謂わばネタ掃き溜め保管場所
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目を開ける。ずきりと、何故か体が軋むような痛みをあげて声にならない悲鳴を上げた。
「………っ」
何がどうなったのかと思い起こす前にひりつく喉が現状を訴えかける。
自然と喉元に手をやって元親は全身の痛みに眉根を寄せるしかない。
痛みだけはやけにはっきりとしているのに思考は霞が掛かったようでもどかしい。
ふと此処は何処だろう、と強張った身体で辺りを見渡した。
ベッドに寝かされていて、どうやら誰かが自分を此処まで運んでくれたようだった。
「Hey, 気付いたか?」
ぐるりと視線を巡らせると窓の傍に立つすらりとした影が声をかけてくる。
かつんと一歩足を踏み出したことで逆行になっていた姿に光が当たった。
短く揃えた黒髪と、意志の強そうな隻眼が覗いた。
「……、政宗?」
「Stop! …まだあんまり喋らない方がいいぜ? 辛いだろ?」
掠れた声で名前を呼ぶと片手を挙げて制される。
ベッドの傍に在った椅子に腰掛けて政宗は足を組んだ。
大人しく黙った元親が寄越してくる視線ににやりと笑んで返す。
「とりあえず、此処はどこだ? って言いたそうな顔だ」
話さない方がいいと言われたので頷くに留める。
元親の素直な態度に満足したのか小さく笑って政宗が答えた。
「此処は…まぁ、俺が住んでる家だ」
「…おまえの?」
「…ああ。って話すなっつーのに」
思わず訊き返した元親に政宗が苦笑する。
器用に組んだ足を反対に組み直して政宗がすっと視線を窓に向けた。
光が差し込んでくる窓から、今はまだ昼を少し過ぎたところだろうと元親は憶測をつける。
「倒れてたから…放っておけなかったんだよ。…同郷の馴染みで…な」
組んだ足の上に頬杖を付いて政宗がぽつりと言う。
同郷。
カナリアの聖地で育った同じ存在。年頃が同じだったから自然と気が合って、一緒に遊びまわった仲だ。
カナリアとしての知識を全て見につけた二人は、聖地に残る選択をせずに外に行くことを望んだ。
そして政宗は今、ある町で過ごしている。
元々活発な性格であるから、あちこちに足を運んでいるようだし、聖地にも偶に帰っているようだった。
時々、聖地に帰るとそんな話を聞いたと元親は思う。
「……俺は」
「まぁ、運が良かったんだぜ? 俺が住んでる近くだったから…。お前の音が聞こえたから、辿っていけた」
「俺の、音…」
「ったく」
呆然と呟いた元親に溜息一つ落とすと政宗は立ち上がる。
「でも近いって言ってもそこまでじゃない。……お前の音が強かったから、辿れたんだ」
「……」
「お前、何であんなとこに居た? どうしてあんなに強く音を紡いだ? もう…人も居やしない打ち捨てられた村なんかで」
「…そ…うだ。………政宗、俺の他に人は居なかったか?」
ゆっくりと思い出して元親は政宗に尋ねる。
質問に答えない挙句、見当違いとも取れる質問をしてくる元親に、それでも政宗は表情一つ変えずに返した。
「俺がお前を見つけたときには居なかったな」
「…そっか」
政宗の言葉に元親が俯く。
脳裏に切なそうに笑った影が映る。無意識に唇を噛んだ。
それに素早く気づいた政宗が、元親の肩に触れて諭すように首を横に振る。
「……何があったかは…聞く気はないけどな」
「政宗」
「…話したくなったら話せよ」
「ありがとな」
「別に礼なんかいらねぇぜ」
肩を竦めてそう言うと、政宗が笑う。
そして迷うことなく部屋を横断した。
「腹、減ってんだろ? 少し待ってろ。食べれそうなものを持って来る」
その言葉を残して扉を閉めた政宗の…彼女の後姿を見送ってから、元親は視線を自分の手に落とした。
分からない。
確かに一緒に居たはず。けれど ”さよなら” と言った。
そして自分の意思に反して紡がれた音。寧ろ紡がされた音。そして…聞こえた歌。
「…元就」
あまりにも一方的過ぎた。
だからこそ何故別れを告げられたのか分からずに、元親は頭を振る。
自分の音を使ったのだ。いつも自分に関わるな、お前はカナリアだろう?と言っていた言葉をやっとの事で理解出来た。
奇跡の音を紡ぐことのできるカナリア。
その数は決して多くは無い。
そしてそれよりも稀有なカナリアの奇跡の音を使役できる存在。
調律師といわれる存在は、世界に同時に1人か2人存在していれば良い存在だ。
その数から言って外に出たカナリアが調律師に接触する可能性はとてつもなく低い。
けれど、もし出会ってしまったら…関係性も何も絶つのがカナリアでの教えだった。
「…まさか、調律師だったなんて」
呟いた声が酷く掠れる。
最後に触れられた喉元に、その温もりを辿るように触れた。
何故笑ったんだろうか。
あの時、無理だと…苦しそうに呟いて…そして。
「………俺は」
―どうしたら、良いんだろうか。
>>創作カナリア設定、親就話その2。
ひっそりと書くのが楽しい(笑)
もうパラレル捏造もイイトコなので、好き勝手しまくってます。
政宗、カナリアで女性です。スタイル抜群の姐御ですぜ(殴)
さて、これから追いかけてもらわないとね(笑
「………っ」
何がどうなったのかと思い起こす前にひりつく喉が現状を訴えかける。
自然と喉元に手をやって元親は全身の痛みに眉根を寄せるしかない。
痛みだけはやけにはっきりとしているのに思考は霞が掛かったようでもどかしい。
ふと此処は何処だろう、と強張った身体で辺りを見渡した。
ベッドに寝かされていて、どうやら誰かが自分を此処まで運んでくれたようだった。
「Hey, 気付いたか?」
ぐるりと視線を巡らせると窓の傍に立つすらりとした影が声をかけてくる。
かつんと一歩足を踏み出したことで逆行になっていた姿に光が当たった。
短く揃えた黒髪と、意志の強そうな隻眼が覗いた。
「……、政宗?」
「Stop! …まだあんまり喋らない方がいいぜ? 辛いだろ?」
掠れた声で名前を呼ぶと片手を挙げて制される。
ベッドの傍に在った椅子に腰掛けて政宗は足を組んだ。
大人しく黙った元親が寄越してくる視線ににやりと笑んで返す。
「とりあえず、此処はどこだ? って言いたそうな顔だ」
話さない方がいいと言われたので頷くに留める。
元親の素直な態度に満足したのか小さく笑って政宗が答えた。
「此処は…まぁ、俺が住んでる家だ」
「…おまえの?」
「…ああ。って話すなっつーのに」
思わず訊き返した元親に政宗が苦笑する。
器用に組んだ足を反対に組み直して政宗がすっと視線を窓に向けた。
光が差し込んでくる窓から、今はまだ昼を少し過ぎたところだろうと元親は憶測をつける。
「倒れてたから…放っておけなかったんだよ。…同郷の馴染みで…な」
組んだ足の上に頬杖を付いて政宗がぽつりと言う。
同郷。
カナリアの聖地で育った同じ存在。年頃が同じだったから自然と気が合って、一緒に遊びまわった仲だ。
カナリアとしての知識を全て見につけた二人は、聖地に残る選択をせずに外に行くことを望んだ。
そして政宗は今、ある町で過ごしている。
元々活発な性格であるから、あちこちに足を運んでいるようだし、聖地にも偶に帰っているようだった。
時々、聖地に帰るとそんな話を聞いたと元親は思う。
「……俺は」
「まぁ、運が良かったんだぜ? 俺が住んでる近くだったから…。お前の音が聞こえたから、辿っていけた」
「俺の、音…」
「ったく」
呆然と呟いた元親に溜息一つ落とすと政宗は立ち上がる。
「でも近いって言ってもそこまでじゃない。……お前の音が強かったから、辿れたんだ」
「……」
「お前、何であんなとこに居た? どうしてあんなに強く音を紡いだ? もう…人も居やしない打ち捨てられた村なんかで」
「…そ…うだ。………政宗、俺の他に人は居なかったか?」
ゆっくりと思い出して元親は政宗に尋ねる。
質問に答えない挙句、見当違いとも取れる質問をしてくる元親に、それでも政宗は表情一つ変えずに返した。
「俺がお前を見つけたときには居なかったな」
「…そっか」
政宗の言葉に元親が俯く。
脳裏に切なそうに笑った影が映る。無意識に唇を噛んだ。
それに素早く気づいた政宗が、元親の肩に触れて諭すように首を横に振る。
「……何があったかは…聞く気はないけどな」
「政宗」
「…話したくなったら話せよ」
「ありがとな」
「別に礼なんかいらねぇぜ」
肩を竦めてそう言うと、政宗が笑う。
そして迷うことなく部屋を横断した。
「腹、減ってんだろ? 少し待ってろ。食べれそうなものを持って来る」
その言葉を残して扉を閉めた政宗の…彼女の後姿を見送ってから、元親は視線を自分の手に落とした。
分からない。
確かに一緒に居たはず。けれど ”さよなら” と言った。
そして自分の意思に反して紡がれた音。寧ろ紡がされた音。そして…聞こえた歌。
「…元就」
あまりにも一方的過ぎた。
だからこそ何故別れを告げられたのか分からずに、元親は頭を振る。
自分の音を使ったのだ。いつも自分に関わるな、お前はカナリアだろう?と言っていた言葉をやっとの事で理解出来た。
奇跡の音を紡ぐことのできるカナリア。
その数は決して多くは無い。
そしてそれよりも稀有なカナリアの奇跡の音を使役できる存在。
調律師といわれる存在は、世界に同時に1人か2人存在していれば良い存在だ。
その数から言って外に出たカナリアが調律師に接触する可能性はとてつもなく低い。
けれど、もし出会ってしまったら…関係性も何も絶つのがカナリアでの教えだった。
「…まさか、調律師だったなんて」
呟いた声が酷く掠れる。
最後に触れられた喉元に、その温もりを辿るように触れた。
何故笑ったんだろうか。
あの時、無理だと…苦しそうに呟いて…そして。
「………俺は」
―どうしたら、良いんだろうか。
>>創作カナリア設定、親就話その2。
ひっそりと書くのが楽しい(笑)
もうパラレル捏造もイイトコなので、好き勝手しまくってます。
政宗、カナリアで女性です。スタイル抜群の姐御ですぜ(殴)
さて、これから追いかけてもらわないとね(笑
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無理だ、と呟いた。その顔には苦渋の色だけが広がっていて、伸ばした手を受け入れずに身を引いた元就が緩く頭を振る。
すまぬ、と言葉が小さく空間に落ちた。
何故謝られたのか分からずに首を傾げると、困ったように視線を彷徨わせた元就の視線と一瞬絡む。
けれどすぐに断ち切られるように俯いた元就の唇が、そっと何事かを呟いた。
途端に。
自分の喉が震えたのを呆然と感じる。
音。声。―歌声。
世界が禁じた歌。歌えるのは限られた…、人でありながら一世と制限を受けたカナリアのみ。
人から生まれて、人ではもう決して歌えない音を紡ぐ。世界から取り上げられた歌は、原始に生まれたときより主旨はかわらない。祈りという最も純粋な思いを伝える方法でもある。
それゆえに、時に歌は強い力を持ちえた。
その声に、音に応える様に、世界は奇跡を引き起こす。
「も……と、なり…っ」
勝手に搾り出される歌声の合間に名を呼ぶ。
自分よりも幾分も低い位置にある元就の表情は俯いていて完全に見えなかった。
けれど泣いている様に見えた。
「…元親」
凛と。
奇跡の音が紡がれているのに、その中で決して混じりきらない静謐を宿したような声が名前を呼ぶ。
顔を上げた元就は泣いてはいなかった。
けれどもそれよりも強い悲しみの色を瞳に宿していた。
つと、白く細い指が自己の意思に関係なく歌紡ぐ喉元に突きつけられる。
カナリアである自分が歌に引きずられるかのように歌うのは有り得ない事だった。
カナリアは聖地で育つ限りは歌の使い方を教えられる。
そしてその術を習得した時に一人前として、外の世界に出ることを許されるからだ。
しかし今の元親は自分の意思とは関係なく音を紡いでいる。奇跡と呼ばれる歌を歌っている。
これじゃ名前が呼べない、と思った。
今時分が紡いでいる歌は悪い歌ではない。何かに害を為す歌ではない。だから気にしてなかったとも言えた。
「………さよなら、だ」
がくん、と途端に音が途切れる。
すっと突きつけられていた指が離れた。突然開放されたような感覚に膝が頽れる。
思わず向かい合っていた元就を見上げると、困ったように…けれども元就は笑った。
それは何故だか切なくて、けれど優しい笑顔だと感じて手を伸ばそうとする。
手は元就には触れなかった。
代わりに虚しいくらいに宙を掴む。
意識が自分の意思に反して沈んで行っていると、感じた。目を閉じてはいけない、と思った。
なのに、小さく。
歌声が、珍しい歌声が聞こえた気がして、認識した瞬間に意識が沈んでいく。
―嗚呼、これは………子守唄だ。
意識が途絶える瞬間、元親はそう思った。
>>創作カナリア設定、親就。遊びすぎかな(笑
カナリアが元親で、調律師が元就。
調律師は音を操れるだけだけれど、少し捻って元就は歌も
紡ぐことが出来る存在だったりね。
気まぐれに続くかもしれない(え
すまぬ、と言葉が小さく空間に落ちた。
何故謝られたのか分からずに首を傾げると、困ったように視線を彷徨わせた元就の視線と一瞬絡む。
けれどすぐに断ち切られるように俯いた元就の唇が、そっと何事かを呟いた。
途端に。
自分の喉が震えたのを呆然と感じる。
音。声。―歌声。
世界が禁じた歌。歌えるのは限られた…、人でありながら一世と制限を受けたカナリアのみ。
人から生まれて、人ではもう決して歌えない音を紡ぐ。世界から取り上げられた歌は、原始に生まれたときより主旨はかわらない。祈りという最も純粋な思いを伝える方法でもある。
それゆえに、時に歌は強い力を持ちえた。
その声に、音に応える様に、世界は奇跡を引き起こす。
「も……と、なり…っ」
勝手に搾り出される歌声の合間に名を呼ぶ。
自分よりも幾分も低い位置にある元就の表情は俯いていて完全に見えなかった。
けれど泣いている様に見えた。
「…元親」
凛と。
奇跡の音が紡がれているのに、その中で決して混じりきらない静謐を宿したような声が名前を呼ぶ。
顔を上げた元就は泣いてはいなかった。
けれどもそれよりも強い悲しみの色を瞳に宿していた。
つと、白く細い指が自己の意思に関係なく歌紡ぐ喉元に突きつけられる。
カナリアである自分が歌に引きずられるかのように歌うのは有り得ない事だった。
カナリアは聖地で育つ限りは歌の使い方を教えられる。
そしてその術を習得した時に一人前として、外の世界に出ることを許されるからだ。
しかし今の元親は自分の意思とは関係なく音を紡いでいる。奇跡と呼ばれる歌を歌っている。
これじゃ名前が呼べない、と思った。
今時分が紡いでいる歌は悪い歌ではない。何かに害を為す歌ではない。だから気にしてなかったとも言えた。
「………さよなら、だ」
がくん、と途端に音が途切れる。
すっと突きつけられていた指が離れた。突然開放されたような感覚に膝が頽れる。
思わず向かい合っていた元就を見上げると、困ったように…けれども元就は笑った。
それは何故だか切なくて、けれど優しい笑顔だと感じて手を伸ばそうとする。
手は元就には触れなかった。
代わりに虚しいくらいに宙を掴む。
意識が自分の意思に反して沈んで行っていると、感じた。目を閉じてはいけない、と思った。
なのに、小さく。
歌声が、珍しい歌声が聞こえた気がして、認識した瞬間に意識が沈んでいく。
―嗚呼、これは………子守唄だ。
意識が途絶える瞬間、元親はそう思った。
>>創作カナリア設定、親就。遊びすぎかな(笑
カナリアが元親で、調律師が元就。
調律師は音を操れるだけだけれど、少し捻って元就は歌も
紡ぐことが出来る存在だったりね。
気まぐれに続くかもしれない(え
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くまがい
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性別:
女性
自己紹介:
此処は思うがままにつらつらとその時書きたいものを書く掃き溜め。
サイトにあげる文章の草稿や、ただのメモ等もあがります。大体が修正されてサイトにin(笑
そんなところです。
ブログ内文章無断転載禁止ですよー。
サイトにあげる文章の草稿や、ただのメモ等もあがります。大体が修正されてサイトにin(笑
そんなところです。
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