ているという風に差し出した隆元が、ふと思い出したように呟く。

「噂を聞きました」
「…何?」
「長曾我部殿は、最近体調を崩していた様子」
「ほう?」
「何でも奥州の方へ行った折、風邪を召して帰ってこられたとか」
「…成程、奥州の風邪は侮り難いようだな」
「父上?」

珍しく笑みを漏らした元就に、不思議そうに隆元が声を掛けた。

「莫迦でもかかる風邪とは」

莫迦と元就が差したのは他でもない四国の国主、長曾我部元親のことだ。
細い指先で丁寧に折り畳まれた書状を弄いながらくつくつと笑いを零していた元就は、しかしふと思い当たったように視線を上げる。
そうだ。
日輪の光が一層増す季節に差し掛かっていた。

「いや、違ったか。今は莫迦しか風邪を引かぬ季節だったな」






>>馬鹿は風邪ひかない。夏風邪は馬鹿しかひかない。
   けどちかたんは馬鹿かもしれないけれど、本物の愚か者ではない。
   そんな感じ。
   夏風邪はある意味性質が悪いよね。
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HN:
くまがい
HP:
性別:
女性
自己紹介:
此処は思うがままにつらつらとその時書きたいものを書く掃き溜め。
サイトにあげる文章の草稿や、ただのメモ等もあがります。大体が修正されてサイトにin(笑
そんなところです。

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