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謂わばネタ掃き溜め保管場所
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四阿の端で蹲るように眠る白い人影を見た時、全く困ったと思うのと同時に暖かい感情を覚える。
陽光に透けて溶ける銀糸の髪は癖があり柔らかで、腕で顔を庇うようにして眠る呼吸は規則正しい。
淡い襲を羽織った容姿は完全にそのものの色を持ちはせず、否、その完全に他の色を排他した白がその存在の色なのだ。
「…また、こんなところで」
ぽつりと落とした声に寝ていた人影が僅か身じろぐ。
ゆっくりと腕を動かし覗き見えた睫が震えた。白い容姿の中で唯一深い夜闇色の瞳がぼんやりと焦点を結んでいく。
「…、レスター?」
「ああ」
「仕事は終わったんですか?」
「先程な」
「………、そうでしたか。すみません」
ゆっくりと上半身を起こしぱたぱたとおざなりに服を叩いた青年と言うには華奢な青年がふわりと笑う。
ふわふわの癖毛の髪とは打って変わって怜悧な印象を与える雰囲気も口調もそうすれば随分と形を潜めた。
その彼の手が徐に伸び、頬を掠める。
「ニア?」
「…葉、ついてますよ。何処を歩いてきたんです?」
咎める口調ではなく、からかうような優しい口調で髪についていた葉を払った青年が首を傾げた。
「…どうかしましたか?」
「いや」
出会った頃に比べれば幾分も大きくなった。しかし何より出会った頃全く見せなかった感情を、―元々感情を表すのは豊かではないようだが、見せてくれるようになったのは素直に嬉しいことだ。
「レスター? 顔、にやけてますよ」
思わずそれが表情にも出ていたらしい。
指摘されて参ったと両手を挙げればくすくすと小さな笑い声が零れる。
その華奢な肩を抱いて耳元に名を落とした。
自分が王となり麒麟である彼に付けた名ではなく、彼が蓬莱で人間として育てられていた時に親から貰った名前。
「…はい」
それを余すことなく受け取るように青年は返事をする。
その声は酷く透明な綺麗さだった。


>>十二国記ですの
   Mつきさんのリクのまま。ニアとレスター。
   もう一つ某ネタは長くなりそうで書けるのか不安になってきた。うぐー…

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「月君、月君…ねぇ? 聞いてますか? どうして今日はずっと私を無視するんです」
「………なに?」
「怒ってるんですか?」
「別に?」
「それじゃ、何で拗ねてるんです」
「拗ねてなんて無い。竜崎こそ自棄にしつこく構うじゃないか。何かあるのか?」
「…月君、今の自分の顔どんなだか分かってます?」
「は?」
「分からないなら良いです」
ぺたぺたと裸足で廊下を歩いていく後ろ姿に思わず首を傾げた。
僕の顔がどうしたって言うんだろうと月が頬に手をやるのとほぼ同時、くるりと振り返った竜崎が捨て台詞を吐いた。
「我儘が通らなくて拗ねた子供のような顔してますよ、月君」
「…ばっ、」
「仕方在りません。私の方が年上ですから今回は折れてあげます。ですからちゃんと機嫌直して下さいね」
言い訳する時間も与えず言葉を継いで竜崎は廊下の向こうに消えた。
呆然と立ちつくした月が小さく悪態を吐く。

「そんなんじゃない。気付けよ、ばか」




>>ほぼ会話のみで。
   態度的に大人なのは月だけど、内面的にはLよりも幾分もやっぱり子供だよなとか思うわけ。
   そういえば7歳の差があるんだもんね。当たり前だよね。

―私、夜神粧裕には秘密があります。


深夜。
寝静まった家の中を足音を忍ばせて歩く少女の姿があった。二階の一室は兄のもので内側から鍵が掛かるようになっていて勝手に入ることは出来ない。一度だけ入った時には酷く驚かれ「お兄ちゃんにだって秘密はあるんだから勝手に入ったら困る」と怒りを滲ませながらも、優しく諭されたものだ。
だから言えなかった。
「ね、居るんでしょう?」
小さな声で誰もいない廊下に話し掛ける。
端から見れば頭のおかしい行動にさえ見えるそれは少女にとっては酷く重要だった。
廊下の端凝った闇からうっすらと上背のある影がぬっと現れる。それに内心肝を冷やしながらも少女は決して悲鳴をあげなかった。
「ククッ、なんだ? 呼んだか?」
面白そうに声を上げる異形に少女は気丈に笑ってみせる。
そして背中に持っていた林檎をそっと差し出した。

 


お前は変わっている、と其れは言う。
なら、貴方も変わっているんじゃないの、と粧裕は言った。
平行線の会話は不思議と接点を持ち交わるので粧裕はいつも目の前の相手が人間ではないのだなと改めて知るのだ。
其れと出会ったのは全くの偶然であった。まさかの展開だと兄が知ったら驚き言うだろう。
「ねぇ、何故林檎がそんなに好きなの?」
「知らねぇなぁ。でも美味い」
「ふぅん。……楽園を追放された禁断の味だから…かしらね」
「何だそれ?」
「創世記よ。神に作られた一対の人間は楽園に住んでいた。老いることはなく苦行もなく…けれど誘惑されてしまったの」
「へぇ?」
「この木の実を食べてご覧…って。それが林檎だって言われてる。その実は知恵の実。絶対に食べてはいけないと神に言われていた木の実。約束を破った二人は楽園を追放され、命には限りが出来た」
「人間って、面白いこと考えるんだなぁ。こんな林檎に」
「赤い色は命の色」
「お?」
「だから惹かれるのかな?」
粧裕はにこりと笑う。死神と初めて出会った時から比べれば随分と綺麗な女性に育ったものだ。
兄はとっくに家を出て一人の女性と同棲している。
「俺にはよくわかんね」
「良いんじゃない? それで」
そしてこの目の前の存在は兄と共に居るので粧裕に会うには意図的に自分で彼女を訪れなければならないのだ。
死神などという存在をあっさりと粧裕は受け入れたわけではない。
しかし存在を賭けて否定するほど柔軟性に欠けていたわけでもなかった。
結果、彼女は子供特有の好奇心でその存在に近づいたのだ。偶然の出会い。兄としては絶対に避けたかった事態。
彼女は既にLがついに掴めなかったキラの全てを知っていると言っていい。
「そろそろ戻らないとお兄ちゃんが心配するよ」
「だいじょうぶ。俺はいつもふらふらしてるんだ」
「心配されない…か」
「ある程度はな」
「………ねぇ、リューク」
「なんだ?」
「命は一つっていうカウントで良いのかな?」
「…ん?」
「悪人も善人も、命は一つ。存在は一つ。…死神にはどう映るの?」
「粧裕…?」
「言い方変えようか。……私の魂はあなたにとってどれくらいの価値かな? って訊いたの」
「あー…、」
死神は問いに言葉を失う。
粧裕は問いの答えに確信を持つ。
そうなのだ。命は死神にとって平等で、そして人にとって死とは例外なく平等。無でしかない。
人の傲慢な思想で選り分けること自体が抑も間違いであるのだ。であるならば。
「……お兄ちゃんの死は、如何ほどのものかな」
つと言葉が口をついて出、それに死神が珍しく驚いた表情をする。大丈夫と粧裕は笑った。
しかし矢張り確信してしまった。
魂の価値を選り分ける間違いを犯した人間の死に際は穏やかなものではない。
死ねば無に行くのなら、死ぬ瞬間に途方もない絶望を味わうに違いないのだ。それは罪と罰の帳尻合わせ。そして、
「やっぱりリュークは死神なんだね」
手を下すのは目の前の異形なのであろう。
粧裕は笑う。その笑顔は穏やかすぎる程で、罪がないのは何て残酷なのかしらと思う粧裕の心を兄である存在は一生知らない。死んでも知らない。




>>さり気に、粧裕とリュークの組み合わせが好き。捏造です。
   知って尚、ずっと隠し通したのであれば彼女がある意味最強。

それは言ってしまえば唯の気紛れで、悪戯であった。
隣で親指の爪を囓りいつも通り膝を抱え込む座り方でモニターを見詰める横顔に、そこに声を掛けてみたのだ。
日本語ではなく英語で。
それは本当に他愛もない悪戯でほんの少しの出来心でしかなかった。
だからいつも通り「何言ってるんですか?」とか或いは「私もです」と軽く飄々と流されるものだと思っていた。
「…えっ?」
だからひっくり返った声と驚きで丸くなった目を此方に向けた時、珍しいとかしてやったと思う前に何だか悪いことをした気がしてしまった。
少しだけ困ったように揺れた漆黒の瞳は不思議と綺麗だったので。
「……冗談だよ」
息を吐き出すのと同時に声を絞り出す。じっと窺うような目線が居た堪れ無くなって目を逸らす。
それでも視線は向けられたままらしい。
「…夜神君」
「うん?」
「私は、その手の冗談は嫌いですよ」
その言葉に思わず反論し掛ける言葉は飲み込む。確か竜崎は前に一度海砂に冗談とも本気とも取れる表情で飄々と「好きになりますよ?」と言ったことがあったはずだ。それと同じような言葉ではないか。
それなのに何故、前髪に隠れた眉を密かに寄せて言うのか。まるで痛みを隠すような仕草をするのか。
「悪い」
困ったことに謝る以外になくて短く謝罪すれば少しだけ目を細めて「いえ、私の方こそ大人げなかったですね」と返ってくる。別に竜崎が大人げないのは今に始まったことではないので気にはしないが、何故か言ってしまった言葉と目の前の竜崎の態度が結びつかなくて分からなくなってしまった。
息苦しい僅かな沈黙に音を立てないように息を吐き出す隣で、注意しなければ聞き取れない微かな声が言葉を紡いだ。


――Only it did not want you to say to me as a joke.



>>月が言った言葉はタイトル通り。
  Lが返した言葉は、一番最後の一文。

  あなたにだけは冗談でも言って欲しくなかった言葉。

遠く海鳴り。
私は何処に行くのでしょうと呟いた背中に追い縋る。振り返った人の表情は暈けてよく見えない。
ただ小さく笑って駄目ですよと窘められた。まるで子供が駄々を捏ねた時に母親が穏やかに言う時と同じ口調なので悔しくなってそうじゃないと言う。
ならばなんだと言うのだろうとぼんやり細い腕を掴んだまま自問自答した。
何を怖がっているんだろう。
今更過ぎて答えを探そうにも、片っ端から思考は浚われて行ってしまう。
砂漠の中で砂金の一粒を見つけるほど途方もなく無意味な作業に思えて、しかしその一粒の希望を諦めきれないで自分は此処にいるのだ。
分からない。
駄目ですよ、ともう一度。今度は少し悲しげな雰囲気さえ滲ませて言葉が落ちる。
ぽつりと乾いた大地に滲み込む雨粒のようだと思った。
不意に一粒の希望が何であるのか、思い出して胸が苦しくなる。
言いたい言葉を知る。
嗚呼なんてなんて馬鹿なこと。

「…、駄目ですよ。それを言ったら進めなくなります」

唐突に聴覚が鮮明に音を拾う。穏やかな抑揚のない声に泣きそうになるのを必死で堪えた。
なんてことだ。馬鹿すぎて可笑しくなる。
欲しかったのは、望んだのは、こんなことだったなんて。
奪ったことに対する罪悪感だったなんて。
それを懺悔したいだけだなんて。

「―嗚呼許してくれなんて、言わないよ」

一生言わない。
だって懺悔しようがしまいが、お前は僕の罪を赦しはせず、それでいて僕の存在を容認するだろうから。




>>イメージのままに。
   限りなく平行線で、それでいて交わったんだろうなぁ。この二人。

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此処は思うがままにつらつらとその時書きたいものを書く掃き溜め。
サイトにあげる文章の草稿や、ただのメモ等もあがります。大体が修正されてサイトにin(笑
そんなところです。

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