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金属の擦れる硬質な音を聞きながらうたた寝をしていれば影が落ちる。
ふと顔を上げれば不機嫌そうに見下ろしてくる青い瞳とぶつかった。
「無用心すぎる」
「…あら、ボコ」
「ボコ、じゃない! お前、こんなところでなんで昼寝なんて」
「………夜勤明けなの。疲れてるのよ」
癖の無い銀色の髪が視界で揺れる。
近づいたと思ったのは錯覚ではなくて、向かいの椅子に尊大に座った彼がとんとんとテーブルを指で叩く。
そんなことをされたら眠れたものではないな、とカチアナは一つ溜息をついた。
「あのね」
「夜勤明けということは一応上がりなんだろう?」
「……何時呼ばれるか分からない。それが医者ってもんよ?」
「寝て来い」
臨時で乗り込んだ艦で宛がわれた部屋は医療室から遠い。
何かあってコールを受けた場合移動が面倒臭かった。
だからこそ休憩室で少しでも仮眠をと思ったのに目の前の彼は不服らしい。
「遠いの」
「…それじゃ此処を使え」
短く答えたカチアナの言葉の意味を正確に捉えたらしい。
音も無くテーブルの上を一枚のカードキーが滑って、カチアナの腕に当たった。
「………?」
「その部屋なら遠くないだろう」
「………このキー。あんたのじゃない」
「使ってないベッドが一つある。俺はこれからブリッジに行くからな。暫くは俺も使わない」
「……ふぅん」
キーを摘み上げてまじまじと見たカチアナが上体を起こした。
「とりあえず此処で寝るな。寝て来い」
「…なぁに? それは隊長命令?」
くすりと笑ったカチアナにイザークが眉を顰める。
彼は確かにこの艦を中心とした一個隊の隊長であり司令官だが、カチアナはノルン出身の軍医だ。
普通の軍の命令系統には入らず、独特の命令系統で動く。
ノルンが解散された今でもそれは健在、―いや尚更、その権限は暗黙で強くなっている。
軍服を羽織ってはいるが、正確に彼女は今軍籍には入ってはいない。
だというのに、カチアナが敢えてイザークに”命令”といったのは。
「…ああ、命令だ。クルニコワ軍医。……寝て来い」
少しだけ柔らかさを含ませてそう言ったイザークにカチアナが笑う。
「了解しました。ジュール隊長」
今まで呼んだことのない呼び方で。
軽く敬礼をとって立ち上がったカチアナが一度振り向く。
「ありがとう。イザーク」
「いいから早く寝て来い」
ひらひらと手を振ってカチアナを追いやる仕種をすると、素直にカチアナが休憩室を後にしていく。
その背中を見送ってからイザークは溜息一つだけを残して、自分も休憩室を去った。
>>久しぶりのエイル殿。
捏造も甚だしいけど、本当にカチアナというキャラは良くできた捏造キャラだと思ってます。
(自画自賛か馬鹿やろう)
捏造が酷く趣味です(笑
ぽつり呟いた男を見向きもしなかった。
「……出来る訳なかろう」
断ち切るように言い切った。振り返った男の、隻眼の海を映した瞳がじっと此方を見詰める。
だから。
そんな眼で。
「……無理に決まっておる。…お前と我が、旅に出ることなど」
背負うものが、自分を此処に縛り付ける。
国も、名前も、家も、全てが、此処に自身を縛り付けて離さない。
そしてそれを望んで受け入れたのも自分自身。
投げ出すことなど出来ない。
「……うん。今は、な」
「……長曾我部?」
「そのうち、な」
穏やかに笑った男が去って一月。
突然の布告で四国が中国に攻めてきた。
油断していたことであっさりと降伏した中国を足懸かりにして長曾我部は天下統一を目指す。
―だから、言っただろ。
と。
あっさりと笑顔で男が言う。
「全ての柵を解いてやる」と言った男に「簡単に言うな」と言った自分に与えられたのは。
>>一緒に何もかも気にすることなく旅に出ること。
全国統一の決意の一つに元就の存在も入ってたら良いな、の妄想。
寄せて返して、ささやかに耳を打つ音に得も言われぬ心地良さを感じる。
最近は忙しくこうやって何も考えずに過ごす時間もなかったなとぼんやりと思いながら隆元は目を閉じた。
疲労の溜まった身体はすぐに睡眠を欲して、抵抗も敵わぬままに夢路へと向かう。
ふわりと波間を漂っていると思った。
ぼんやりとした明かりの中で海に浮かんでいるような感覚。
頭のてっぺんから爪先まで、言ってしまえば全て海に浸されてしまったような感覚は、喩えようもなかった。
恐怖もない。
これは夢だからなのかも知れない、と暢気に思う隆元の耳に。
「――、殿」
誰かの声が届いた。
波の音しかないはずの空間に、それは良く通った。
「―か元殿」
「だ、れ」
どうやら自分の名を呼んでいるらしい。やっとのことでそれだけを返せば、ゆるゆると感覚が現実へと引き戻されていく。
海は陸に。
波の音は遠くに。
「隆元殿」
そして、声は近くに。
影が落ちている。逆光になった人物の顔は良く見えない。
自分よりも体格の良い男が一人、心配そうに声を掛けてくれたのだと其処まで行き着いて、はた…と隆元はまじまじと相手を見詰めた。
開けたばかりの視界はまだ順応しておらず、良くは見えない。
「……信親、殿?」
「はい」
「どうしてここに」
「父の書状を持って参ったのです」
まだ半分夢の中に居るような隆元の問いに的確に返して寄越す男は、瀬戸内の海を挟んで向こう―四国の国主長曾我部元親の嫡子、信親である。
自身と立場が同じということもあって、一度二度と会う機会で話せば興味深かった。
「……、書状……。と、ああ…失礼を」
嫡子自らが国主の便りの使者をしたのだと理解してから隆元はいつの間にか寝そべっていた縁側からゆっくりと起き上がる。
それにあわせて覗き込んでいた信親も動いた。
「いや…。……随分と無理を?」
「……いえ、私が不甲斐ないだけですよ」
くらりと一瞬傾いだ頭を何とか抑えて隆元が笑う。
それよりもどうしてここに、と隆元が問えば今度は信親が笑った。
「お会いしたかったからですよ、隆元殿」
「………変わったお方です」
屈託無く笑った男にそう返した隆元も笑みを絶やさない。
なんだろう。なんということだろう。
心地良かった眠りの感覚よりも、引き戻した声の響きの方が、心地良いと思うなん、て。
>>捏造設定 信隆。
信親は決して丁寧語が標準じゃないよ。隆元は標準装備だけど(笑
なんだろう。ぼんやり書いたからか、ぼんやりしすぎている…?
永遠とは何か、とふと何も無かったかのように笑んだ。
遠くで煙が一筋上がっている。それは…遠くで戦の続く合図だ。
少女は小さく痛みを堪えた眉根を潜め\顰めて、手をまるで空中に差し出すように持ち上げた。
誰も無い空間が揺らぐ。
「…いこう」
何処に。
そう問う声は無かった。ただゆらりと何かが傅くような気配と共に少女の姿はその場所から消える。
契約。
永遠。
全ては失意と痛みに捕われたうちに、暗く死の淵に立たされた時に選んだことだ。
けれど其れが少女にとっては今の全てであった。
何故。殺し殺されて、歴史は進んでいくのか。
そうでなければ人は進むことさえ許されないのか。
創生の時代より、それは変えられない運命のように、ただ残酷に決められたかのように運命の車輪は回っていく。
即ち、争いの歴史は塗り替えられていく。
新たな争いで、傷つき倒れた幾千の人間達の血によって。
人の歩む道は血塗られて、其れが固まって出来たというのならば。
それ以外の全ては、愛すという行為は。
全て、無駄でしかないのだろうか。
少女は、人であり人ではない軸で、答えの出ない自問を幾度と繰り返す。
争いの合間に少女の精神を傷つける痛みも全て、それは必要ないのだろうか。
意味は?
其の、意味は…?
>>やっちまった…。
ノリと勢いですすみません。
微かに風に乗って息の上がった声が名を呼ぶので条件反射的に振り返った秀吉は、とてとてというのが一番相応しい表現だろう、で駆け寄ってくるふわりとした銀髪を持った人物を待った。
肩で息をして苦しそうに膝を折りながら、これ、と一通の封筒を差し出す。
「……?」
「慶次君からだよ」
宛名の無い封筒を訝しげに見れば、そう封筒を差し出した人間が言う。
「…慶次から。珍しいことよ」
「そうでしょう? 僕もそう思ってね、それで受け取って一生懸命秀吉を探してたんだよ」
笑ってそういった途端咳き込むので、その背中に手を回して撫でて呼吸を助けてやると「大丈夫」とだけ返って来る。
呼吸器が昔から弱い彼は、一度体調を崩したら中々治らない。
謂わば病弱という部類の人間だった。
「探すのは良いが、半兵衛…」
「うん?」
「…ゆっくりにしたら良かったろう」
「嫌だよ。だって手紙なんて慶次君がくれるの珍しいじゃない。しかも嬉しい頼りみたいだし、僕だって早く読みたいと思ったんだから」
だったら一人で読んだ後に、自分に知らせてくれたらいいのに。
内心苦笑して秀吉は自分よりも幾分も低い半兵衛の頭を撫でた。
幼い子供のように扱われて少しだけ不機嫌そうに眉間に皺を寄せたものの、半兵衛はそれ以上何も言わない。
もう片方の手にある先程自らが手渡した封筒を取り返すと、ひらりとそれを示す。
「ね。読もう?」
「そうだな」
半兵衛宛の手紙に秀吉の了承は要らないのだが、秀吉がそういうと嬉しそうに半兵衛が笑って封筒の封緘を解いた。
慶次は大柄で細かい所にはあまり拘らない所があるが、あれでいて繊細な部分があったりする。
勢いは良いが達筆とも読める字で、近況が綴ってあった。
半兵衛を両膝の合間に座らせて背後から秀吉が覗き込む形で、手紙は読み進められていった。
「政宗と元親に会ったんだ…。いいなあ」
ふと手紙のある一行を読んで、ぽつりと半兵衛が呟く。
政宗と元親。手紙の差出人の慶次と受取人の半兵衛、四人は年の頃が近かったからか、聖地の中ではいつも仲が良かった。
体の弱い半兵衛以外の三人は、聖地の外に出ることを望んでしまったため、里帰りを三人がする以外に半兵衛が彼らに会うことは無い。
それでも偶に帰ってくれば必ず半兵衛の所に立ち寄って、土産だと珍しいものを置いていったり、話を聞かせたりしていた。
「元気そうだな」
「うん。そうだね。元気なのはいいことだよ」
笑って言う半兵衛は心底嬉しそうだ。
空気の清浄な場所でなければ、少なからずとも負担が掛かってしまう身体では行動が制限されることが多い。
時折、用事があって聖地を降りることがあったが、その時でさえ半兵衛は注意をしなければならなかった。
本当なら自分も彼らと同じように色んな場所で、色々なものを見て、そうやって生きたいのではないのだろうか。
カナリアではなく、この聖地で技師として生きる秀吉は、聖地が如何に隔絶された場所かを知っている。
ひっそりと守られるように、隠れるように存在するカナリアたちの村。
「……え」
何か珍しいものがある訳でもなく、ただ日々を安穏と過ごす。
良い生活といえたが、その選択肢しか持ち得なかった人間には些か酷ではないのだろうか、と考え込んでいた秀吉の耳に驚いた半兵衛の声が届く。
珍しい。
彼が此処まで驚きを示すということもそうだが、その後何も言わずじっと文面に目を落として反応も薄い様も。
「何が書かれてあったのだ?」
タイミングを計ったように、半兵衛が文から視線を外すと同時に秀吉は声をかける。
掛けられた声で我に返ったのか、肩越しに振り返った半兵衛が「ああ、うん」と曖昧に返す。
それさえも珍しいなと思っていたら、半兵衛がさらりと言葉を口にした。
「元親に恋人が出来たんだって」
「……ほう?」
半兵衛と似た髪色の。しかし受ける印象は全く違う、その人物を思い起こす。
性格は良い。屹度恋人が出来たとしても元親なら大切に出来よう。
「…それがね」
くす、と笑った半兵衛が軽く手招きをする。
身を屈めて耳を近づけると、手招いた手を口元に持っていって人差し指を立てる。
「これは、秘密だよ」
「なんだ?」
「その相手っていうのが」
”調律師なんだって”
意外と言うよりは、ある意味カナリアにとって禁忌ではなかったのか、と問いたくなった秀吉がじっと半兵衛を見ると本当に楽しそうに笑っている。
手紙を丁寧に封筒に戻して、もう一度視線を落とした半兵衛が呟く声に納得した。
「いいじゃない。好きの対象に、カナリアも調律師も、普通の人間も無い。そうでしょう?」
その通りだな、と秀吉も笑う。
確かに、カナリアも調律師も人間も、好きと言う感情に関係は無いだろう。
結局はみな、同じように感情を抱くのだから。
>>創作カナリア設定話。
大人しめな半兵衛さんと秀吉。
どうでもいい設定としては、幼馴染の三人は半兵衛のことを重治と呼ぶんだぜイエア…!
一応、「逃げた調律師の行方」って題打ったカナリア設定話は此処でおしまい。
続きとか、この設定でちらほら話は書くと思う。
ただとりあえず元就と元親のトムとジェリー(追走劇)が終わったって事です。
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