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謂わばネタ掃き溜め保管場所
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赤い空がそっと地に溢れる血臭を拭う。
深々と地に刺さった刀は見るも無残。刃毀れが酷く使い物にはなりそうに無かった。
そこらかしこには力尽きた人間の亡骸が転がる。赤い空は全てを染め上げようとしているようで、これこそ地獄の果てのようにさえ見えた。
赤く染まる世界。全てが血で出来たような世界。
気持ち悪いと嫌悪感を示すには些か彼は自分の采配で人を殺しすぎた。
感情は何処に抛って来たのか、彼には既に分からなくなってしまっていた。
ただ何の感情も映すことも無い瞳でぐるりと一回り見納めた後、小さく息を吐き出したのみに留めて歩を進める。
戦場の跡はいつも目を瞠るほどの死が転がっている。
弱き心であれば砕けてしまうだろう程の凄惨な光景。
その中を、正した姿勢を崩すことなく歩く彼の姿は一種異様に映った。
倒れた誰もに目をくれることも無く、歩いていく後姿。


けれど、どうしてだろうか。
その背中が迷い子のように見えたのは。


わからぬ。
と呟かれた言葉など風に攫われて、誰にも届くことなく誰も彼の心を知らず。
ただ彼は何処にも辿り着けないままに、采配をまた振るうのだ。
置き去りにした心と感情は、遠くても少しずつ軋みと悲鳴を上げているのを知ってか知らずか。
全ての呵責に耐え切れなくなった時、易とも簡単に頽れる、その日は遠いようで近い。


title by 放浪者
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鼓動がけたたましく耳を打つ。警鐘が鳴る。
視界がちかちかと明滅するのも全て自分が危険にさらされているのを本能で悟ったが故か。
なのに、目の前の人間と来たら本当に何事も無かったように自分に微笑んだ。
真っ直ぐな癖の無い髪がさらりと揺れて、至高の色を讃えた瞳がゆっくりと細められる。
笑ったのだ、と分かったのは彼の唇が笑みの形を作ったからだ。

「ね、怖い?」

信じられないくらいに穏やかに、自分のこめかみに銃口をあてがった青年が問う。
言い返したかったが額に感じる硬く冷たい感触に喉が上手く機能しなかった。掠れた妙な音だけが口から漏れる。
なんて無様な、と自分で思うよりも、少しだけ笑みを深くした青年の表情が何よりも自分の今の状況をより鮮明に理解させた。
見た目で言うならば優しそうな容姿だ。
少しだけ細い青年はそれでも均整の取れた体付きをしている。
自分に銃を向けた時でさえ、彼は酷く冷静で民間人にしては躊躇うこともなかった。

「あんた…軍人か?」
「……君、此処には何しに来たの?」
「俺は、ここいらの地域管轄の保安官だ」
「…ふぅん…。保安官、ね」

疑うような紫水晶が覗く。
その顔から視線を落とすと首に巻かれた白い包帯が目に映った。
戦争で怪我を負い、戦線を引退した兵士なのかもしれない。ふと、そう思った。
それにしては軍人然としていないと思いつつも、だからこそ自分が気配を消していたのに反応したのではないのか、と。
カチン、と乾いた音が耳につく。
すっとこめかみから外された銃口と用心深く距離をとる青年。
それを交互に見ながら、彼が左腕を庇うように動いているのに気付いた。左腕に包帯の類は無いが、もしかしたら左腕は利かなくなってしまっているのだろうか。
視線に気付いた青年もまた、自分の左腕に視線を落とす。

「いきなり銃を突きつけて悪かったね。…けど、君が思ってる通り…僕は少し神経過敏で、ね」
「…此方こそ配慮が足りなかったようだ」
「うん。だから…もう此処には見回りは要らないよ。…僕は自分の身は自分で守れるから」

にこり。
釘を刺すように、笑った青年の表情は驚くほどに何も読み取れなかった。
ただ確かに彼の言う通りにしなければならないだろう、と本能が悟って頷く。
一度礼をして建物を出ようとしたところで、彼の小さな呟きが聞こえた気がした。

「………ら、………ね……いの…」

上手く聞こえない途切れ途切れの声を聞き返すわけにもいかなくて扉を閉じた。
わからないけれど、何だか手負いの獣のような気がした。





――もしこれがアスランだったら、僕は死ねたかもしれないのに ね

自嘲する呟きは誰にも理解されない。



title by  酸性キャンディー


>>前サイトでこっそり捏造してた あたかも次回作 な感じのキラ。
   この設定は自分では好きな感じだけども、どうだろうか。シンレイアスキラ…^^(懲りてない

聞こえているかい?

君の耳に届くように、あえて歌うこの唇。
反響する闇のなか、彼女の声は小さく。ただ一つ。

うるさい

と言った。
終焉を待つこの地で、彼女は何を見守るつもりなのか。
そんなことはさしたる問題ではない。
紡ぎ続ける詩は、鮮やかな焔を宿し、世界の、
あらゆる世界を飛び越えて、小さな光を宿していく。
この生命の鼓動が聞こえるかい?
繰り返される真実を語りゆく「黒の預言書」に
こうして新たな頁を加えられていく、その改竄に
心底嫌気が差しているのだろう。

一人ぼっちで、貴方はいつでも歌う。

彼女がかつてそう言ったものの、結局自分が歌うことを止めたりはしなかった。
そんなにこの声が、詩が聞きたいのなら。
君の為に、この唇は詩を紡ぐだろう。
本当は悲しいほどに、君に響いているはずの、音。

一人で淋しいのは、哀しいのはきっと―――自分ではなく。

君ではないのかな、クロニカ。




+++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++

というわけで「酷い耳鳴りの中で、響き渡る無音の唄。
のイヴェールverをお返しって睦月から頂いた!
ありがとう!はぁはぁ

うるさい

そう呟いた。誰がではなくて、他でもない”彼女”が呟いたが故に闇がざわめく。
凝った闇が、収縮しつつ広がっていく。
相反する行動に誰もが現実から遠ざかった感覚を覚えるだろう。当たり前だ。
ここは終焉を待つ土地だ。場所だ。何より彼女が終焉を見守る存在であるが故の歪とも言えた。
黒いシンプルなドレスに身を包んだ”彼女”が堪えたというように耳を塞ぐ。
音は無い。
在る筈の無い音。
けれど”彼女”には聞こえていた。
細く、けれど強い、柔らかなようで絶対なまでの孤独を感じるような、その――。


歌声。


歌っているのが誰かなど明白だった。
けれど”彼女”は止めろと言う言葉を舌に乗せない。
ただ酷い耳鳴りにも似た、歌の中。
両耳を庇っていた腕をゆっくりと下ろして嫣然と微笑んだ。
赤い、血の色というよりは、純粋な焔の色に近い瞳が細められる。


「出来るのならば、それがやれるというのならば、やってみなさい。”冬の天秤”」

恋人に囁くように一種の甘さを持った声で彼女の口から言葉が落ちる。
”彼女”に終焉を止める力は無い。与えられたのは全てを見届ける役割のみ。
そして歌を紡ぐ”冬の天秤”は、相反する全ての事象の狭間で歌と言う名の焔を灯し続ける。
唯一、自分に出来る償いのように。


凛と立った”彼女”を取り巻くようだった歌に、少しだけ悲しみの色が滲んだように感じられたのは気のせいではなかった。
歌い手もまた、逃れられぬ運命の中で彼女の役割と自身の役割を知っているが故に。



だからこそ、感情の無い”彼女”でさえも、ぽつんと感じるくらいの哀しさがあった。






Title by 少年の唄。

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此処は思うがままにつらつらとその時書きたいものを書く掃き溜め。
サイトにあげる文章の草稿や、ただのメモ等もあがります。大体が修正されてサイトにin(笑
そんなところです。

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